Category Archives: 知のパラダイムシフト

Chatgptに書かせた「Chatgptと教育の未来」

◎Chatgptと読む能力や思考する能力◎

■文章を読む能力や思考する能力、それらと文章の難易度

厚生労働省が発表した2020年の平均寿命で、川崎市麻生区が全国の市区町村で、男女とも最も長寿でした。経済格差が健康格差になっている(元横浜市職員の加藤彰彦沖縄大名誉教授(社会福祉))という分析がある一方、実際に住んでいる住民からは、「麻生区は丘陵地帯を開発して発展した街。どこにいっても坂道ばかり。駅にいくだけで足腰が鍛えられる(地域教育会議の地域教育コーディネーター)」といった意見もあるのだそう。

さてここで、坂道が多いというのは一般的には住宅地にとってデメリットにもなります。たとえば、買い物に行くのに歩きは無理、とか、自転車がそもそも使えないなどです。また不動産専門業者からは、広告をみるとき、「駅から徒歩○○分」はあくまで距離から割り出された数値で、坂道なら実際は朝の通勤時もっと時間がかかるので事前に要チェックとの声がかかります。出張にスーツケースを抱えて移動などというシーンも要注意。 Continue reading

 

ChatGPTがエルサレムのアイヒマンを大量生産しないために

◎子を持つ親、教員、出版人のためのChatGPT入門◎

まず次の「アミラーゼ問題」を考えてみてください。

●アミラーゼ問題

次の文を読みなさい。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

セルロースは(     )と形が違う。

(1)デンプン (2)アミラーゼ (3)グルコース (4)酵素

正解はこの記事の途中(2.問題文が読めないと問題は解けない)で紹介します。

 


目次:
1.ChatGPTは習わぬ経を読む門前の小僧
2.問題文が読めないと問題は解けない
3.書き言葉は学習によってしか習得できない
4.エルサレムのアイヒマンとChatGPTのリスク


 

さて、この記事のポイントは、次の内容となります。


ChatGPT(チャットジーピーティー)は「それらしいことを言うけれど実は何も考えていない人」です。もちろんこの表現はたとえであって、ChatGPTに人格はありません。つまり意思も知性も持ち合わせません。あくまで生成系AIのひとつで、文章生成ツールです。学習・教育のシーンで文章生成ツール・ChatGPTをどう活用するか。その検討の際、成長過程での脳の段階的発達との関係に十分配慮をすべきです。読み書きを通して脳は新しい神経回路を形成し、さまざまな認知機能を発達させます。なかでも書き言葉に励起される「思考」機能は、個人の人生と現代経済社会に不可欠な要素です。


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●ネット・ケータイが起こした風景の変化と本、あるいは読書

 

■出版市場の4割をコミックが占める日本

取次会社である、日本出版販売株式会社やトーハン株式会社は自社データをもとに、日本の出版市場に関する資料を月刊誌や年鑑として出しています。これに対して、中立的な立場から、より総合的な情報を提供する研究機関として、出版科学研究所があります。

今回、出版科学研究所が出している『出版指標年報』を使い分析したところ、2022年の「紙+電子」のベースで、出版ジャンルとしての「コミック」が日本出版市場の実に4割を超えてきていることがわかりました。 Continue reading

 

コミックが書籍を超えた日

・紙と電子を合算した出版市場が4年ぶりのマイナス成長

電子出版、1桁成長に鈍化 22年7.5%増 紙含めた市場、4年ぶり縮小

 

■2022年、出版市場は再び軟化

出版市場は電子版を加えたベースで2018年を底に、前年比増加基調に転じたとされてきました。ところが、2022年再び前年比減少となりました。理由は電子版の軟化です。 Continue reading

 

●書店の未来と新しい社会システムの行方

■アルゴリズムで創られていく社会システムとの具合のいい塩梅

解剖学者の養老孟司氏が、ある本の解説文の中で、現代社会は、自然発生的な社会システムとアルゴリズムで創られていく社会システムとの拮抗、具合のいい塩梅を探っている段階にある、と書いていました。

アルゴリズムで創られていく社会システムとは、スマホに代表される情報技術が変えつつある日常生活、そしてそのイメージの裏側にある、計算や手続きで成立し、合理的なことをよしとする、社会システムのことです。経済や流通、通信分野はどんどん「新しい社会システム」へシフトして行っています。

しかし分野により、また国や民族、宗教により、アルゴリズムで創られていく、「新しい社会」へのシフト状況は様々で、かつ受け入れ、飲み込める程度は異なっています。

出版分野、また書店や本好き人種はどうなのでしょう。 Continue reading

 

アクセシブル・ブックス・サポートセンター(ABSC)について

 

■アクセシブル・ブックス・サポートセンターとは

「読書バリアフリー法」の制定を受け、「アクセシブル・ブックス」の推進に必要な情報の業界内流通・業界外発信と、個々の出版社からの要望を吸い上げるために設立された機関。特にTTSの推進とBooks( 日本出版インフラセンターが管理運営する書誌データベース)のアクセシブル対応には当面力をいれていく方針。略称はABSC(Accessible Books Support Center)。現在(2022年5月)は、準備会が発足し(2021年9月)、出版各社の中に、ABSC連絡窓口、担当セクションを設けるよう依頼している段階。

・読書バリアフリー法に対応する<ABSC連絡窓口>設置のお願い https://jpo.or.jp/topics/2021/10/211029.html


アクセシブル・ブックス=アクセシブルな電子書籍+アクセシブルな書籍
アクセシブルな電子書籍=デイジー図書・音声読上げ対応の電子書籍・オーディオブック等
アクセシブルな書籍=点字図書・拡大図書等


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出版業界と読書バリアフリー法

■読書バリアフリー法関連年表

2013年6月 マラケシュ条約の採択
2018年4月 日本の同条約締結に関わる手続き完了(発効2019年1月

2013年6月 障害者差別解消法制定(施行2016年4月)
2016年3月 JISX8341-3:2016が施行(ホームページ等を高齢者や障害者を含む誰もが利用できるものとするための規格)

2018年5月 著作権法の改正(施行2019年1月

2019年6月 読書バリアフリー法制定・施行
2019年11月 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会の発足 Continue reading

 

本をどう与えたら良いか、悩む親や先生に

読む、書く行為のデジタル化、したがって液晶画面化が進行している。この変化は果たして、人間の脳の発達や働きにどのような変化を生むのか? 『デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳』はそうした疑問に答えようとする啓発の書。同時に、デジタル時代に「深い読み」が絶滅危惧種にならなくするにはどうしたよいのか、考え抜いた警世の書。

 

■ディスレクシア

著者メアリアン・ウルフは認知神経科学、発達心理学の専門家。とりわけディスレクシア(識字障害)の研究で著名な学者。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院・教育情報学部の「ディスレクシア・多様な学習者・社会的公正センター」所長です。 Continue reading

 

プログラム的思考とAIが知識を共有する時代の教育

◎知恵クリップ|「楽しい」が学習の基盤 プログラミング教育にとっても◎

Quora 世界最大級の知識共有プラットフォーム

■子どもたちの職業観

専門知の生態系(生成と流通)がITで大きく変貌を遂げつつある現代。最近注目を集めているのは、AI技術をつかった、質の高い知識の集積に取り組んでいるQ&Aサイト、「Quora - 知識を共有し合い、世界を知ろう」です。国産でいうと、「Yahoo! 知恵袋」や「OKWave」が該当しますが、「Quora」は「実名制」が基本のサービス。発祥の米国では、サービス・ローンチ時点にバラク・オバマ氏やヒラリー・クリントン氏、Wikipedia創設者のジミー・ウェールズ氏など、米国の政府関係者や専門家が数多く参加し、注目を集めています。 Continue reading

 

どうすれば本が売れるか 一つの「解」がTikTok?

 

◎知恵クリップ|興味ECの道具立てを急げ!日本の出版業界◎


中国TikTok・抖音が提案するEC新常識「興味EC」とは?ショート動画アプリの進化|China Cosmetic Lab|note


「興味EC」とは、
購入のために検索するのではなく、コンテンツを視聴して興味を持ち、
それが購入につながるEC手法


 

■興味ECにTikTok

中国の出版市場はその8割がネット経由、ECでの売上です。そのため「棚の力」が役割を発揮する余地が小さく、ネットでの評判が売上の趨勢を決めます。結果、点数ベース・売上上位1%の書籍が、金額ベース・全体売上の60%を稼ぐベストセラー指向の強い市場特性となっています。

その中で、宣伝方法に近時大きな変化が起きています。短尺の動画、日本のテレビショッピングの簡易版のような仕上がりの動画で売る、のが当たり前になっています。顕著なのは児童書販売で、ショート動画のEコマースでの売り上げが全体の6割を占めているようです。(以上、「2021年中国出版市場動向 | HON.jp News Blog」などより) Continue reading