第3回 自由の衰退:フリーダムハウスが鳴らす警鐘

◎資本主義はなぜ民主主義を捨てるのか――権威主義への静かな変異◎

国際的な非営利団体Freedom Houseが毎年公表する報告書「Freedom in the World」は、現代民主主義の「体温計」とも言える指標である。しかし、最新のデータが示すのは、世界が深刻な「民主主義の低体温症」に陥っているという冷徹な事実だ。特に、かつて自由世界の旗手であった米国のスコア低下は、世界の権威主義化を加速させる象徴的な事象となっている。

フリーダムハウスの2025年報告書(「The Mounting Damage of Flawed Elections and Armed Conflict」)によれば、世界の自由度は18年連続で低下した。同報告書内で米国は、過去10年間でスコアが最も低下した国の一つとして数えられている。かつて90点台を誇っていた米国のスコアは、2025年版では84点まで下落した。

フリーダムハウスのマイケル・アブラモウィッツ会長(当時)は、2021年の報告書発表に際し、「米国の民主主義の衰退は、権威主義的国家に対して『民主主義は欠陥のあるシステムだ』という格好の宣伝材料を与えてしまっている」と警鐘を鳴らした。法の支配という普遍的な規範を、自国が自ら踏みにじることで、グローバルな規範そのものが空洞化しているのである。

大澤真幸氏が論じる「資本主義の脆弱性(第四回)」は、この米国のスコア低下という形でも可視化されている。資本の論理が制度を凌駕し、短期的な政治的利益が長期的な民主主義の安定を掘り崩していく。もはや自由は、守られるべき前提ではなく、市場の荒波の中で摩耗し続ける消耗品へと変質したのである。

・Freedom Houseの「自由度」とGDPを紐付けた 世界の自由度推移

自由の守護者か、秩序の破壊者か、変貌する米国 ~Freedom in the World 2025公表、米国の「力の支配」を憂う

■目次構成

はじめに_資本主義はなぜ民主主義を捨てるのか
第1回 双子の離別:資本主義が自由を捨てるとき
第2回 星条旗の亀裂:トランプが仕掛ける政治革命
第3回 自由の衰退:フリーダムハウスが鳴らす警鐘
第4回 資本主義の脆弱性(=権威主義への転換しやすさ)」の正体
第5回 民主主義の死に方:合法的に殺されるシステム
第6回 2025年の悪夢:民主主義のハッキング
第7回 ベネズエラの激震:2026年1月、侵攻の真実
おわりに_資本主義はなぜ民主主義を捨てるのか