●中国は18世紀以来の世界観を転換させようとしている。

 

「一帯一路」構想と「自由と民主主義」

「20世紀までの経済活動の代表的な基盤は、安定的な「エネルギー」と「ファイナンス」の供給であった。」これに対し、第四次産業革命が進行中の21世紀の経済基盤には、「インターネット」が追加される

(政府におけるデジタルトランスフォーメーション:『ビジネス2.0』の視点:オルタナティブ・ブログ http://blogs.itmedia.co.jp/business20/2018/01/post_1892.html

このインターネットの登場は資本基盤の入れ替えを要請すると同時、ビジネスモデルそのものの変革を要請する。これが「デジタルトランスフォーメーション」。この「デジタル化」の潮流を梃に旧来型・開発経済の領域でも気を吐いているのが中国。「一帯一路」構想。

長期的構想力と社会体制の多様化にその特徴がある。

日本の「短期指向+ロジスティック発想の欠落」による大敗は、ひとり先の大戦だけではない。デジタル産業化と産業デジタル化(私的領域)に対する姿勢が掛け声頼りであるばかりか、社会インフラの刷新(公的領域)でも「大敗」の影が近づいている。

対する中国の躍動には目を見張るものがあるが、他方それは、社会体制の多様化を旗印に、18世紀以来の「自由」「民主主義」そのものにも変容を迫っている可能性がある。


■知恵クリップ

 

●無謀な太平洋戦争…開戦時、「日米経済格差」はこんなに拡がっていた(加谷 珪一) https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57013
「日中戦争を含む太平洋戦争の名目上の戦費総額(一般会計と特別会計)は約7600億円だが、これは日中戦争開戦時のGDP(厳密にはGNP)と比較すると約33倍、当時の国家予算(一般会計)に対する比率では280倍という、天文学的数字である。」
ロジスティック、兵站、戦線を維持するための長期的な保守・管理(その資金的手当て)の発想が抜け落ちていた。あるいは意識はあったのだが、短期決戦で勝てると思った慢心。

●「何とかなるさ」という幻想 https://www.rieti.go.jp/…/contribution/sato-motohiro/11.html
長期的な保守・管理(その資金的手当て)の発想が抜け落ちているのは、先の開戦時も今も一緒。
「身近なところでは、上下水道の更新・管理などのコストが増大し、事業の収支が赤字になっても、多くの自治体は料金を上げることなく、一般会計から赤字分を補填してきた。同様に医療費が高くなっても、一般会計からの繰り入れで国民健康保険の保険料の引き上げを避けてきた。いずれも、住民の負担が増えないよう「何とかしてきた」のだろうが、上下水道施設の老朽化や医療費の増加にもかかわらず、「何とかなる」という印象を住民に与えてきたといえる。」

●デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討:『ビジネス2.0』の視点:オルタナティブ・ブログ http://blogs.itmedia.co.jp/business20/2018/07/post_1955.html
「短期的観点でのシステム改修を繰り返した結果、長期的に保守・運用費が高騰する「技術的負債」」が大きな障害。

●レガシーシステムは捨てられない、延命策の決め方 | 日経 xTECH(クロステック) https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00402/080900004/
デジタルトランスフォーメーション、「ビジネスや業務のデジタル化に取り組む企業が増えるなか、従来のレガシーシステムの課題が健在化してきた。モノリシック(一枚岩)に作られたレガシーシステムでは、ちょっとした変更にも大きな手間がかかり、デジタル化で求められるスピードが出せない」。

「新旧一致」を目指すリライト:「まずは資産を棚卸しし、不要な機能は捨て、移行対象を絞り込む。移行性検証から移行設計にかけて、ソースコードについてはCOBOLなどで書かれた現行システムのパターン分析などを通じ、Javaなどへの変換方法を検討。」

●習主席、中国国際スマート産業博覧会にメッセージ_中国国際放送局 http://japanese.cri.cn/20180823/cdf2e3f6-8ac6-8277-d0bb-fbcf3f33df4f.html
「デジタル産業化と産業デジタル化の推進を加速し、質の高い発展の推進、質の高い生活の創造に努力」する。
これはだれあろう、中国習近平国家主席のメッセージだ。

●「BRICS+」でトランプに対抗する習近平──中国製造2025と米中貿易戦争 ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/08/brics2025.php
長期的視点からの雄大な構想力。習近平のマクロな狙いと野心。
1.BRICSは主要5ヵ国だけでも31億人の人口を擁し、人類の運命を牽引していく。
2.「BRICS+」が「朋友圏」を拡大していけば、地球の人口のほとんどをカバーし、それはやがて(習近平が唱えた)「人類運命共同体」を形成していくだろう。
3.「BRICS+」においては多国間貿易を堅持し、投資と貿易において自由化と便利性を発揮し、開放型世界経済を牽引する。
4.「BRICS+」朋友圏においては、「旅行(のビザ)、買い物、文化交流」などに関しても、電子通信を通して利便性を高め、自由貿易圏を形成していく。
5.われわれは断固、保護貿易や一国主義に反対し、互いに手を携えて「投資と貿易の自由化」に貢献し、共同体内での低関税や無関税を増やしていく

●中国が「一帯一路」で目指すパクスシニカの世界秩序 ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/07/post-10607.php
あまり日本で報道されないが、「一帯一路」構想には経済のグローバル化と同時に、社会体制の多様化という発想がある。
「「発展路線の選択の多様性」すなわち「政治体制の多様性」を相互尊重し、各国の国情に沿った発展路線を探るように各国を促し、各国が利益の符合点を探り、「政治的相互信頼・経済的融合・文化的包摂」による「利益共同体、責任共同体、運命共同体」を共に築き、世界の政治経済秩序を中国主導の「グローバルガバナンス(=中国語の『全球治理』)」の構造へと変えていこう」という構想だ。

●民主主義と自由権はそろそろ終わるかもしれない|Taejun|note https://note.mu/taejun/n/n894762122686
・情報アクセスがネット経由になり、そのネットが提供する情報はアルゴリズムで操作されている時代。かかる社会環境の中で民主主義が本当に成立するのか問題。
・「社会制度そのものが、その時代の技術的環境における生産能力を最大化するように変化してきた、というのがマルクスの主張だった」。だとすると、民主主義と自由権も何かに代替されるべき潮目がくるのかも。
・数の上で多数派である後進国家。そこへの援助をこれまで先進国が担当していた。が最近は中国のプレゼンスが目立つ。「人権や民主主義を尊重しないとさっと資金を引き上げる欧米諸国ドナーと違い、中国は自国に友好的である限りにおいて援助を続ける。」自由権や民主主義を重視しない中国型支援が拡大することで、民主主義と自由権が「国民国家」にとってのデフォルトではなくなる、情勢が産まれるかもしれない。

 

┃Others あるいは雑事・雑学
●誰も知らない24業種企業年金ランキング http://blogos.com/article/315974/
ポイント制を導入している企業は81.6%。そこでは同期でも大きな格差がつく。「ある大手電機メーカーでは昇格ポイントと勤続ポイント、業績ポイントがあり、1ポイントの単価は9000円。同期で入社し、最も昇進が早かった社員の退職金額は2856万円。昇進が遅い社員は1091万円。じつに2.6倍以上の格差がついている。」

●迫りくるオープンバンキングの時代 ~プラットフォーム化する銀行のビジネスモデル
https://www.strategyand.pwc.com/media/file/SF16_02.pdf