Category Archives: 学習・教育のデジタル化と変容する知の体系

選書・蔵書のお悩み解決「都度課金型」モデル 公共図書館

LibrariE(ライブラリエ)JDLS日本電子図書館サービスが提供する電子図書館の新しいモデル【セミナー備忘録】(番外編)

 

選書・蔵書のメカニズム

図書館は刊行された書籍すべてを書架に揃えるわけにはいかない。経済的、物理的制約がある。

• 経済的制約:図書購入費の予算がどの程度確保されているか。またその、今後の見通し。

• 物理的制約:図書館の収納場所は限られている。除架(利用されなくなった、あるいは内容が古くなった書籍を書架から除去する)、除籍(所在不明であったり、破損・汚損のある書籍の管理簿から削除)の作業をしながら書架を管理していく。

そういった制約の中で、どういった選書をし、蔵書構成を整えていくのか。

この選書・蔵書の選択基準について、資料そのものの価値を重視した『資料重視型』(価値論)と、利用者の「情報要求」を重視した『利用者重視型』(要求論)がある。規模の大きい図書館ではこの選択基準を「選書方針」としてワーディングしている。

ただし価値論と要求論とは二項対立する概念でもなく、重なる部分がある。すなわち、要求論でも、その出発点に、「要求」と「ニーズ」のふたつを据えている。

要求とは、リクエストを含めて、何らかの形で図書館員に直接伝達される資料や情報へのアクセスの主観的な必要性を表し、社会的要求や自己実現要求などの階層を持つ。

一方、ニーズは潜在的で、これを把握するためには、図書館員側の特別な注意力や知識,直感力が必要とされる。

(出典:『図書館情報学用語辞典』)

ニーズ把握の過程には、その図書館の利用者に対し当然収蔵すべき書籍は何か、といった観点もはいってくる。

大学図書館と公共図書館とでは利用者が異なり、その分、選書方針も違ってくるだろう。

専門的な知識をめぐる学習者や研究者が利用者で、学習や研究、「知る読書」をサポートする大学図書館。

「楽しむ読書」や生活や仕事に関する実用的な「知る読書」を前提にしている公共図書館。たとえば、日野市立図書館の「資料収集方針」はこんな具合だ。

(基本方針)
第2条
日野市立図書館は、「図書館法」及び「日野市立図書館基本計画」の基本理念【くらしの中に図書館を‐市民に役立ち、ともに歩む図書館‐】に基づき、次の任務を果たすための資料を収集する。
(1)すべての市民にサービスを提供する。
(2)市民の地域活動、生活、仕事などに必要な資料・情報を収集し提供する。
(3)市民の余暇活動を支援する。
(4)市民の調査・研究の援助を行う。
(5)日野市の地域資料・行政資料を収集・保存・提供し、日野市の歴史を未来に伝える。

日野市立図書館資料収集方針について https://www.lib.city.hino.lg.jp/hnolib_doc200801/library/syuusyuuhousin.html

 

貸出回数はどれだけ重要か

そしてこの違いはそれぞれの図書の利用のされ方にも影響してくる。

「楽しむ読書」の領域では、人気度や貸出頻度が書籍選定の巧拙を表す指標として使われやすい。しかし「知る読書」の場合、将来の「知る」要求やニーズに備えて、あらかじめ選書・蔵書しておく、という側面が強い。つまり、貸出頻度だけでその巧拙を判定するわけにいかない事情がある。

実際、公共図書館と大学図書館の貸し出し状況はこんな風だ。

公共図書館の貸し出し状況とベースになる計数

①住民の中で登録した人は平均して年に12.6冊の貸出を受けている。
②蔵書は一年間に、平均1.64回利用されている。
(ただし、同じ本が何回も借りられているケースがありうるので、すべての本が年に1.64回利用されているわけではない。あくまで平均値)
③特に市区立、町村立の図書館は「要求論」の立場から選書、蔵書した結果が表れていると考えられる。
④都道府県立の図書館は大学図書館と市区立図書館と、両方の性格を併せ持つ立場にいると推定される。

大学図書館の貸し出し状況とベースになる計数

①学生、教職員は平均して年に6.4冊の貸出を受けている。
②6.4冊の貸出を受けるのに、図書館を年に平均2回利用した。
③蔵書は一年間に、平均約十冊に一冊の割合で利用されている。
(ただし、同じ本が何回も借りられているケースがありうるので、点数ベース、ユニークな本の総数に対して9.5%の割合で利用されているわけではない)
これは大学図書館が価値論」の立場から選書、蔵書している結果であると考えられる。

従量制は図書館サイドの悩みを解決するか

ところで21世紀にはいって日本の行政と教育の現場は、遅れてやってきた「成果主義」の渦中にある。だが「ポスト・モダン」の文脈からいうと、教育や学習の領域は「成果主義」になじまない要素がある、というのはもはや1世紀の、共通認識ではないのか。介護や育児と同様、「効率性」だけでそのパフォーマンスを測ってはいけない領域に属する。

●もう一つの「図書館戦争」 http://www.alterna.co.jp/10947

つまり、価値論と要求論の重なる部分、住民のためにあらかじめ備えておくといった発想で収書、蔵書される種類の書籍が、貸出頻度だけで判定されるのでは図書館の本来の目的、必要な機能は果たせない。

ここでもう一度、LibrariE(ライブラリエ)の価格体系、その中の「従量制」の仕組みを振り返ってみよう。

「LibrariE」のビジネスモデルは? http://www.wildhawkfield.com/2015/03/JEPA-seminar-JDLS-LibrariE.html

LibrariE(ライブラリエ)は、「ワンコピー/ワンユーザー型」と「都度課金型」のセットとして価格体系を構築している。

図書館はまず、「ワンコピー/ワンユーザー型」である書籍の「アクセス権」、アクセスサービスに対する対価を支払う。この支払いで、ひとつの書籍を2年間または「52回まで」貸出することができるようになる。

この「2年間または「52回まで」」が終った時点で、再度「ワンコピー/ワンユーザー型」を選ぶか、「都度課金型」に移行するかを選ぶ。

さて紙の書籍であると、所有権を購入する。そして買った以上は貸出が行われないと何のために購入したのか、問い詰められる場面に遭遇する。

その点、「都度課金型」は読まれた頻度に応じて支払が生じる。その意味では選書・蔵書の悩みを解決してくれる価格モデルだと言える。「あらかじめ選書・蔵書しておく」ということがやりやすくなる。

ただここで厳密に言うと蔵書しているのは、実はサービスを提供するLibrariE(ライブラリエ)のサーバーだ。つまり、蔵書機能をLibrariE(ライブラリエ)に依存することで、個別の図書館は「あらかじめ選書」という機能に徹し、市民に対し、より少ない金額でその図書館の使命を果たすことができるようになる、というわけだ。なにしろ、「都度課金型」の価格は、「ワンコピー/ワンユーザー型」の26分の一なのだから。

しかも電子書籍は、除架(利用されなくなった、あるいは内容が古くなった書籍を書架から除去する)や除籍(所在不明であったり、破損・汚損のある書籍の管理簿から削除)の作業が不要というメリットもある。

出版社の悩みも解決する、LibrariE(ライブラリエ)の価格体系

もっともJEPAセミナーでも質問があったように、入口の価格はあくまで「ワンコピー/ワンユーザー型」、しかも推奨価格は本体価格の1.5倍から2倍だという。「都度課金型」で図書館に利便性を提供したLibrariE(ライブラリエ)だが、入り口では電子書籍を提供する出版社の側を見ている。

だから図書館側は不満だ。

 質疑応答:価格が底本の1.8倍というのは予算上厳しい http://www.wildhawkfield.com/2015/03/JEPA-seminar-JDLS-LibrariE.html

しかしここから、プラスの循環にはいるか、マイナスの循環にはいるか、それは図書館の選書行動にかかっている。

大学図書館は「価値論」で、一方公共図書館はどちらかというと「要求論」に重きをおいて、これまで選書してきた。これを少しだけ「価値論」へシフト、これまで購入してこなかった書籍の電子版について、その「(制限付)アクセス権」を購入する。そうするとその数は出版社側からすると、「新しい売上」になる。

しかも電子図書館が仮に100%普及したとすると、3467(館)という数字が分母。

初版部数数千部という、「知る読書」用の書籍にとって、決して小さな数字ではない。

ここから思考実験。

電子書籍の(アクセス権の)価格が本体価格の十分の一なら従来の10倍の点数を購入できる。二十分の一なら20倍の点数を購入できる。この状況で少しだけ「価値論」へシフト、これまで購入してこなかった書籍の電子版を購入する、すると今度はこの状況を見て出版社が、入口から「都度課金型」でいく書籍銘柄を選定してみる、そこでいよいよ図書館が電子版へシフトする、といったことが起きるかどうか。

プラスの循環にはいるかどうかが、今後の課題だ。

JDLSの経営目標は、

「図書館に求められる「"知"の集積」という基本機能と、著作者および出版社が必要とする「"知"の再生産」に必要な還元の仕組みを、ともに成立させるべく図書館・著作者・出版社の新たな関係を提案」する、

というものだ。

この「ともに成立させる」という観点でよく練られたビジネスモデルだというのが、セミナー会場で話を聞いた電子書籍関係者が異口同音にもらした感想だったが、それはこのプラスの循環にはいる契機を含んでいるポイントに凝縮される。

米国の公共図書館の9割以上が電子図書館を利用している、という。住民の側に「ニーズ」があり、それを図書館が汲み上げているからだ。

「図書館」と「Library」は同じじゃない。 | 詩想舎の情報note https://societyzero.wordpress.com/2015/01/08/00-208/

「価値論」と「要求論」のバランス、そして「要求論」の中の住民の間にある、移行期にある時代の「ニーズ」をどれだけ把握できるか。それは図書館職員の感性次第ということになる。なにしろ、「ニーズは潜在的で、これを把握するためには、図書館員側の特別な注意力や知識、直感力が必要とされる」というのだから。

 


◇関連クリップ
●LibrariE(ライブラリエ)JDLS日本電子図書館サービスが提供する電子図書館の新しいモデル【セミナー備忘録】
(上)LibrariE(ライブラリエ) 電子図書館の新しいモデル http://society-zero.com/chienotane/archives/568
(中)日本の電子図書館の活用状況・普及の程度 http://society-zero.com/chienotane/archives/573
(下)公共図書館に電子書籍がふさわしい理由 http://society-zero.com/chienotane/archives/599

●図書資料の流れ http://plaza.umin.ac.jp/~jmla/event/kako/kiso-back/11th_kiso/01_tosho1.pdf
●第1章 蔵書評価とその方法 | No.7 蔵書評価に関する調査研究 http://current.ndl.go.jp/node/2258
●日野市立図書館資料収集方針について https://www.lib.city.hino.lg.jp/hnolib_doc200801/library/syuusyuuhousin.html
●もう一つの「図書館戦争」 http://www.alterna.co.jp/10947
全国の図書館で、統廃合や予算削減の話が引きも切らない。もっと
深刻なのは、質劣化の懸念:館数が増加しているにもかかわらず、
資料費も司書の人数も減少している。
●出版・流通と図書館の蔵書構成(選書方針、ツールなど)http://www.slis.tsukuba.ac.jp/grad/assets/files/syllabus/syuppan2014vol.2.pdf 

 

公共図書館に電子書籍がふさわしい理由

LibrariE(ライブラリエ)JDLS日本電子図書館サービスが提供する電子図書館の新しいモデル【セミナー備忘録】(下)

4.公共図書館の電子書籍や電子図書館に対するニーズ

もう一度、JEPA電子図書館委員会の総括を振り返る。 Continue reading

 

日本の電子図書館の活用状況・普及の程度

LibrariE(ライブラリエ)JDLS日本電子図書館サービスが提供する電子図書館の新しいモデル【セミナー備忘録】(中)

2.公共図書館の位置づけ・現状

あらためて市場の状況を整理してみよう。まずは相対比較の意味で他の図書館とともに市場のサイズ’(館数)を見てみる。 Continue reading

 

LibrariE(ライブラリエ) 電子図書館の新しいモデル

LibrariE(ライブラリエ)JDLS日本電子図書館サービスが提供する電子図書館の新しいモデル【セミナー備忘録】(上)

3月18日の本セミナーは「日本独立作家同盟」代表の鷹野凌氏が翌日まとめ公開しているので、詳しい内容はそちらに任せ、ここでは感じたこと、ディテールで気になったこと、そもそも論、について書いてみよう。

まずは対象の絞り込みと言葉の統一を最初に断っておこう。

「電子図書館」は、日本電子出版協会(JEPA)の数ある委員会の中のひとつ、電子図書館委員会で「自宅(館外貸出)で、雑誌・書籍を電子版で読む」機能があることとしているので、それに従う。

統計などでは、「公共図書館」が一般的なようなので、原則「公立図書館」は使わない。

Continue reading

 

EDUPUB全体像と担当機関

●拡張機能・仕様の全体像

項目名 日本語表記(暫定案) 内容 担当機関
EDUPUB Profiie EPUBの教育用プロファイル 教育目的に拡張した部分特有の構成要素や構造を記述・説明する IDPF
Open Anotation in EPUB 註釈 「註釈」の概念がかなり拡大され、新しい機能を産みだしている。たとえば「埋め込まれたノート」 IDPF
同上 W3C
Widget EPUB Scriptable Components 対話的コンテンツのAPI仕様    データをやり取りして(=対話的)作動する部品。それをパッケージ化し、必要があるたびに呼び出す。またはEPUBの中に埋め込んでしまう。通信機構含め検討中。 IDPF
EPUB Scriptable Components Packaging and Integration 対話的コンテンツのパッケージングの仕様 IDPF
IDPF ePub Widget Framework 対話的コンテンツの構造やメタデータ IDPF
Distributable Objects 流通する(分解/再統合/変換される)素材  教科書や教材の「素材」を使いまわすための仕組み。 IDPF
LTI 外部アプリ連携  電子書籍(教科書や参考書、教材)軽量化に資する。さらに電子書籍のビジネスモデルの変革につながりうる項目。 IMS
Caliper 学習分析データの収集  教育のサービス面(教育者の評価含め)、あるいは学習効果の向上につながる項目。将来はビッグデータと関連していく。 IMS
QTI テスト実施と採点  先生方の校務負担軽減につながる。自習のサービス面充実にも。 IMS

画像URLはこちら

●関連ドキュメンツのURL

項目名 担当機関 関連ドキュメントのURL
EDUPUB Profiie IDPF http://idpf.org/epub/profiles/edu/spec
Open Anotation in EPUB IDPF http://idpf.org/epub/oa
同上 W3C http://www.openannotation.org/spec/core/20130208/
Widget EPUB Scriptable Components IDPF http://www.idpf.org/epub/sc/api/
EPUB Scriptable Components Packaging and Integration IDPF http://idpf.org/epub/sc/pkg
IDPF ePub Widget Framework IDPF https://github.com/IDPF/widgets/tree/master/CommunicationAPI
Distributable Objects IDPF http://idpf.org/epub/do
LTI IMS 未公開
Caliper IMS http://bit.ly/1O45umc
QTI IMS 未公開

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デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回 【セミナー備忘録】(番外編)

(上中下の三回の記事で書き漏れたことで、おやと思ったり、なるほどと感心したことをランダムにメモっておきます)

これから重要視されるイッシュー

・毎週電話会議で世界の参加者が活発な議論を繰り広げている。
・議論をしていく中で、新たに出て来たイッシューで重要なもの下記3点。 Continue reading

 

デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回 【セミナー備忘録】(下)

4-6:LTI/外部アプリ連携

・「LTI」は外部コンテンツ、外部アプリとの連携のためのインターフェース、通信に関する仕組み、仕様のこと。
・この仕組み、仕様がうまく作れると、電子教科書の容量を軽くすることが可能になる。また分業化、他業種からの参入をを促すきっかけになり、ビジネスモデルを大きく変えることになりうる項目でもある。たとえば下図、右下の「シミュレータ」に関して「仮想的な実験をするアプリ」など、米国でベンチャー企業がいくつものサンプル事例を競っていた。
田村3  jepa150311 6https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村3- jepa150311-6-300x225.jpg 300w, https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村3- jepa150311-6-1024x768.jpg 1024w" sizes="(max-width: 1138px) 100vw, 1138px" />

・「軽くする」というのは、教育の現場でとりわけ重要だ。重たいままでは、電子教科書を使った授業が、頭でっかちな非現実的なものになってしまいかねない。特に日本での電子書籍の議論は、電子教科書にどんどん技術的に可能になったことを詰め込む発想が強い。政府施策もどちらかというとそういう思考が垣間見られる。これが究極までいって、一単元で数十ギガの電子書籍が作られてしまった例を知っている(田村先生)。EDUPUBでは全く反対の方向性での議論が続いており、日本での電子書籍検討の方向性を変えていく、ポリシーコントロールが重要だと実感している。
田村7  jepa150311 12https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村7- jepa150311-12-300x225.jpg 300w, https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村7- jepa150311-12-1024x768.jpg 1024w" sizes="(max-width: 1134px) 100vw, 1134px" />

 

4-7:Caliper/学習分析データの収集

・データ収集により、生徒がどこまでを学習したのか、どこまで理解が進んでいるのか、といった家庭教師が果たしているような機能が実現できると期待されている技術。
・米国の教育界で「Learning Analysis」というキーワードが共有されているが、それは学習活動状況に関するデータを使って、

学習者へのフィードバック、あるいは
教師への評価

に使われることが想定されている。そのためEDPUBのCaliper Analyticsに関する動向にも熱い視線が注がれている。

 

4-8:QTI:テスト実施と採点

・eラーニングの世界で長い経験と実績があるIMS Global Learning Consortiumに豊富なノウハウがある分野。
・これも過去に書いた記事があるのでご参照ください。

セミナー備忘録:電子教科書のドリルをどうする!? https://societyzero.wordpress.com/2014/07/28/00-40/
セミナー備忘録:電子教科書のドリルをどうする!?(2)~「教育の再設計」とEDUPUB https://societyzero.wordpress.com/2014/08/04/00-48/

4-9:今後

・実は、現在の「QTI」はHTMLに準拠して記述されてはいない。独自のXML形式で記述されている。電子書籍のフォーマットEPUBはHTMLとCSSをZIPで固めたもの。この違いがかねて指摘されていたが、それを意識したのかどうかはまだわからないが、IMSはQTIの次のバージョンを準備している(QTI v2.1, aQTI– APIP (Authoring & Delivery))。またLTIも( LTI v2)。

・そしてもうひとつ。(上)編で、「技術標準化WGはEDUPUBの活動と重なる部分があるが、ICT CONNECT21ではさらに、「校務系」を扱うサブワーキンググループ(SWG)も準備している」と書いたが、IMSの2015年の活動として、eduERPが構想されている。

・「ERP」とはEnterprise Resource Planningのことで、通常は企業組織のシステムインフラについて、企業の持つ様々な資源(=リソース:人・モノ・金、情報など)を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適を目指す手法で、同時にそのために導入・利用される統合型(業務横断型)業務ソフトウェアパッケージ(ERPパッケージ)を指す。eduERPがIMSで構想されているとはつまり、校務を含む、学校の統合システムをも展望したディスカッションが、EDUPUBのもとで始まることを意味しているのかもしれない。

 

5.まとめ

・改めて、EDUPUBで検討されている項目と、それを誰が担当しているかを整理すると以下の通り。
田村4  jepa150311 9https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村4- jepa150311-9-300x225.jpg 300w, https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村4- jepa150311-9-1024x768.jpg 1024w" sizes="(max-width: 1135px) 100vw, 1135px" />

・議論を続ける中で、当初想定していなかった話題も浮上してきていて、それは点線四角囲いで示した。

・「Teacher's Guide」は教師用教科書でそのための「タグ」が議論されている。これがきちんと具体化できると、教師にとって便利なだけでなく、学習者に自習のヒントや、学習方法についてもフィードバックを返してあげることができるなどの機能実装へつながっていく可能性も秘めている。
・ちなみに教育工学系の国際学会AACE(Association for the Advancement of Computing in Education http://www.aace.org/ コンピュータを使った教育(教授法)学会)の行事に参加したことがあった。そこでは教師用指導書の朱書編(生徒用教科書にクイズ解答や板書例などを追記したもの)を自習用として用いるアイデアが議論されていたが、電子教科書への関心・期待が高く、多くの質問やコメントを頂戴した(村田先生)が、これは上記EDUPUBの項目とも密接に関連している。
・EDUPUBは米国の教育界で広く、熱く話題になっているようだ。

EDUPUB全体像 150318https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/EDUPUB全体像 150318-300x251.jpg 300w" sizes="(max-width: 705px) 100vw, 705px" />
(クリックすると鮮明画像が見れます)

・協議の成果物は以下のURLに掲載されている。
EDUPUB全体像とURL 150318https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/EDUPUB全体像とURL 150318-300x134.jpg 300w" sizes="(max-width: 705px) 100vw, 705px" />

(クリックすると鮮明画像が見れます)

 

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デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回 【セミナー備忘録】(中)

3.フェニックスの会議の概要

・実は第三回の2014年6月19日のオスロ会議は、その翌日6月20日の「ISO/IEC JTCI/SC36 Open Forum」と連動して開催された。2014年11月5日に「EPUB3」が、ISO/IECから“Technical Specification”として認定・公開されたのにはこの時の会議の貢献もあったことだろう。その意味では今回もIMSの四半期会議、また「Caliper Analytics & LTI Bootcamp」と隣接してEDUPUB Phoenix 2015も開催された。
・二日目の2月27日には「Implimentation」の単語があったが、会議の実際ではそういう類の発表はなかった模様。
田村1  jepa150311 4https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村1- jepa150311-4-1024x768.jpg 1024w, https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村1- jepa150311-4.jpg 2000w" sizes="(max-width: 559px) 100vw, 559px" />

4.拡張機能・仕様の内容と議論の現状

EDUPUB Phoenix 2015 報告 田村 恭久 氏(上智大学、JEPAフェロー)
IDPF、W3Cのデジタル教科書、教材関連標準化動向 村田 真 氏(JEPA CTO)
EDUPUB Profile解説 高瀬 拓史 氏 (イースト) 

(ここから先は、登壇ご講演された三人の方の内容を自分用に統合・整理した記述になっています)

4-1:全体像

・下図「日本語表記」の部分は、お三人の資料を材料にわたしのような素人にもわかりやすい、という基準で考案してみたものなので、専門家がいるところでこの表記を使うとかえって誤解を生むかもしれないのでご注意。専門家がではどういう表記をしているかは、それぞれの資料にあたってください。

EDUPUB Phoenix 2015 報告 http://www.slideshare.net/JEPAslide/20150311-tamura
IDPF、W3Cのデジタル教科書、教材関連標準化動向 http://www.slideshare.net/JEPAslide/20150311-murata
EDUPUB Profile解説 http://www.slideshare.net/lost_and_found/on-edupub-profile

EDUPUB全体像 150318https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/EDUPUB全体像 150318.jpg 705w" sizes="(max-width: 549px) 100vw, 549px" />

画像URLはこちら

4-2:EDUPUB Profiie/EPUBの教育用プロファイル

・(上)編の冒頭、「EDUPUBとは」で述べたように、EDUPUBはEPUBを教育目的、教育現場で使うために、機能拡張をしようとしている。何を付け加えようとしているか、その「差分」がどいういう内容なのかを記述するのが、EDUPUB Profiie。だからこれをきちんと読むとEDUPUBで、3つの機関が議論している項目の全体像を把握できる。
・具合のいいことに、登壇者お三人のうち、EDUPUB Profiieをご担当いただいた高瀬氏は、プレゼンの相手が私のような初級者であることを想定して準備をしてくれている。資料は丁寧に作られていて、読むだけでも大体わかる。それで、このブログで詳細は省く。下記URLの資料に目を通してみて欲しい。

EDUPUB Profile解説 http://www.slideshare.net/lost_and_found/on-edupub-profile

EDUPUB Profile解説 高瀬 jepa150311 1https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/EDUPUB-Profile解説 高瀬 jepa150311-1-1024x768.jpg 1024w" sizes="(max-width: 300px) 100vw, 300px" />

・ちなみに、田村氏は中級者向け、村田氏は上級者を想定しておられると想像される。

(世界の議論ではあたりまえだが、意外と日本で知られていない、そういう部分を若干拾うとこんな感じ)

・文書モデルとして日本で良く知られている2種類が想定されている。リフロー型とフィックス型。しかし教育目的である以上、「アクセシビリティ」への配慮は欠かせない。固定レイアウトであっても、画像ベースの固定レイアウトでは、「別途アクセシブルなレンディションを含むこと」が義務付けられている。
・また三番目の文書モデルとして「複数レンディション」がEPUB Multiple-Rendition Publications 1.0 に定義されている。一つのEPUBにリフロー、フィックス両方の本の形を格納してもよい。

・また教育目的である以上、「はい、みなさん、今日は教科書の60頁からです」と先生がいったとき、そこが開けないといけない。ページネ―ションがリフローにないという誤解があるが、教室でちゃんと使えるよう、EPUBにはページをふる機能がある。

・その電子書籍が、生徒用教科書か、教師用教科書か、教師用指導書かの区別がわかるうように、書誌情報が整備されている。また対象年齢、何歳用かも記述できる。

 

4-3:Open Anotation in EPUB/註釈

・アノテーションについては、過去にも書いたので、ここではくどくど繰り返さない。「注釈」という日本語から連想される範囲をはるかに超えた構想が議論されている点だけは押さえておくべきだろう。その結果、教科書とノートを広げて、先生の前ににみんなが集まって、という「教室の風景」が大きく変わる可能性を秘めた項目だ。

●「読書」を変える、EDUPUB・オープンアノテーション https://societyzero.wordpress.com/2014/09/04/00-82/

・4-1の「全体像図」を見ると、この項目のみ、IDPFとW3C、ふたつの機関の名前がある。もともとW3CでEDUPUBが始まる前から議論をしてきたという経緯があるから。W3Cでこれまで、InterestGで議論されていたのだが、今般EDUPUBの活動と前後して正式なWGが発足した。議論のグレードが上がるという意味では喜ばしいことだが、その性でスピードが落ちる懸念も出てきている。

 

4-4:WidgetあるいはScriptable Components/ウィジェットあるいは対話的コンテンツ

・スマホなどで使われる「ウィジェット」は、電卓、時計、株価情報など、小規模なアクセサリーソフト・コンテンツ(ウィジェットアプリ)のこと。EDUPUBで、つまり教育目的で議論されているのはデータをやり取りして(=対話的)作動する部品。たとえばチャートが作成されたり、グラフができたりするといった類のもの。

・Widgetは「HTMLとCSS、そしてJavascript」で記述されるコンテンツ(あるいは「部品」)。EPUB3では、Javascriptの使用を推奨はしていなかった。
•しかしEDUPUBでは、対象が教育用コンテンツなのでJavascriptを使うしかないことから積極的に標準化している。
・ふたつのやりかた、すなわちそのコンテンツ(部品)をパッケージ化し、必要があるたびに呼び出す方法、それとEPUBの中に埋め込んでしまうやり方が準備されている。

・連携したり、組み込まれたりするために、お互いがお互いを認識するためのファイル構造、メタデータをどうするか、などが議論されている。同様に、通信機構の工夫についても。

 

4-5:Distributable Objects/流通する(分解/再統合/変換される)素材

・仁徳天皇を祭った古墳の写真や説明文を使いまわしたい、といったニーズに応えるための項目。大学でも最近、自分の目の前にいる学生のレベルにあった、また自分の教授法にあった教材をつくるため、先生方はたくさんの教科書の中から、パーツを切り出してひとつのパワーポイントにまとめる例が増えてきている。そういうニーズを汲み上げることができるのがこの項目。教科書を作る出版社は製本されたものを販売すると同時に、あるいは電子教科書を販売すると同時に、その教科書の「部分」を、教材制作用「素材」として販売できるようになるかもしれない。

・さらに、「革命的な仕掛け(田村先生)」がこの項目で議論されている。せっかく教科書内容のアンバンドルと、リ・バンドルする仕組みを構想するのなら、電子教科書の「パッケージ」概念を脱構築して、ブラウザで見れるようにしてはどうか、という発想。
・これまでは電子書籍にしろアプリにしろ、ダウンロードし、手元のクライアント(端末)に格納し活用していた。それをやめてブラウザから閲覧できるようにしようというのだ。著作権の問題、ビジネスモデルなどを再検討することになるであろうアイデア。

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◇関連クリップ
EPUB-WEB ― 本とウェブとの境目をゼロにするビジョン - 電書ちゃんねる http://densho.hatenablog.com/entry/intro-to-epub-web
パッケージとしての文書、デジタル化で折角ポータブル(どこでも、いつでも読める)にしたのなら、もう一歩進めて、ブラウザで読めるようにしては、という発想が、ゆっくり具体化されていく、確かな里程標となる動き。 

 

デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回 【セミナー備忘録】(上)



(個人用のメモです。議事録ではありません。記事中の図画はプレゼン公開資料を使用しています。また自分用にまとめている関係で、登壇順というより、内容をシャッフル、統合しています。そしてその際ひとつひとつにどの講演者の発言であったかの注記はしていません。)

JEPAセミナー:デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回

http://www.jepa.or.jp/sem

■概要
・ご挨拶 吉井 順一 氏 (IDPF理事)
・ICT CONNECT21のご紹介 稲葉 雅昭 氏(ICT CONNECT21事務局長)
・EDUPUB Phoenix 2015 報告 田村 恭久 氏(上智大学、JEPAフェロー)
・IDPF、W3Cのデジタル教科書、教材関連標準化動向 村田 真 氏(JEPA CTO)
・EDUPUB Profile解説 高瀬 拓史 氏 (イースト)

■講演詳細
日時:2015年3月11日(水) 15:00-17:30
会場:飯田橋:研究社英語センター 地図
主催:日本電子出版協会(JEPA) Continue reading

 

●「趣味」に特化したオンライン講座「Craftsy」

D:<学習・教育のデジタル化>と<脳と身体の生態史観>

「趣味」に特化したオンライン講座サービス「Craftsy」 http://blogos.com/article/107621/



学習「意欲」があるものには、素晴らしい時代が到来しようとしている。「時間、場所、方法にとらわれることなく、自分のやり方で学べること」をモットーに、分かりやすく親しみやすい講座が動画で配信。講義を担当しているのは厳選された「丹念に教えることができる」インストラクターで、235ものプロスタッフにより撮影が行われ、とっつきやすいものにするよう、グラフィックや3Dなどを利用して構成をブラッシュアップ。1講座ごとの長さはおおよそ4時間で、料金は20~50ドル(約2400~6000円)ほど。

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