感染症法33条とは


(追記:2021年1月9日)

「宣言」があってなお、TV画面の一部を使って危機管理情報をテロップで流す、3.11の時のような対応をしているのはNHKだけ。そもそもTVを見る人が減っている。この状況で、「危機感」を伝え行動変容を具体化するには、もはや感染症法33条が最後の手段。

★33条発動で期待される効能★
(たとえ日曜日一日だったとしても)

1.行動変容を促す強力なメッセージとなりうる
2.TV・新聞を読まない人との「危機感」共有が可能
3.人流、人と人との接触時間の物理的な削減


 

◎自衛隊に看護師派遣要請するのはもはや「緊急事態宣言」段階でないだろうか。大阪市、札幌市は医療崩壊を食い止められるか。(2020年12月9日北海道へ、14日大阪府へ自衛隊は看護師を派遣。そして2021年1月2日首都圏知事ら緊急事態宣言要請
ロックダウンが不可能な日本での最後の切り札が感染症法33条かもしれない。

移動制限は日本で可能か

2020年の3月、東京都知事が「ロックダウン」の単語を口頭で使った際、日本でも西欧諸国のような「移動制限」の強制が法令で可能かが議論になった。答えは「否」で「要請」しかできない。

ただしこの「否」には例外がある。3月11日の衆議院内閣委員会で西村康稔担当相はイタリア北部で実施されていたような「移動制限」は、感染症法を適用することで可能になると述べ、それには法改正が必要だがと留保をつけた。そしてそのほぼ2週間後、政府は政令改正により留保部分を取っ払った。「移動制限」の実現を可能にしたのだ(3月26日、27日施行)。

感染症法33条の「交通の制限又は遮断」を新型コロナ感染症に適応可能としたのがそれだ。

「交通の制限又は遮断」とは以下の内容で西欧諸国と異なり、「72時間以内」という制約はあるが、「移動制限」を可能にする条項。77条に罰則規定もある。

交通の制限又は遮断
第33条 都道府県知事は、1類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であつて、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、72時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。
(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 http://www12.plala.or.jp/taacohya/Houki/KOSEIRODOU/Kansenshoho/KansenshoYoboho_frame.htm
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 | e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410AC0000000114

同調圧力による行動変容

4月の緊急事態宣言時や夏以降の「GOTOキャンペーン」時の日本人の行動様式の変化具合を見ると、世情言われる「同調圧力」でのセンチメントの変化が、感染症対応上の「行動変容」に結び付くことが確認されている。強い言葉で日本人は動き出す。感染抑止と経済活動活発化の両方の軸で効果的なのが確認済みだ。

「72時間」という制限があるものの、感染蔓延抑止へ向けた「行動変容」を引き起こすアナウンス効果は十二分にあるだろう

この行動変容で感染者数の爆発的増加を抑止し、医療崩壊を最小限に食い止めることが、札幌市、大阪市で具体化できるかもしれない。

 

(追記:2021年1月3日)(緊急事態宣言要請、仕掛けた小池知事 首相は難しい判断 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASP126W7XP12UTIL017.html

「人流の抑制」によるセンチメント変更効果

年が明け2021年1月2日、東京都都知事はじめ首都圏4名の知事が急きょ西村経済再生担当大臣と面談、政府に対し緊急事態宣言の発表を速やかに検討するよう要請した。小池都知事は会談後、記者団に対し「1都3県の陽性者の状況、医療体制の現状から、ここで直ちに人流の抑制の徹底が必要」と、事態の深刻さと迅速果断な政府対応の必要性をうったえた。

「隔離」と「移動制限」は感染症対策の基本中の基本。他方「隔離」には感染者の発見が前提でありPCR検査の強化が欠かせない。「移動制限」には中国のような独裁強権発動か欧米のようなロックダウン具体化の法整備か、が必要。

その両方を持たない日本はセンチメント変更による行動変容でしか「移動制限」を実現できない。緊急事態宣言発出による効果を疑問視する報道もあるが、仮にそれに伴い「感染症法33条」の発動があればどうだろう。

眼前に、動かない鉄道があり実際三日間にしろ「人流の抑制」がかなうなら、センチメント変更効果として十分ではないだろうか。

ちなみに「隔離」と「移動制限」が感染症対策の基本中の基本であることは、千年以上前の人類にも知られていた知識。沙漠の商人たちはネットワーク社会を生き市場経済を満喫していた。そのネットワークに疫病蔓延のリスクがあること、そしてその対処法が「隔離」と「移動制限」であることも知っていたのだ。

たとえば7世紀に登場したムハンマドの言行を記した「コーラン(クルアーン)」にすでにその記述がある(ネットワーク社会の弱み:高い流動性と疫病 https://society-zero.com/icard/271370 )。菅政権にも千年前の知識を踏まえた対処を期待したい。指数関数的増加、いわゆる感染爆発段階には異形の対策で応じざるを得ないのだから。

 


・ネットワーク外部性 | iCardbook|知の旅人に https://society-zero.com/icard/647372
・ネットワーク社会の強み:ネットワ-ク外部性 | iCardbook|知の旅人に https://society-zero.com/icard/394296


 


●感染症が発生した場合、国や都道府県はどう行動したらよいのか | ちえのたね|詩想舎 https://society-zero.com/chienotane/archives/8467

●国と東京都が「宣言」でもめた 今後どうなるのか 新型コロナ | ちえのたね|詩想舎 https://society-zero.com/chienotane/archives/8485

●緊急事態宣言の最新状況|新型コロナ|NHK https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/emergency/

●東京は本当に「ロックダウン」されるのか? 安倍首相「強制的、罰則を伴うものではない」 https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/tokyo-lockdown

●官報(新型コロナ感染症への適用)
https://www.mhlw.go.jp/content/000613829.pdf