●AIは不平等を加速させる? イノベーションか制度設計か

かくもIT、デジタル化の力は凄まじい。
5千万ユーザーを獲得するまでにかかった時間

飛行機      68年
車        62年
電話       50年
電気       46年
クレジットカード 28年
テレビ      22年
ATM       18年
コンピュータ   14年
携帯電話     12年
インターネット  7年
iPod        4年
YouTube     4年
Facebook      3年
Twitter       2年
Pokemon Go    19日
(How long does it take Steemit to hit 50.000.000 USERS 🙂 — Steemit https://steemit.com/steemit/@johnnywingston/how-long-does-it-take-steemit-to-hit-50-000-000-users--1502430927-1670258

ではそのデジタル化の力を何に向けて使うべきか。その問いに答えるのは誰なのだろう。経済成長と社会の発展との調和に向けた知の構築(哲学)が求められている。不平等・格差是正なくして資本主義の未来はないのだから。

 


●RIETI - 第79回「情報通信分野の投資による経済格差の発生・拡大」 https://www.rieti.go.jp/users/iwamoto-koichi/serial/079.html
「AIは不平等を加速させる」=バンクオブアメリカ・メリルリンチのレポート(2016年)
「自動化は所得格差を拡大する」=米国経済白書(2016)
「格差に対する影響が最も強いのは技術革新」=通商白書2017(2017)

だから、情報格差から惹起される所得格差に対し、労働・教育行政による是正策が必要である。しかし各国のこのイッシューに対する対応は異なっている。
「アメリカは、再配分機能が弱く、かつ格差が時間的に拡大している。再配分機能は他のOECD諸国と比べて弱いことがわかる。」
「ドイツは、再配分前は大きな格差があるが、再配分が良好に機能し、格差が縮まっているものの、時系列的にみれば、格差の拡大は進行している。」
「日本は、時間的に格差はほとんど変化しないものの、再配分が良好に機能せず、格差が社会に残っている。」

●世代間や所得から見るデジタル・ディバイド 大和総研グループ | 菅原 佑香 https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/economics/disparity/20170508_011959.html
「IT 化の進展は、IT を使って仕事をする労働者にとって必要なスキルの高度化を招き、低スキルと高スキルの労働者間の格差を助長する」という指摘もあります。IT技術の進展によって、働く人々の間で格差が拡大する可能性があることは、日本だけでなく世界的な課題と言えるでしょう。」

●人類文明と人工知能 近代の成熟と新文明の出現  NILA 総合研究開発機構 http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n171225_878.html
「「超国家化」、「超産業化」、そして「情報化」が出現する近代化の成熟局面において、われわれは、情報化が間接的に引き起こす、国民としてのアイデンティティや勤労の価値の消滅の危険という挑戦に適切に対処することが求められる。」

「人工知能の開発を通じた人間の理性の拡大は、16世紀西欧の啓蒙に始まる近代化の最終的な達成を予期させるものである。ハーバーマスなどコスモポリタン自由主義者の主張によれば、このような近代化の達成はカントが意味する世界公民的な連帯による国民国家の統合をもたらすが、その時期は依然として不明である。」

●人工知能を制作してわかった「人間の条件」(三宅 陽一郎) | 講談社(1/4) https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56739
「我々は身体によって環境に住み着いている(メルロ=ポンティ)」。ここで我々というのは植物、動物、細菌まで含めてすべての生物という意味。

「人工知能を作ることは、普段、人間が立脚している世界の足元について問い直す哲学的契機を与えます。われわれが何者で、どこへ行くのか、その哲学的探求によって開拓された土壌が、そのまま人工知能のよって立つ土壌となるのです。」
「西洋哲学は、「考える存在」としての自我と、記号操作によって思考を表現するビジョンを提供しました。前者はデカルトが、後者はライプニッツが用意しました。
一方、東洋哲学では、世界についての判断をする前に知能は世界とまじりあっており、その混じり合いから次第に世界についての判断を加えて解釈していくのです。これは西洋にはない発想です。」

「私の仕事は、論理と情報の狭い隘路に陥った人工知能を、より広い精神活動を展開する主体へと導くことです。
そのためには、物質的存在としての知能と、精神的な存在としての知能、両者を高い次元で結びつける哲学が必要とされます。」

●いま、哲学は面白い——近代哲学者の志に学び、新たな地平を切り拓け(竹田 青嗣) 講談社 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57194
今の資本主義の進み行きは、もし何もすることができなければ、おそらく40年、50年後には恐ろしくひどいことになる。
格差、資源、環境の問題を解決できずに進むと、いちばんよくないのは、世界に絶望がたまり、パイの分配をめぐって核使用を含む世界戦争にまで進むこと。その先にはもう一度、絶対専制支配のディストピアが戻ってくるかもしれない。」

「人間の社会は、大きく言って「政治」と「経済」と「文化」という3つのシステム、あるいは3つの「ゲーム」から成り立っています。
近代哲学は、近代になって「自由な存在」としての人間という可能性が現われたとき、その原理を徹底的に考えぬきました。そしてこの原理の上に、人間の歴史上はじめて、市民社会と市民国家という「自由な社会」が登場した。

しかし、今とくに重要なのは、世界規模の経済ゲームの原理です。当初は自然発生的なゲームにすぎなかった資本主義が制約なく膨張した結果、今ではあらゆる局面で解けない矛盾を作り出してしまっている。
もう政治ゲームの哲学原理だけでは先に進めない。でも今のところ、哲学としての経済学を誰も考えていない。」

●経済成長と社会の発展との調和が焦点となる世界経済:「包摂的成長」に注目が集まる背景 | 森原康仁 http://www.world-economic-review.jp/impact/article1041.html
「構造的不平等や所得格差は教育,保険,雇用,エンパワメントに格差をもたらし成長率を低下させる。また,所得格差は法・権力の格差につながり貧困に帰結する。さらに,成長メカニズムにも否定的影響を与える」。
だから「再分配なくして成長なし」、包摂的成長の重要性が近時強調されている。つまり「所得格差が小さく再分配の水準が一定であれば経済成長率は高くなり,再分配が強化されたからといって成長に否定的影響をおよぼすことはない」のだ。

●RIETI - 資本主義の未来 不平等・格差是正が大前提 https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/yoshikawa-hiroshi/02.html
「資本主義が20世紀を経て今日まで機能してきたのは、政府が所得分配について修正を加えてきたからだ。」

・1895(明治28)年から2014(平成26)年までの成長率(前後2年を含む5年移動平均)とジニ係数

「所得の不平等・格差の拡大・縮小を「技術の変化」だけで説明することはできない。(略)戦後一気に平等化が進む要因となった財閥解体、農地改革、預金封鎖やハイパーインフレは国による制度改革であり、技術の変化ではない。これにより戦前の富裕層は没落し平等化が進んだ。」

 

 

┃Others あるいは雑事・雑学
●DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
http://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-2.pdf
「データ量が爆発的に増大していく中で、データを最大限活用すべく、デジタル技術を駆使してビジネスを迅速に展開できるか、すなわち、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実行できるかが、あらゆる産業において、各企業の競争力ひいては存続の可否を決する最重要課題の一つとなっており、我が国全体の成長力を維持・強化していく上で不可欠である。」

●「2025年の崖」で12兆円の経済損失、経済産業省がDXの報告書 | 日経 xTECH(クロステック) https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/02581/
2025年の崖:「複雑化・ブラックボックス化した既存システムの温存が続くと、高度なデータ活用といったデジタルトランスフォーメーションが進展しづらい。
デジタルトランスフォーメーションが進まないことで企業は事業機会を失い、2025年~2030年の間で最大12兆円の経済的損失が発生し得る」。

●杭州市から渋滞が消えた!人工知能が交通信号を制御する  中華IT最新事情 http://tamakino.hatenablog.com/entry/2018/08/03/080000

●ジョージアがAIで観光客の感動に基づく正確なガイドブック作成(共同通信PRワイヤー) - 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20180809/pls/00m/020/502000c
「自分の基本的なFacebookの情報にウェブサイトのアクセスを許可したり、簡潔な質問に答えたりするだけで、ウェブサイトが自分の興味の対象を分析するだけでなく、投稿作成者との類似点を見つけて興味の対象を一致させ、自分にとって最も関連性の高いガイドブックを生み出す」