データの更新情報は下記URLに掲載しています。
https://note.com/shisousha/m/m3cb08d189e0d
コロナにどのように対応すべきかなのか、7月2日以降百人越えの新規感染者数が出た東京は、新しい局面にはいった。
感染症は他の病気、疾病と異なり、個人の罹患防止/治療(個人防衛)以外に、集団の罹患防止(集団防衛)の要素が加わり、私たちはまだその対応になれていない。新規感染者数で百人越えが続くことをどうとらえ、理解したらよいのか。戸惑っている。
集団の罹患防止(集団防衛)の要素に対しては、データとサイエンスで対応すべきだが、新規感染者数だけでは足りない。公表されている数値のうち、以下の5つの数値が要フォローだ。
◎感染状況を判断する
1.現在感染者数(の推移)
2.重症者数(の推移)◎医療体制を判断する
3.専用(対策)病床の稼働状況
4.軽症者用の宿泊等施設運用状況
新規感染者数の推移
そもそも新規感染者数の推移から、私たちは何を認識すべきなのか。それは感染が「指数関数的な増加」のフェーズにはいっていないか。いわゆる「オーバーシュート」の入口にいないかを判定するうえでこの数値は使用する。「オーバーシュート」の段階にはいってしまっては、医療崩壊が目前にせまってしまう。その手前、入り口の時点で、なんらかの手立てを講じなくてはならない。
たとえば、この3日間は、「ん? 指数関数的へシフトするか?」と思わせました。
6月30日 54人
7月1日 67人
7月2日 107人
しかし次の3日間は「指数関数的」な推移ではありません。
7月2日 107人
7月3日 124人
7月4日 131人
「指数関数的な増加」あるいは「オーバーシュート」とは何かというと、対数表示で蛇が鎌首をもたげたような曲線(下図 チンアナゴ写真参照)のこと。対数表示とは指数関数的動きを直観的に把握してもらうため、視覚的効果を狙った工夫。通常の線形スケールでは絶対値を示すところ、対数スケールでは、相対値を示す。そして感染者数の動きが本来指数関数的に増加するため、その実態に即した表示方法として、よく採用されるのだ。
・オーバーシュートのイメージ(蛇が鎌首をもたげたような曲線)
「チンアナゴ」と「ニシキアナゴ」 – TOKITOMA DESIGN ( トキトマデザイン ) https://tokitoma.jp/?p=133273
(日本の第一波はピークを過ぎている 専門家会議の資料からは | ちえのたね|詩想舎 https://society-zero.com/chienotane/archives/8609 )
現在感染者数(の推移)
集団の「感染」がどういう段階にあるかは、新規発生の数字だけ追いかけていても見えない。この度の新型コロナは、
A:感染者の8割は無症状~軽度の上気道炎症状で終始し、1週間程度で治癒する感染症であるが、
B:2割において重症化が起こり、うち5%の人が死亡する
ということが知られている。
(風邪が三番目の対応法になるかも 新型コロナに対して | ちえのたね|詩想舎 https://society-zero.com/chienotane/archives/8728 )
つまり、感染しても直っていく人がたくさんいる。「新規」の数値だけ追いかけていても「一喜一憂」するばかりで、感染の現状把握ができません。感染の現状把握には「新規」の累計数値から退院した人の累計数値を除く必要がある。
しかも2週間程度の隔離が必要なので、軽症者用の宿泊施設や自宅待機(療養)から日常生活に戻っていく、感染日から2週間の間のストックベースの数値が、医療体制の逼迫度合いを判断するのに重要だ。「新規」はフローベースの数値なので、この点でもミスリードしやすい。
ちなみにペストは致死率が30%~60%。潜伏期間は通常2〜7日。感染後アッという間に重症化し死へ至る。こういう感染症の場合は、フローベースの「新規」を追いかける方法で、感染状況把握にあまり不都合はないだろう。
しかし新型コロナはこれまでの感染症の常識と違う点が多々あるので、感染症の一般論で対応していては、間違った結果、意図せざる方向へ事態を誘導しかねない。
だから、
現在感染者数 = 累計感染者数 - 回復者(退院)数 - 死亡者数
を見ることもあわせ必要になる。
・同上 2020年7月2日現在
616 = 6,623 - 5,582 - 325
・現在感染者数 (7月2日) 616人
重症者数(の推移)
個人防衛(治療)、つまり医療施設と医療従事者の臨床治療が必要な「重症者」の数を、現在感染数と同時に、みていく必要がある。
東京都はこれを公表している。
・旧モニタリング指標(4)重症患者数 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/positive-status-severe-case/
・7月3日までの推移
菅官房長官が「緊急事態宣言を再び出す状況ではない」と判断した際に援用したのがこのデータだった。
(「重症者数減少 緊急事態宣言再び出す状況にない」官房長官 | NHKニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200703/k10012494041000.html )
専用(対策)病床の稼働状況
新型コロナに対して、医療体制の現況を判断するには、
対策病床使用率 = 現在患者数 / 新型コロナ対策病床数
を見る必要がある。
このデータはCOVID-19 Japan - 新型コロナウイルス対策ダッシュボード #StopCOVID19JP https://www.stopcovid19.jp/ が日々データを更新、公開している。
確かに4月下旬、日本の、とりわけ東京と北海道の医療体制は逼迫していた、「医療崩壊」が起き始めていた。
・4月27日時点 47都道府県ごとの「対策病床使用状況」
現在患者数 / 新型コロナ対策病床数(4月27日時点)
東京 2690/2000
大坂 1047/1239
千葉 573/247
埼玉 765/411
北海道 398/290
富山 169/100
しかしあれから2か月強を経過した現在、かなり余裕が見られる。
・7月2日時点の東京の「対策病床使用率」は12.8%。
・7月2日時点 47都道府県ごとの「対策病床使用状況」
ちなみに東京都は6月26日、医療機関に対し、1週間以内に、現在の新型コロナ対応の1000病床をさらに、3000床へ確保できる準備を進めるよう通知を出したが、それがこの数値と関連している。
(2日連続100人超の東京 医療と検査の体制は | NHKニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200703/k10012494741000.html )
軽症者用の宿泊等施設運用状況
これは厚生労働省が一か月に数回、公開している。
・療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00023.html
ちなみに7月1日時点で、東京は、
宿泊施設受入れ可能室数 2,865人
宿泊療養者数 71人
で、十分余裕がある。
市区別人口当たり感染者数
最後に、同じ感染者数でも「人口当たりの感染者数」が地域比較をする際は重要だ。東京の中で世田谷区が感染者数の絶対値では突出している。しかしこれを1万人あたりの感染者数に引き直すと、4.8人(5月13日時点)と突出しているわけでないことがわかる。
・5月13日時点
時系列でこの数値を公開しているのは下記サイト。
・都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/?tab=reference
そして現在はむしろ、「夜の街」でよく表現される新宿区が突出した数値を示す、重感染地域である。
・7月2日時点 縦軸感染者/横軸人口 丸の大きさが人口当たり感染者数=新宿区が大きい
専門家会議の突然の廃止
6月24日、西村康稔経済再生相が、専門会議の廃止を唐突に発表。しかし、専門家会議の尾身茂副座長は、そのことを知らされていなかった。西村大臣の発表とほぼ同時間帯に行われていた、専門家会議メンバーによる記者会見で、「今、大臣がそういう発表をされたんですか?」、と、記者の質問に困惑した表情を尾身氏は見せた。
(尾身副座長も寝耳に水... 専門家会議の後継「分科会」はどうなるのか https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0625/jc_200625_2096342523.html )
感染症対応には、
「どこで感染したのか、そして重症化したのか、あるいは治ったのか、という疫学データをリアルタイムで把握すること」が大切だ。
(専門家会議の尾身茂副座長の6月3日の発言)
専門家会議の突然の廃止の発表の姿勢に、今後さらに政府が、「科学を政治化するのか(クルーズ船感染の告発で話題になった神戸大学の岩田健太郎教授)」といった疑念が消えない。愚直にこれまでFACTを示してくれいていた専門家会議とクラスター班西浦教授と同様のデータを、今後私たちは見ることができなくなるかもしれない。
だからこそ私たちは、自分で5つの数値を、その意味をよく咀嚼したうえで、自身で確認していく姿勢が求められていよう。再度記す。
◎感染状況を判断する
1.現在感染者数(の推移)
2.重症者数(の推移)
◎医療体制を判断する
3.専用(対策)病床の稼働状況
4.軽症者用の宿泊等施設運用状況
◎どこが重感染地域か
5.市区別人口当たり感染者数
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