Category Archives: 学習・教育のデジタル化と変容する知の体系

電子図書館の普及状況(2020年)

◎2020年における電子図書館サービスの普及状況を『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2020』およびその他公開資料からみていこう。

まず確認しておかないといけないのはここで記述されるのはB2Bサービスであること。B2B以外にB2Cでの電子図書館サービスもあるがここでは対象外。

さてそのうえで、大学図書館はこのサービスを導入しうる施設へはほぼ導入が完了した状態。今後はコンテンツ(電子書籍)の増強やサービス内容の拡充が課題の段階。 Continue reading

 

コロナ禍の専門書への影響

◎コロナ禍で経済は大きなダメージを受けているようだ。だが産業別にみると、マイナスが強調される産業とはべつにプラスの要素がある産業もある。どうやら出版もプラスの側にあるようだ。

だが、人文・社会関連の専門書出版社の実感、肌感覚はこれと異なる、なぜなのか。少し長いレンジの日本社会の動向も合わせ分析してみた。

1.「社会生活基本調査」には「学習」の項目がある

社会生活基本調査は5年おきに総務省統計局が実施する大規模調査。主たる調査内容は、生活時間調査と生活行動調査。そのうち、自由時間に行った活動(余暇活動)として分類されている5ジャンルの中に「学習」があり、出版事業と関係したデータが得られる。(5ジャンル=スポーツ/学習・研究/趣味・娯楽/社会奉仕/旅行・行楽) Continue reading

 

専門書の未来

◎専門書の未来は電子出版(ebook+POD)とオープンとクローズの入れ子構造の工夫にある。

知識と本

「知識」は公共財です。誰でもがアクセスできるようオープンでなければなりません。

津波がここまで来たぞ、これより下に住むなといった石碑があちこちに残されていたことを3.11で私たちは改めて知りました。津波に関する知識を誰でもが共有し次世代に残すため、アクセスしやすくオープンにする工夫が石碑でした。また神話に無文字社会の「知識」伝達手段の役割があったことを最近の研究は明らかにしています。口承(オープン)で流布していた神話は、物語のカタチをとった「知識」伝達の手段だったのです。 Continue reading

 

■コロナの大学へのインパクト 生まれるか教育の「ニューノーマル」

「ペストがルネサンスや宗教改革のきっかけとなったように、新型コロナの収束後は、働き方も学び方も生き方も今とは違ったより良いものに進化する。(出口治明・立命館アジア太平洋大学学長)」

OCW、MOOCから教育のデジタル化(DX)へ

日本の教育界において大学は、デジタルコンテンツ制作に関し10年を超える実績がある。米国MITがはじめたOCW(オープンコースウェア ;Opencourseware)は授業内容を映像に撮り、あるいは講義資料をデジタル化してそれらを大学のHPで公開する活動。米国で2003年に、日本では2005年(JOCW|現在はオープンエデュケーション・ジャパンが名称)にスタートした。主に大学を学外に公開する点(大学のオープン化)に意義があった。 Continue reading

 

■オンライン講義で大学の非常勤講師が悲鳴をあげている

大学教育における非正規化問題

大学教育において、本業を持たない非常勤講師の何が問題か。

学生:「先生、質問があるのですが、後で研究室に行っていいですか」
非常勤講師:「私は非常勤なので、研究室はないんだ」
学生:「では、ここで聞いていいですか」
非常勤講師:「時間がない。これから別の大学に移動するんだよ」 Continue reading

 

アドビの「Adobe Sensei」は福音か、凶報か

日本でも転職はめずらしいことでなくなってきました。DODA、ユーキャンなどのサイトへの来訪者規模はかなりの規模に達するそうです。他方、ある転職サイトの「キャッチ」が「転職は慎重に」となるほどに、転職がむしろ過剰に行われているのかもしれません。

ところであなたはAI(人工知能)の基礎知識を持っていますか?
商業デザインの仕事とその仕事が対象としている社会への、AIの影響についてどこまでの知識と理解を持っていますか?
AIについての基礎知識、本質的理解なしに転職して大丈夫でしょうか。転職先での競争に勝っていけるでしょうか。

いやAIはひとつの例に過ぎません。ビジネス、日常生活、政治、さまざまな局面で「知の体制」に変動が生じ、わたしたちはいま、「人間社会」の仕組み、システムの大きな「移行期」を生きています。文明の巨大な地殻変動が起きつつあることをあなた自身も、実は薄々感じてはいないでしょうか。

 

1.「今ほどデザインが重要な時代はない」

Continue reading

 

●学力には、学校が解決できない課題がある 


(母親の学歴が高いほど子供の学力が高くなるのは父親のせい - RYOSAKASANTO https://www.ryosaka.com/entry/2018/09/10/070000

格差の「連鎖・蓄積」(cumulative advantage and disadvantage)。

「通常、個人の不平等は、ある時点での有利さ・不利さが時間とともに積み重なっていく(「富める者はますます富む!」)。その時にスタート地点となる不平等は、家庭環境や性別のような当人の意思や努力によって獲得できない〈生まれながらの差異〉である。このような〈生まれながらの差異〉が、その後の人生における学歴や職の獲得に対して影響し続ける、との認識がアカデミックの世界では、当たり前になりつつある。

だから事後的な「再配分」より、就業する前の、教育内容と子育て段階にある家計への施策が重要である。 Continue reading

 

●ポストモダン思想の限界が、大学を危機に陥れている

マルクス社会学は、自由経済と資本主義が諸悪の根元だと考えた。そこで私的所有と自由競争を禁止しさえすれば、よい社会になると夢想した。

しかしそれが大きな勘違いだったことは歴史が証明。つまり、経済的な「平等」を力づくで実現させようとすると、逆にむしろ強大な権力システムが必要となり、必然的に自由の抑圧される社会しか産まない。

一方、新自由主義の社会構想の軸は、「権力自体が「悪」」。だから、それを廃棄してしまえ(官から民へ)ば問題は解決するとした。そしてそこから、どんな権力や制度も絶対的な根拠はもっていない(規制緩和が金科玉条)という相対主義から、社会をいよいよ混迷、不安の淵へと追いやってしまった。 Continue reading

 

●読むのも書くのも、140文字だけでは済まされない領域がある

教育議論、メディア論、ネット功罪論などで忘れられがちなポイント。生活シーンや社会活動の中で思考を巡らそうというとき、数千字、数万字の文章でないとたどり着けない結論がある、ということ。

そのための訓練の場が高等教育、大学の場であるはず。訓練には膨大な「知識」と、その知識の構造体としての「文脈」「思想」が必要だ。 Continue reading

 

●制度や仕組みのリ・デザイン 教育界にも

エドテックもプログラミング教育も、アクティブラーニングも、正しくその概念が産まれ出でた「文脈」を理解して対応するのでないと、間違える。

社会がsociety5.0へと変容しようとしている現実がまずあって、それへの対応にデジタルの力を借りよう、ということであって、技術ありき、ツールありきなのでない。 Continue reading