Tag Archives: IDPF

●「有料」エリアと「無料」エリアをどう結び付けるか コンテンツ・ビジネスの肝

クローズの「有料」エリアと、オープンの「無料」エリアをどう橋渡しするか。デジタル化時代のコンテンツ・ビジネスの知恵の出しどころ。ただ大方のコンテンツ関連企業の対応は鈍い。その中で少数ながら新聞、雑誌、書籍、それぞれの特性を生かした様々な取り組みが続いているのは心強い。紙版と電子版が共存しながら、コンテンツ(作品)のユーザーによる発見とそこから産まれるエコシステムの維持に、寄与する道が発見されなければならない。

注目すべきは、W3Cでクローズとオープンの橋渡しのアイデアが熱心に検討されていることだろう。

両者の接点にあるのが、HTML/CSSの技術群だ。

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IDPFと IMS Globalとの連携強化(Markus Gylling Joins IMS Global)

EPUB3.1において、これまでのEDUPUBの活動成果はすべてが先送りされた」。

EDUPUBは教育目的の機能を、電子書籍の世界的標準フォーマットであるEPUBへ付与するための活動。一時動詞から名詞へ移行する。つまり活動の成果がそのまま、EPUB新規格へ反映されるのか、と思われていたが(今年になって「EPUB for education」に名称変更された)、そうはならず、EDUPUBは動詞のママでいることになりそうな雲行きとなった。

なぜならIDPFがW3Cと、「EPUB+Web」構想の下に統合へ向かうことになったからだ。 Continue reading

 

IDPFボルドー会議とDigiCon@BEA報告【セミナー備忘録】

■概 要

EPUB 3.1、IDPFとW3Cの統合など、電子出版の国際標準フォーマット「EPUB」についての最新情報。
http://www.jepa.or.jp/sem/20160601/

日時:6 月1日(水) 15:00-17:30

講師
村田 真氏(JEPA CTO)
吉井 順一氏(IDPF理事、講談社/豊国印刷)

1.IDPFボルドー会議報告(村田氏)
~2016年4月6~8日にフランスボルドーで開催された会議とその後の動向について。
・EPUB 3.1の最新動向:HTML構文、Browser-Friendly Format(BFF)
・EPUB Summit(4/7, 8)報告
・EDRLab(Europian Digital Reading Lab.:EPUB制作センター)
・DRM:Lightweight Content Protection など
プレゼン資料:Idpfボルドー会議報告 http://www.slideshare.net/JEPAslide/idpf-62642924
参考:EPUB 3.1 WG及びEPUB Summit出張報告 https://docs.google.com/document/d/10ShoYsb8TE7x_CEBhNmCMcXbRjDQvyuKSjN0KMqcGyg/edit#

2.DigiCon@BEA報告(吉井氏)
2016年5月10、11日にシカゴで開催されたBook Expo America内でIDPFが主催するDigiConコンファレンスについて。
プレゼン資料:Idpfとw3 cの統合案ついて http://www.slideshare.net/eijyo/idpfw3-c
参考:W3CとIDPFが両組織の統合を検討中 https://www.w3.org/2016/05/digpub.html.ja
W3CとIDPFは統合したほうが良いか? http://www.jepa.or.jp/w3c-idpf/


 

安倍首相が消費税率引き上げの先送りを発表した2016年6月1日、東京、飯田橋にある研究社英語センターでは、JEPA CTOである村田真氏から、EDUPUB作業結果のEPUB次回改定への反映が事実上、すべて先送りされたとの報告があった。

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韓国の電子教科書推進は後退したのか? 【セミナー備忘録】(上)

(個人用のメモです。議事録ではありません。記事中の図画はプレゼン公開資料を使用しています))

セミナー概要: 韓国ICT&教育ICT 最新動向
http://kokucheese.com/event/index/336389/

■第1部「韓国ICTと教育ICTの最新動向」 60分
講師:三澤 かおり(みさわ かおり) 氏
一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 主席研究員
主にモバイル・融合サービス分野及び韓国の情報通信政策を中心とした調査研究に従事
■第2部「韓国教育ICT標準化動向」 EDUPUB、Caliperなど 15分
講師:村田 真 氏 (ISO/IEC SC34、JEPA CTO)
■第3部「韓国教育ICT関連企業紹介」 各社15分
1.教育SNSのクラスティング https://ja-jp.classting.com/
日本でも多くの学校で採用事例を持つSNS 講師:李 多喜(Dahee Lee) 氏
2.MDM、セキュリティのテルテン http://www.teruten.co.kr/page/main_j
On-line、Off-lineの教育コンテンツ保護の事例 講師:金 南圭(Namgyu Kim) 氏
3.英語塾チョンダム ラーニング http://jp.loudclass.com/
韓国で大きなシェアを持つラーニング企業 講師:HS Joh 氏

米国のオバマ大統領をして「韓国は驚くべき(デジタル教育)先導国だ」と言わしめ、うらやまれるほどの、韓国における電子教科書施策の推進ぶりだった。

ところがその韓国の電子教科書導入に遅れ、あるいは後退の現象が起きていると言われるようになった。実際のところどうなのか、マルチメディア振興センター 情報通信研究部 主席研究員の三澤かおり氏とJEPA技術主任(CTO)の村田真氏の話を総合するとこういうことになりそうだ。

1.日本側の認識に過剰期待がそもそもあった

2.日本でも起きている、教育内容の再検討がデジタル化スケジュールを遅らせた

3.電子教科書の標準化活動で韓国は引き続きイニシアティブを握っている

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●「アクティブ・ラーニング」とは何か

D:学習・教育のデジタル化と変容する知の体系

●「アクティブ・ラーニング」とは何か 次の学習指導要領で注目-渡辺敦司 http://benesse.jp/blog/20141212/p2.html
アクティブ・ラーニングとは、「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学習者が能動的に学習することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」。

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●電子教科書 vs デジタル教科書

D:学習・教育のデジタル化と変容する知の体系

●新聞トレンド powered by 日経テレコン  キーワード:電子教科書 vs デジタル教科書 http://ntrend.nikkei.co.jp/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E6%95%99%E7%A7%91%E6%9B%B8/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%95%99%E7%A7%91%E6%9B%B8/?termFrom=20100423&termTo=20150421
日本では「電子教科書」より、「デジタル教科書」に目が向いている。
電子教科書 vs デジタル教科書https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/04/電子教科書 vs デジタル教科書-1024x683.jpg 1024w, https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/04/電子教科書 vs デジタル教科書.jpg 1200w" sizes="(max-width: 530px) 100vw, 530px" />

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デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回 【セミナー備忘録】(番外編)

(上中下の三回の記事で書き漏れたことで、おやと思ったり、なるほどと感心したことをランダムにメモっておきます)

これから重要視されるイッシュー

・毎週電話会議で世界の参加者が活発な議論を繰り広げている。
・議論をしていく中で、新たに出て来たイッシューで重要なもの下記3点。 Continue reading

 

デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回 【セミナー備忘録】(中)

3.フェニックスの会議の概要

・実は第三回の2014年6月19日のオスロ会議は、その翌日6月20日の「ISO/IEC JTCI/SC36 Open Forum」と連動して開催された。2014年11月5日に「EPUB3」が、ISO/IECから“Technical Specification”として認定・公開されたのにはこの時の会議の貢献もあったことだろう。その意味では今回もIMSの四半期会議、また「Caliper Analytics & LTI Bootcamp」と隣接してEDUPUB Phoenix 2015も開催された。
・二日目の2月27日には「Implimentation」の単語があったが、会議の実際ではそういう類の発表はなかった模様。
田村1  jepa150311 4https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村1- jepa150311-4-1024x768.jpg 1024w, https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/田村1- jepa150311-4.jpg 2000w" sizes="(max-width: 559px) 100vw, 559px" />

4.拡張機能・仕様の内容と議論の現状

EDUPUB Phoenix 2015 報告 田村 恭久 氏(上智大学、JEPAフェロー)
IDPF、W3Cのデジタル教科書、教材関連標準化動向 村田 真 氏(JEPA CTO)
EDUPUB Profile解説 高瀬 拓史 氏 (イースト) 

(ここから先は、登壇ご講演された三人の方の内容を自分用に統合・整理した記述になっています)

4-1:全体像

・下図「日本語表記」の部分は、お三人の資料を材料にわたしのような素人にもわかりやすい、という基準で考案してみたものなので、専門家がいるところでこの表記を使うとかえって誤解を生むかもしれないのでご注意。専門家がではどういう表記をしているかは、それぞれの資料にあたってください。

EDUPUB Phoenix 2015 報告 http://www.slideshare.net/JEPAslide/20150311-tamura
IDPF、W3Cのデジタル教科書、教材関連標準化動向 http://www.slideshare.net/JEPAslide/20150311-murata
EDUPUB Profile解説 http://www.slideshare.net/lost_and_found/on-edupub-profile

EDUPUB全体像 150318https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/EDUPUB全体像 150318.jpg 705w" sizes="(max-width: 549px) 100vw, 549px" />

画像URLはこちら

4-2:EDUPUB Profiie/EPUBの教育用プロファイル

・(上)編の冒頭、「EDUPUBとは」で述べたように、EDUPUBはEPUBを教育目的、教育現場で使うために、機能拡張をしようとしている。何を付け加えようとしているか、その「差分」がどいういう内容なのかを記述するのが、EDUPUB Profiie。だからこれをきちんと読むとEDUPUBで、3つの機関が議論している項目の全体像を把握できる。
・具合のいいことに、登壇者お三人のうち、EDUPUB Profiieをご担当いただいた高瀬氏は、プレゼンの相手が私のような初級者であることを想定して準備をしてくれている。資料は丁寧に作られていて、読むだけでも大体わかる。それで、このブログで詳細は省く。下記URLの資料に目を通してみて欲しい。

EDUPUB Profile解説 http://www.slideshare.net/lost_and_found/on-edupub-profile

EDUPUB Profile解説 高瀬 jepa150311 1https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/03/EDUPUB-Profile解説 高瀬 jepa150311-1-1024x768.jpg 1024w" sizes="(max-width: 300px) 100vw, 300px" />

・ちなみに、田村氏は中級者向け、村田氏は上級者を想定しておられると想像される。

(世界の議論ではあたりまえだが、意外と日本で知られていない、そういう部分を若干拾うとこんな感じ)

・文書モデルとして日本で良く知られている2種類が想定されている。リフロー型とフィックス型。しかし教育目的である以上、「アクセシビリティ」への配慮は欠かせない。固定レイアウトであっても、画像ベースの固定レイアウトでは、「別途アクセシブルなレンディションを含むこと」が義務付けられている。
・また三番目の文書モデルとして「複数レンディション」がEPUB Multiple-Rendition Publications 1.0 に定義されている。一つのEPUBにリフロー、フィックス両方の本の形を格納してもよい。

・また教育目的である以上、「はい、みなさん、今日は教科書の60頁からです」と先生がいったとき、そこが開けないといけない。ページネ―ションがリフローにないという誤解があるが、教室でちゃんと使えるよう、EPUBにはページをふる機能がある。

・その電子書籍が、生徒用教科書か、教師用教科書か、教師用指導書かの区別がわかるうように、書誌情報が整備されている。また対象年齢、何歳用かも記述できる。

 

4-3:Open Anotation in EPUB/註釈

・アノテーションについては、過去にも書いたので、ここではくどくど繰り返さない。「注釈」という日本語から連想される範囲をはるかに超えた構想が議論されている点だけは押さえておくべきだろう。その結果、教科書とノートを広げて、先生の前ににみんなが集まって、という「教室の風景」が大きく変わる可能性を秘めた項目だ。

●「読書」を変える、EDUPUB・オープンアノテーション https://societyzero.wordpress.com/2014/09/04/00-82/

・4-1の「全体像図」を見ると、この項目のみ、IDPFとW3C、ふたつの機関の名前がある。もともとW3CでEDUPUBが始まる前から議論をしてきたという経緯があるから。W3Cでこれまで、InterestGで議論されていたのだが、今般EDUPUBの活動と前後して正式なWGが発足した。議論のグレードが上がるという意味では喜ばしいことだが、その性でスピードが落ちる懸念も出てきている。

 

4-4:WidgetあるいはScriptable Components/ウィジェットあるいは対話的コンテンツ

・スマホなどで使われる「ウィジェット」は、電卓、時計、株価情報など、小規模なアクセサリーソフト・コンテンツ(ウィジェットアプリ)のこと。EDUPUBで、つまり教育目的で議論されているのはデータをやり取りして(=対話的)作動する部品。たとえばチャートが作成されたり、グラフができたりするといった類のもの。

・Widgetは「HTMLとCSS、そしてJavascript」で記述されるコンテンツ(あるいは「部品」)。EPUB3では、Javascriptの使用を推奨はしていなかった。
•しかしEDUPUBでは、対象が教育用コンテンツなのでJavascriptを使うしかないことから積極的に標準化している。
・ふたつのやりかた、すなわちそのコンテンツ(部品)をパッケージ化し、必要があるたびに呼び出す方法、それとEPUBの中に埋め込んでしまうやり方が準備されている。

・連携したり、組み込まれたりするために、お互いがお互いを認識するためのファイル構造、メタデータをどうするか、などが議論されている。同様に、通信機構の工夫についても。

 

4-5:Distributable Objects/流通する(分解/再統合/変換される)素材

・仁徳天皇を祭った古墳の写真や説明文を使いまわしたい、といったニーズに応えるための項目。大学でも最近、自分の目の前にいる学生のレベルにあった、また自分の教授法にあった教材をつくるため、先生方はたくさんの教科書の中から、パーツを切り出してひとつのパワーポイントにまとめる例が増えてきている。そういうニーズを汲み上げることができるのがこの項目。教科書を作る出版社は製本されたものを販売すると同時に、あるいは電子教科書を販売すると同時に、その教科書の「部分」を、教材制作用「素材」として販売できるようになるかもしれない。

・さらに、「革命的な仕掛け(田村先生)」がこの項目で議論されている。せっかく教科書内容のアンバンドルと、リ・バンドルする仕組みを構想するのなら、電子教科書の「パッケージ」概念を脱構築して、ブラウザで見れるようにしてはどうか、という発想。
・これまでは電子書籍にしろアプリにしろ、ダウンロードし、手元のクライアント(端末)に格納し活用していた。それをやめてブラウザから閲覧できるようにしようというのだ。著作権の問題、ビジネスモデルなどを再検討することになるであろうアイデア。

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◇関連クリップ
EPUB-WEB ― 本とウェブとの境目をゼロにするビジョン - 電書ちゃんねる http://densho.hatenablog.com/entry/intro-to-epub-web
パッケージとしての文書、デジタル化で折角ポータブル(どこでも、いつでも読める)にしたのなら、もう一歩進めて、ブラウザで読めるようにしては、という発想が、ゆっくり具体化されていく、確かな里程標となる動き。 

 

デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回 【セミナー備忘録】(上)



(個人用のメモです。議事録ではありません。記事中の図画はプレゼン公開資料を使用しています。また自分用にまとめている関係で、登壇順というより、内容をシャッフル、統合しています。そしてその際ひとつひとつにどの講演者の発言であったかの注記はしていません。)

JEPAセミナー:デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回

http://www.jepa.or.jp/sem

■概要
・ご挨拶 吉井 順一 氏 (IDPF理事)
・ICT CONNECT21のご紹介 稲葉 雅昭 氏(ICT CONNECT21事務局長)
・EDUPUB Phoenix 2015 報告 田村 恭久 氏(上智大学、JEPAフェロー)
・IDPF、W3Cのデジタル教科書、教材関連標準化動向 村田 真 氏(JEPA CTO)
・EDUPUB Profile解説 高瀬 拓史 氏 (イースト)

■講演詳細
日時:2015年3月11日(水) 15:00-17:30
会場:飯田橋:研究社英語センター 地図
主催:日本電子出版協会(JEPA) Continue reading

 

EDUPUBの位置づけ

デジタル化

デジタル化は知の生成と流通に大きな変化をもたらしている。つまりデジタル化で空間軸から時間軸への、知識循環の再編成が生じている。

知識循環、知識の再生産プロセスは500年前の、活版印刷の西洋における普及を通じて確立された、リアル世界の<生産→流通→消費>の空間軸での組織化をベースにした仕組みから、ネット空間に登場したGoogleの検索窓、日々の検索行動が日常化したことを通じて一般化した、<蓄積→検索→再利用>の時間軸による組織化をベースにした仕組みへと転換しつつある。

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