Category Archives: <メディアとしての紙>から<デジタル化するメディア>へ

スマホを閉じて深く潜れ 読書があなたを強くする

◎これはクリップ集です◎

■デジタル時代に起きている“静かな変化”

ビジネスの最前線で膨大な情報に晒される皆さんへ。いま私たちの「知のスタイル」は、効率一辺倒の時代を抜けて、静かに変わり始めています。動画や要約でのインプットが主流となる中、あえてアナログな「読書」を取り戻すことが、むしろ最先端の知的行為として再評価されているのです。

■韓国発「テキストヒップ」という新しい価値観

象徴的なのが、韓国で広がる「テキストヒップ」。20代の読書率が7割を超える背景には、「活字を読む自分はかっこいい」という価値観があります。これは情報過多の環境やSNSから解放され、自分の思考に潜る時間を“贅沢なファッション”として楽しむ文化。情報に流されがちな現代のビジネスパーソンにこそ、この姿勢が創造性の源泉になります。

■日本の書店は進化している そしてあなたも

日本の出版や書店も、単なる衰退では語れません。人口動態を踏まえて見直せば、新たなニーズが見えてきます。実際、30年成長を続ける書店が存在するのは、「本を売る」以上に、読者との対面体験や偶然の出会いといった価値を磨き続けているからです。

また私たちが書店に足を運ぶ理由は、目的の本だけではありません。予期せぬ一冊との出会い、静けさの中で自分と向き合う時間、教養が更新されていく感覚――それはデジタルでは代替できない体験です。

これから紹介するWeb記事には、日本の出版文化の独自性から街の本屋を守る挑戦、最新トレンドまで、知的好奇心を刺激する視点が詰まっています。仕事のスキルだけでなく、人としての「深み」を育てるヒントを、ぜひ受け取ってください。

■知恵クリップ

●紙の出版市場“1兆円割れ”は本当に衝撃なのか――消費者物価指数と生産年齢人口を考慮して見えた異なる景色 https://honjp.theletter.jp/posts/8c670590-8753-4335-bf73-245e88a1811d
「ここ数年、急激に物価が上昇しているため、2020年基準消費者物価指数で計算すると、2025年の実質出版市場は8621億円になります。そして「1兆円割れ」は2023年時点ですでに起きていたことになります。」
「「実質出版市場が1兆円未満だったのはいつか?」も少し気になるところですが、2020年基準の消費者物価指数は1970年以降しか存在しません。2010年基準で計算すると、1兆円未満だったのは1966年まででした。」

★An Introduction to Japan's Publishing Scene https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/international/international-book-news/article/99726-tokyo-calling.html
国際出版社協会は、日本を米国、中国、ドイツ、英国と並んで、常に世界のトップ5の出版市場に位置付けている。しかし、日本の出版業界に関する情報は海外ではほとんど入手できない。そこで英文での「日本の出版業界入門」を作製した。

●「読書はオシャレでかっこいい」韓国の若者のあいだで読書ブームが起きている https://gendai.media/articles/-/164230
読書を自分の個性やセンスを表現するものとして消費するムーブメント、「テキストヒップ(Text Hip)」と呼ばれる現象が韓国では起こっている。
例:
・お気に入りの文章をノートに手書きで書き写す「筆写(ピルサ)」
・お酒を飲みながら本を読むブックバーや独立系書店

●いったいなぜ? 読書に目覚めた韓国の若者たち https://nhkbook-hiraku.com/n/n5453f918deee
「どんな装丁か、持ち歩いたときにどう見えるかも、読者の選択基準のひとつになった。韓国の書店では「映える本」がヒットしやすくなり、特装版や限定カバーの本が続々と登場。出版業界もそれを意識した展開を強化している。」
・韓国ではおしゃれな装丁で統一されている

●20代の読書率は7割以上!韓国の若者が起こした文学書の大ブーム「テキストヒップ」の実態 https://gendai.media/articles/-/165133
「25年の韓国の大手書店の統計によれば、直近1年間の2030世代の図書購入額は前年比で約15〜20%増加しており、特に詩集や短いエッセイの売上は前年比30%と急増した。テキストヒップとは「文章」を消費することであり、魅力的な文章が収められた文学作品が特に人気を集めているためだ。」

●韓国若者読書ブーム「テキストヒップ」20代読書率75%超 / X https://x.com/i/trending/2033082046638178574
「筆写本やイベントが大人気です。日本でも若者の読書離れが進む中、こうした動きが参考になりそうです。」

●批評家・宇野常寛が語る、次なる書店のカタチ https://wpb.shueisha.co.jp/news/lifestyle/20260222-130217/
「なぜ図書館ではなく書店なのか。それは、出会った本を自分の所有物にできるという充実感が、読書体験において極めて重要だからです」
(略)
「僕自身、最近は本が欲しいとまずKindleで探してしまいますが、あらためてリアルに本が並んでいることのよさを感じました。ネットで本を探せるのは、すでにその本の存在を『知っている人』だけ。知らない本は検索のしようがありません。」
・座れるスペースも多数あり、落ち着いて本を選べる

●人は買いたい本があるから書店に行っているわけではなかった ―「リアル書店に行った理由」アンケート https://note.com/yomitaina/n/n575ac81bc1f9
1.書店に行った人は必ずしも本を買うわけではない
2.目的なく訪問した人の過半数が本を買っている
3.探している本があるだけで書店に行くわけではない
・直近1か月以内に書店に行った人へのアンケート

●失われていく書店という風景「本を文化の真ん中」に置くために必要なこと 隆祥館書店社長 二村知子 https://ovo.kyodo.co.jp/column/a-2077515
「ドイツでは、その日の午後6時までに書店が注文を受けた本は、翌朝の開店前に届く〝即納態勢〟が整っています。本の取次業者は無料で、かつ迅速に届けることを使命としており、その結果、書店がアマゾンよりも早く本をお客さまに提供できる環境が成り立っていました。
これに対し、日本では至急便として「ブックライナー」が用意されていますが、ドイツと違って経費がかかるのです。」

●「本が売れない時代」なのに30年間右肩上がり…京都生まれの大垣書店が突き止めた"本離れ"の意外な突破口 https://president.jp/articles/-/108570
「書店って、来る人が変われば、置く本も、空気も、まったく変わるんです。学生が多い街と、研究者や家族連れが集まる街では、同じ棚では通用しませんから」
「だから大垣書店では、「どんな人が、どんな目的でこの街に集まっているのか」を起点に、店づくりを考える。ジャンルの比率、棚の見せ方、空間の使い方まで、すべては立地と客層から逆算する。」

 

 

  

 

AIと動画が書き換える「知」と「メディア」

◎これはクリップ集です◎

生成AIと動画プラットフォームの台頭は、書籍・メディアの価値連鎖を組み替えつつある。

情報の接点が「検索」から「対話」へ

Amazonが米国で開始したKindleの新機能「Ask This Book」は、購入・閲覧済みのKindle書籍に対し、ネタバレを避けながら内容理解を支援する“読書アシスタント”を目指している。検索の延長とamazonは説明するが、「検索」ではなく「対話」を通じて知を獲得する時代への移行を象徴しする出来事だろう。 Continue reading

 

出版業界の未来とAI ― バブルと構造変化の狭間で考える

◎これはクリップ集です◎

■AIがやってきた

出版業界は、生成AIの登場によって編集・翻訳・企画のプロセスが大きく変わりつつあります。校正の自動化や要約生成はもはや当たり前となり、制作コストの押し下げに期待がもたれています。一方、著作権や創造性の根幹に迫る問いを投げかけています。その結果、「人間にしかできない価値とは何か」を改めて問う状況が生まれています。

こういった変化は出版に限らず、あらゆる産業で進行しており、「AIバブル」や「その崩壊」という刺激的な言葉が注目される背景にもなっています。

 

■バブル論、崩壊論

では実際のところ、生成AIはバブルなのか。

これは論者の立ち位置、視点にもより、結論だけを鵜呑みにするのは危険です。

たとえば方や「300億~400億ドル規模のAI投資にもかかわらず、95%の組織が「何の成果も得られなかった(ゼロリターン)」」とMITが報じれば、他方、ソフトウェアレビュープラットフォームG2によれば、「B2B企業の57%がすでにAIエージェントを本番環境で運用しており、展開後の失敗率は2%未満」としています。 Continue reading

 

教育のデジタル化:「発達」を考慮したルール整備が課題


「人間の脳は1万〜2万年の時間を経ても変わっていません。生物学的な視点で、私たちの体をいま一度捉え直すことが大切なのです。
(中略)
(デジタル時代の今日、強調したいのは)「テクノロジーそのものは素晴らしいが、適切に使用すべきだ」ということです。特に子どもたちには睡眠や運動、そしてリアルの場での社会的な交流が必要です。
アンデシュ・ハンセン「テクノロジーは“太古の脳”を持つ私たちに順応すべきです」)」


■デジタル教科書を本格導入

令和6年度(2024年度)は、小学校用教科書の改訂時期であり、それを契機にデジタル教科書を本格的に導入していく年度に当たります。小学校5年生から中学3年生の「英語」が、デジタル教科書の先行導入科目となり、順次拡大されていく流れです。QRコードの多用が話題になっていましたね(中学教科書、デジタル化進む QRコード急増)。

また、2024年4月1日より、特別な配慮を必要とする児童生徒等に対して、「合理的配慮の提供」が義務化されますが、教科書のデジタル化はこの点でも大きな役割が期待されています(たとえばデイジー教科書)。

 ※「デイジー教科書」とはデジタル録音図書の国際標準規格「デイジー」を採用した教材。パソコンやタブレット型端末などで利用する。音声を聞きながら文字や写真を見たり、文字の大きさや色を変えて読みやすくしたりできる。

これは、主にハード面を念頭に展開されたGIGAスクール構想でICT機器が身近になった教育現場に、教科書や教材などソフト面の充実が、教育ICT化の次の対象と目されているからなのです。
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「本と編集力」を起点に考えるこれからの出版社経営

■電子書籍の健闘と内訳の電子コミック

日本の出版市場は20世紀が終わろうとする1996年をピーク(2兆6564億円)に、凋落傾向にあります。21世紀になり、一旦電子書籍が健闘、市場全体を引き上げるかと思われましたが、2021年以降、再び「紙+電子」ベースでも縮小トレンドに戻ってしまいました。

そして遂に2023年の市場規模はピーク期比4割減の、1兆5963億円となってしまいました。紙+電子ベースで、です。電子書籍市場の押し上げ効果を無にするような紙版(書籍+雑誌)の凋落ぶりです。

・日本の出版市場推移(1996~2022年)|出版科学研究所

日本の出版販売額 | 出版科学研究所オンライン

電子書籍の中でも、電子コミックは力強い上昇基調にあります。
・日本の出版市場推移(1996~2022年)

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ChatGPTがエルサレムのアイヒマンを大量生産しないために

◎子を持つ親、教員、出版人のためのChatGPT入門◎

まず次の「アミラーゼ問題」を考えてみてください。

●アミラーゼ問題

次の文を読みなさい。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

セルロースは(     )と形が違う。

(1)デンプン (2)アミラーゼ (3)グルコース (4)酵素

正解はこの記事の途中(2.問題文が読めないと問題は解けない)で紹介します。

 


目次:
1.ChatGPTは習わぬ経を読む門前の小僧
2.問題文が読めないと問題は解けない
3.書き言葉は学習によってしか習得できない
4.エルサレムのアイヒマンとChatGPTのリスク


 

さて、この記事のポイントは、次の内容となります。


ChatGPT(チャットジーピーティー)は「それらしいことを言うけれど実は何も考えていない人」です。もちろんこの表現はたとえであって、ChatGPTに人格はありません。つまり意思も知性も持ち合わせません。あくまで生成系AIのひとつで、文章生成ツールです。学習・教育のシーンで文章生成ツール・ChatGPTをどう活用するか。その検討の際、成長過程での脳の段階的発達との関係に十分配慮をすべきです。読み書きを通して脳は新しい神経回路を形成し、さまざまな認知機能を発達させます。なかでも書き言葉に励起される「思考」機能は、個人の人生と現代経済社会に不可欠な要素です。


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●ネット・ケータイが起こした風景の変化と本、あるいは読書

 

■出版市場の4割をコミックが占める日本

取次会社である、日本出版販売株式会社やトーハン株式会社は自社データをもとに、日本の出版市場に関する資料を月刊誌や年鑑として出しています。これに対して、中立的な立場から、より総合的な情報を提供する研究機関として、出版科学研究所があります。

今回、出版科学研究所が出している『出版指標年報』を使い分析したところ、2022年の「紙+電子」のベースで、出版ジャンルとしての「コミック」が日本出版市場の実に4割を超えてきていることがわかりました。 Continue reading

 

コミックが書籍を超えた日

・紙と電子を合算した出版市場が4年ぶりのマイナス成長

電子出版、1桁成長に鈍化 22年7.5%増 紙含めた市場、4年ぶり縮小

 

■2022年、出版市場は再び軟化

出版市場は電子版を加えたベースで2018年を底に、前年比増加基調に転じたとされてきました。ところが、2022年再び前年比減少となりました。理由は電子版の軟化です。 Continue reading

 

●書店の未来と新しい社会システムの行方

■アルゴリズムで創られていく社会システムとの具合のいい塩梅

解剖学者の養老孟司氏が、ある本の解説文の中で、現代社会は、自然発生的な社会システムとアルゴリズムで創られていく社会システムとの拮抗、具合のいい塩梅を探っている段階にある、と書いていました。

アルゴリズムで創られていく社会システムとは、スマホに代表される情報技術が変えつつある日常生活、そしてそのイメージの裏側にある、計算や手続きで成立し、合理的なことをよしとする、社会システムのことです。経済や流通、通信分野はどんどん「新しい社会システム」へシフトして行っています。

しかし分野により、また国や民族、宗教により、アルゴリズムで創られていく、「新しい社会」へのシフト状況は様々で、かつ受け入れ、飲み込める程度は異なっています。

出版分野、また書店や本好き人種はどうなのでしょう。 Continue reading

 

アクセシブル・ブックス・サポートセンター(ABSC)について

 

■アクセシブル・ブックス・サポートセンターとは

「読書バリアフリー法」の制定を受け、「アクセシブル・ブックス」の推進に必要な情報の業界内流通・業界外発信と、個々の出版社からの要望を吸い上げるために設立された機関。特にTTSの推進とBooks( 日本出版インフラセンターが管理運営する書誌データベース)のアクセシブル対応には当面力をいれていく方針。略称はABSC(Accessible Books Support Center)。現在(2022年5月)は、準備会が発足し(2021年9月)、出版各社の中に、ABSC連絡窓口、担当セクションを設けるよう依頼している段階。

・読書バリアフリー法に対応する<ABSC連絡窓口>設置のお願い https://jpo.or.jp/topics/2021/10/211029.html


アクセシブル・ブックス=アクセシブルな電子書籍+アクセシブルな書籍
アクセシブルな電子書籍=デイジー図書・音声読上げ対応の電子書籍・オーディオブック等
アクセシブルな書籍=点字図書・拡大図書等


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