●「有料」エリアと「無料」エリアをどう結び付けるか コンテンツ・ビジネスの肝

クローズの「有料」エリアと、オープンの「無料」エリアをどう橋渡しするか。デジタル化時代のコンテンツ・ビジネスの知恵の出しどころ。ただ大方のコンテンツ関連企業の対応は鈍い。その中で少数ながら新聞、雑誌、書籍、それぞれの特性を生かした様々な取り組みが続いているのは心強い。紙版と電子版が共存しながら、コンテンツ(作品)のユーザーによる発見とそこから産まれるエコシステムの維持に、寄与する道が発見されなければならない。

注目すべきは、W3Cでクローズとオープンの橋渡しのアイデアが熱心に検討されていることだろう。

両者の接点にあるのが、HTML/CSSの技術群だ。


 

●出版社公式ページのSNS対応状況を調べてみた | 電書魂 http://densyodamasii.com/?p=3527
「「有料」エリアと「無料」エリアをどう結び付けるか」がこの時代の企業の命運を分ける着眼点だと気づいている、出版社はまだまだ少ない。SNS対応状況をみてもそれがわかる。
たとえば、大手出版社でさえ、書影の表示されない設定になっているサイトが多数。ソーシャルシェアのボタンがないケースも。

 

●有料購読者 3.6万人を魅了する、シアトル・タイムズの手腕:メルマガ・コメント機能が肝 | DIGIDAY[日本版] https://digiday.jp/publishers/seattle-times-attracted-36000-digital-subscribers/
シアトル・タイムズ(The Seattle Times)は、地方紙としては珍しく、3万6000人のデジタル有料購読者を獲得している。

重要なのは仮説を立て実験をし、データを取得すること。何が、またどこで、「無料から有料へジャンプする」ポイントなのかを見極めるために。

ニュースレターがその大事な実験場。18万3000人の購読者数を抱えるニュースレター(メールマガジン)は、「ニュース、レシピ、飲食店情報など複数の分野にわたっており、同紙が提供している製品の案内役を果たしている。(略)(すなわち)魅力的な記事を読者に紹介し、彼らが何度もペイウォール(「無料から有料へジャンプする」ポイント)にぶつかるように」しているのだ。

 

●「サブスクリプションは、より狭く深い報道を可能にする」:Business InsiderのCCO、ニコラス・カールソン氏 | DIGIDAY[日本版] https://digiday.jp/publishers/insider-inc-nicholas-carlson-subscriptions-restore-commercial-incentivize-report/
デジタル技術を駆使した調査報道の草分け的存在。調査報道故、有料講読でも人があつまる。他方公開記事もあり、それはメジャな他メディアサイトで引用されるほどに、評価を高め、クローズとオープンが相乗効果をあげている。

「Silicon Alley Insider」からスタートした後、大企業のインサイダー的記事の提供へ、さらに現在ではジャンルをビジネスものから急速に他ジャンルへ拡張させている。
ビジネス・モデルの運営方針:『Smart(スマートな)』『Conversational(会話体の)』『Helpful(ためになる)』『Accurate(正確な)』『Fair(公平な)』『Fast(速い)』『Fearless(大胆な)』『Fun(楽しい)』。

 

●広告もステマもなし 出版不況でも売れる雑誌の作り方 NIKKEI STYLE https://style.nikkei.com/article/DGXMZO35302550T10C18A9000000
日本版調査報道、商品テスト。
日本では「暮らしの手帖」が、1954年(昭和29年)から「商品テスト」の記事企画で雑誌の爆発的な支持を取り付けた(この商品テストは、高度成長期の日本の工業製品の品質改善のきっかけともなった)。ただこの名物企画は人手とコストが掛かることを理由に2007年に幕を閉じた。

同じこのアイデアで生き残りを果たしているのが、女性誌「LDK」(晋遊舎)。「一番汚れが落ちる洗剤、最も効く虫よけ、落ちない口紅。身の回りにある日用品を比較し、その効果や使用感を紹介する」ことで部数を伸ばし、「2013年の創刊時に7万部だった発行部数は、いまや月20万部を超え、出版不況が続く中で特異な存在」
コスト増はテスト記事の信頼性の向上を裏付けにした部数の伸びでカバー。そのため出版社内にラボ設置も。

「これまでメーカーの広告、宣伝材料であり続けてきた雑誌は、今のような情報がタダで入ってくる時代には必要ない。我々のような独自の情報は、ウェブか紙か、という考え方にはならない。今は紙媒体で月刊誌だけど、やはり増えているのは電子書籍。LDKの情報をウェブサイト向けに再編集して公開している。」

 

●DMM PUBLISHING(パブリッシング)- DMMの書籍出版レーベル https://publishing.dmm.com/
学術書は、アカデミック・コミュニティの中で、読む人が書く人であり、書く人が読む人である、といったエコシステムをすでに持っている。その分、出版不況の中で初版部数を絞りながら、なお粘り強く出版活動を続けているジャンル。

DMMが今回発案したこともこれに似ている。2017年にWEB上に月額会員制のサロンが作れるサービ「Webソロン」を開設。現在、「橋下徹の激辛政治経済塾」「猪瀬直樹の『近現代を読む』」をはじめ、多くの作家、実業家、アスリート、モデル、テレビタレント、アルファブロガー等が利用。

多様な専門家がオーナーとなって運営されているコミュニティがまずあって、その中から生まれてくるコンテンツを書籍という形にすることで、より多くの人にアクセス可能にする。コミュニティ内のコンテンツを書籍化するために生まれた出版レーベルが「DMM PUBLISHING」。

 

●W3C と IDPF との組織統合 | ちえのたね|詩想舎 https://society-zero.com/chienotane/archives/4306
HTMLが(書籍を含む)すべてのコンテンツのコーディング言語になることで、コンテンツの永続性が確保されるようになる。

これが実現すると、「コンテンツ間の相互運用性」が実現、コンテンツの透過性に道が開かれることになるし、「孤立した読書体験」から、「読書体験のネットワーク化(接続性)」が生まれるだろう。
そして出版社は、本がどのように読まれ、共有されたかを知る手段を持たなければならない。なにしろ「We should live in a world of linked data」なのだから。

 

●私のゴールは世界中の言語でCSSを使えるようにすること EPUB3で縦書きを実現した、fantasai(エリカ・エテマッド)に聞く https://www.aplab.jp/fantasai
「つまり、EPUB 3が縦組みを規定できたのは、そこで引用された種々のCSSがあったからこそなのだ。そして、それらのCSSをまとめるのに大きな貢献をしたのがfantasaiだ。彼女は2010年9月にはるばるアメリカから来日し、日本人エンジニア達を巻き込んだ一種の「合宿」のなかで、集中的に前述のCSSを仕上げていった。

中国には「飲水思源」(水を飲んだら井戸を掘った人を思い出しなさい)ということわざがある。私たち日本の電子書籍ユーザーにとって、彼女こそが「井戸を掘った人」ではないか。」

 

●Webブラウザで本を作ろう【CSSで組版 第1回】 | ソフト道場のがっつり試し食い! | 情報畑でつかまえて https://www.ntt-tx.co.jp/column/dojo_review_blog/20180710/
Webを動かしているのはHTML/CSSの技術群。これのら技術を使って「本」が作れるなら、つまりHTML/CSSで組版ができるなら、もはや紙版も電子版も同じ作業ラインで同時に作れてしまう。

 

●電子書籍、電子出版のCAS-UBブログ | みんなで作れる電子書籍、電子出版のCAS-UBのブログです http://blog.cas-ub.com/
「CSS は,ブラウザ,エディタ,その他のWebアプリケーションで広く使用されています.CSSは,Webデザインのためだけではなく,広範な印刷アプリケーションやPDFとして配布される電子的なページ組版のスタイルシートとしても使えます.」

(20170707 cas ub https://www.slideshare.net/tokushigekobayashi/20170707-cas-ub)

 

●Vivliostyle の新しい始まり | Vivliostyle Foundation https://vivliostyle.org/ja/blog/2018/03/26/a-new-beginning/
「Vivliostyleは、Webと印刷の世界のギャップを埋めることを実現する目的をもって、スタートアップ会社として誕生しました。そのため、標準技術をオープンソースで実装しながら、様々なプロジェクトの活動をしてきました。」 そのVivliostyleが企業としては事実上の解散、そして転身、転進。

「紙版も電子版も同じ作業ラインで」をビジネスの種とするのは難しい、ということか。
W3Cといった非営利団体の持ち場?
(Vivliostyle Inc. - 大量のデータから美しい印刷物を作るためのツール https://vivliostyle.com/ja/

 

 

┃Others あるいは雑事・雑学
●読書の秋、SFの秋? 電子書籍でSFを読もう! 300点以上のタイトルが最大半額、「海外SFセール」開催中!|Hayakawa Books & Magazines(βhttps://www.hayakawabooks.com/n/n3b549434cf3f

●ブログを作ったら必ず設定すべきSEOの19のチェックリスト | ブログ集客実践の書 https://arata01.info/blog-seo-basic-10488

●CSS Values and Units Module Level 3 日本語訳 https://momdo.github.io/css3-values/

●全文XML 作成手順書 - J-Stage - 科学技術振興機構 https://www.jstage.jst.go.jp/static/files/ja/zenbun-xml-manual.pdf

●本を読む力を磨き、楽しみ方を広げる【Life with Reading 創造的読書のパターン・ランゲージオンラインレクチャー公開!】 http://creativeshift.co.jp/news/1500/
慶應義塾大学 井庭崇研究室×有隣堂の共同制作、「Life with Reading 創造的読書のパターン・ランゲージ」のオンラインレクチャーを公開。

●グーグルは「URLがない世界」をつくろうとしている|WIRED.jp https://wired.jp/2018/09/09/google-wants-to-kill-the-url/
URLは「Uniform Resource Locator(統一資源位置指定子)」の略称。「DNS(携帯電話のアドレス帳のようなものだ)に従って、ブラウザーを正しいIPアドレスに導く役割を果たす(ちなみにIPアドレスとは、インターネット上でサーヴァーを特定するためのものだ)。」

●GoogleやFacebookなどの巨大な管理者なしで個人同士がつながりを作り出す新しいウェブの世界「Dweb」とは? - GIGAZINE https://gigazine.net/news/20180910-dweb/