どうすれば本が売れるか 一つの「解」がTikTok?

 

◎知恵クリップ|興味ECの道具立てを急げ!日本の出版業界◎


中国TikTok・抖音が提案するEC新常識「興味EC」とは?ショート動画アプリの進化|China Cosmetic Lab|note


「興味EC」とは、
購入のために検索するのではなく、コンテンツを視聴して興味を持ち、
それが購入につながるEC手法


 

■興味ECにTikTok

中国の出版市場はその8割がネット経由、ECでの売上です。そのため「棚の力」が役割を発揮する余地が小さく、ネットでの評判が売上の趨勢を決めます。結果、点数ベース・売上上位1%の書籍が、金額ベース・全体売上の60%を稼ぐベストセラー指向の強い市場特性となっています。

その中で、宣伝方法に近時大きな変化が起きています。短尺の動画、日本のテレビショッピングの簡易版のような仕上がりの動画で売る、のが当たり前になっています。顕著なのは児童書販売で、ショート動画のEコマースでの売り上げが全体の6割を占めているようです。(以上、「2021年中国出版市場動向 | HON.jp News Blog」などより)

ここへきて日本でも似た動きが出てきています。背景にはネット上のトラフィックにかつてない大きな変動があることがあげられます。なんと、2021年の最多トラフィックドメインはGoogleを抜いてTikTok、だったのです。

出版のDX(デジタルトランスフォーメーション)は宣伝方法からでしょうか。出版業界の最新動向をWeb記事で集めました。

 

■知恵クリップ(Web記事)

2021年の最多トラフィックドメインはGoogleを抜いてTikTokに
2021年はTikTokの年だった。検索で圧倒的なGoogleでさえ後塵を拝した、地殻変動の年が2021年。

「Cloudflareによると、TikTokは2月に初めてトップになり、5月に一旦ランクを下げた後はずっとトップを維持した。Googleは2月のスーパーボウルの時期にトップに立ったこともあったが、その後はほぼ2位。昨年2位だった米Facebook(現Meta)は、10月の大規模障害の期間を除きずっと3位を保った」。
・インターネットトラフィックランキング(2021年)

TikTok just beat Google at the internet

 

20歳と18歳が読んだ本、“TikTok売れ”した作品が人気
TikTokが引き起こした地殻変動は、日本の書籍販売の導線にも大きな痕跡を残した。
ハイブリッド型総合書店「honto」での「新成人」の書籍購買動向を調査したところ、「文庫」で、TikTokの小説紹介投稿をきっかけに売れた作品や、「ノンフィクション」で、YouTuber「コムドット」の初のエッセイがトップになるなど、動画が販促の牽引役になった。

 

出版社はTikTokをどう活用すべき? SNS研究者が指摘する、短尺動画でヒットを生むことの功罪
天野彬氏:
「TikTokは非常に狙い目だと思います。本を読むのにハードルの高さを感じるけれど、本の内容自体に興味はあるという人は実は多くいるはずです。TikTokはそういう人にも届けられるでしょう」。
・SNS全体の質的な変化:
「今、SNS全体が『短尺動画化』している傾向があります。TikTokのほかにも、Instagramはリールを始めましたし、YouTubeにはショートがあります。LINEも最近、トークのすぐ横のタブでVoomという短尺動画などが見られるサービスをはじめました。
・短尺動画化した背景:
若年層の中でスマホが一番接触するコミュニケーションデバイスになったことが挙げられます。アテンションが短くなり、見るコンテンツもアプリの切り替えもすぐにパパッと行われるようになったので、それに合わせて短尺で楽しめるものを提供する必要があるのです」

TikTok、人生を変えた本やおすすめしたい本の紹介動画を募集する「#本の紹介」

 

ユーチューバーだから気づいた「TikTok売れ」が起こる本当の理由
「おすすめ」フィードという革命:
インプレッション=再生、というTikTok独自の仕組みが、そもそもバズりにくい情報でさえ、なんとなしに受け入れてしまうことにつながるのです。まったく興味なかったけれど、話を聴いてみたら、読みたくなったとなるわけです。」

 

ツイッター民には理解できない」若者がTikTokにハマってしまう本当の理由  「フォロワー0」で拡散が起きるワケ
「TikTokのレコメンドシステムはフォローの有無に関わらず、プラットフォーム独自のレコメンドシステムやAIによってさまざまな投稿がユーザーごとに最適化され、「おすすめ」フィードに表示されます。それを縦にスワイプしていくと、レコメンドされた動画が自動再生される仕組みになっています。」

ショートムービー・マーケティング TikTokが変えた打ち手の新常識

 

 

「TikTokとYouTube」 SNSとして見た時の根本的違い
「TikTokは中国のByteDance(バイトダンス)社が運営するショートムービー配信アプリで、2016年に中国版がリリースされました。2018年には全米のApp Store無料アプリ部門で年間1位のダウンロード数となり、2021年には月間アクティブユーザーが全世界で10億人を突破しました。」

YouTubeは、そもそも「動画を共有するための置き場」であり、典型的な「プル型」のサービス。これに対し、TikTokは「プッシュ型とプル型のハイブリッド」。ここがTikTokと他のSNSとの大きな違い。

プッシュ的:アプリを立ち上げさえすれば、わざわざ見たいものを検索しなくても、勝手に動画が流れてくる、テレビCMと同じ性格がある。
プル的:TikTokのAIが勝手に視聴者に届けてくれる。TikTokの場合、拡散されるための最適な導線が作られているため、「おもしろいのに人の目にまったく触れない」ということが他の媒体に比べて圧倒的に少ない。
TikTokで人を集める、モノを売る ; 世界一カンタンなSNSマーケティングの教科書

 

 

女性メディア『Marisol』が「コマースメディア」へリニューアル
雑誌のDXの神髄は、「情報発信メディアからコマース媒体への転身」か。
2021年秋に定期刊行を終了したファッション雑誌『Marisol』の事例:
メディア:オンラインセミナーも順次開催
コマース:ファッション誌のビジュアルはそのままに、掲載商品の約8割をWebサイトで購入できるように。「ここでしか買えない」アイテムも揃える。

 

 

文藝春秋 「週刊文春 電子版」記事配信時間を雑誌発売日前日12時に前倒し
「「週刊文春 電子版」は、雑誌発売日前日にスマホやパソコンで全ての特集記事が読めるサブスクリプションサービス。記事配信時間の変更により、16時に文春オンラインで配信している記事ダイジェスト「スクープ速報」より早くなるのに加え、昼過ぎには一部の関係者が入手していた発売前の見本誌、通称「早刷り」より前に記事を読むことができる。」

 

 

光文社、文藝春秋に続きマガジンハウスと、出版社が続々コミックに本格参入する理由(篠田博之)
出版不況と言われながらも、コミック市場だけは急速に伸びていて、ここへきて参入が増加傾向。
参入理由:
1.講談社、小学館、集英社の大手3社のコミックが、経営の屋台骨を支えるほどの収益を上げ、安定した市場の伸びが続いていること。
2.かつてのように紙の雑誌を発行しなくてもデジタルで連載したものを書籍化することが可能となって、リスクが相当小さくなったこと。

「今、マガジンハウスの各雑誌がウェブを持っていますが、そこでマンガの連載をして単行本にしていく予定です。マンガ準備室は他社でマンガの編集をやっていた方をヘッドハンティングし、フリーの編集者にも入っていただいて立ち上げました。」

「柱の一つはまず文藝春秋で出している原作物のコミック化。『鬼平犯科帳』や『新選組血風録』などが出ています。
2つ目は文春オンラインのデジタルコミック連載から生まれたコンテンツ。」

 

 

絶版本、ネット閲覧5月から 国会図書館サイトで可能に
本人確認のため身分証明書を用いた利用登録をすることでサービスの利用が可能になる。2023年1月には不正コピー対策を行った上で、印刷もできるようになる予定。

 

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