■オンライン講義で大学の非常勤講師が悲鳴をあげている

大学教育における非正規化問題

大学教育において、本業を持たない非常勤講師の何が問題か。

学生:「先生、質問があるのですが、後で研究室に行っていいですか」
非常勤講師:「私は非常勤なので、研究室はないんだ」
学生:「では、ここで聞いていいですか」
非常勤講師:「時間がない。これから別の大学に移動するんだよ」

 

平成の30年間で大学が大きく変わった。企業社会での変化、非正規雇用の増加が教育界で最も顕著なのは学問の府の大学だ。
・大学の教職員の現在の構造

(本業なし非常勤講師の急増で、日本の大学が「崩壊」する  https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-9936.php)

非常勤講師の激増、その遠因は90年代以降の大学院重点化政策により、行き場のないオーバードクターが増えたことにある。今では薄給の非常勤講師の職も奪い合い。

ちなみに2012年、文科省は大学が目指すべきは「生涯学び続け、どんな環境においても“答えのない問題”に最善解を導くことができる能力を育成すること」であるとし、そのためには、学士課程教育の質的な転換が不可欠であるとした。

しかし学部学科を問わず正規教員率の減少、本務先のない非常勤講師率の増加が進んでいる。教壇に立つ教員の半分以上が、不安定な生活にあえぐ本業なしの非常勤講師なのが今の大学の実態だ。いわゆるバイト教員が全体の半分、7~8割を占めるような大学で文科省がいう「学士課程教育の質的転換」は至難の業だろう。
・専攻別大学教員の構成変化

(本業なし非常勤講師の急増で、日本の大学が「崩壊」する  https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-9936.php)

彼らに大学のオープン化や教育のデジタル化をになってもらうのはかなり難しい。ましてや「機器代も通信費も自腹」の状況で、コロナ禍でのオンライン授業を負担せよというのは酷だ。

 


■関連URL

●コロナで働き方、学び方進化 男女平等進む機会に https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59146460V10C20A5000000/
職場としての大学キャンパスにも「ニューノーマル」革命の波が。。
「職員に子育て世代が多い立命館アジア太平洋大学(APU)では、子連れ出勤を導入した。
窮余の策だったが意外にうまく機能した。」
「僕が考える理想の大学は、1000年以上前に創立されたエジプトのアズハル大学だ。入学随時、受講随時、卒業随時で、誰にでも広く門戸を開放している。ペストがルネサンスや宗教改革のきっかけとなったように、新型コロナの収束後は、働き方も学び方も生き方も今とは違ったより良いものに進化する。

●「機器代も通信費も自腹」 オンライン講義で大学の非常勤講師が悲鳴 https://mainichi.jp/articles/20200428/k00/00m/040/112000c
「大型連休明けから本格的にオンライン講義が始まるが、大学からの資金補助はない。年間の収入は手取りで150万円ほど。「元々、給料が少ないのに二重苦だ」とこぼす。」

●COVID-19が大学院生(いわゆる無給医)に与える影響 https://note.com/arakin_2019/n/n931d3431969e
「大学院生の医師は学費を納めて研究に従事するために大学に所属しています。本来研究が本業であるはずの大学院生の医師が薄給かつ雇用契約が無いなどの不安定な身分で大学病院の診療を支えていました。」
「大学院生の医師は、外勤先からの収入で生計を立てていましたが、COVID-19の影響により外勤がキャンセルになり補償も無いなど収入にも影響が既に出ています。」