●ニューノーマルへ 社会のOSをアップデートせよ

コロナ後、テレワークを結局「無かったこと」にしないために

個人のベースでいうと、「常識のアップデートを止めてはならない」。社会のベースでいうと、「社会のOSは書き換えられ続けなければならない」。それがこのたびのコロナ禍で浮き彫りになった、あるいは問われていることではなかったか。

ここではより具体的に、「テレワーク/在宅勤務」に的を絞って考えてみよう。

(緊急事態宣言解除でテレワークから「全員出社」に戻る企業の危機 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/052100102/

日本の企業社会は、仕事と従業員についての業務編成原理・価値観のアップデートを怠らず、これまでの平成年間30年を過ごしてきただろうか。

「Global Remote Working Data & Statistics、Updated Q1 2020」は、世界各国のテレワークの状況を調査、その報告しているが、そこでは日本の「労働者が在宅勤務を望んでいるのにもかかわらず、企業がそれを認めない」状況が浮き彫りになっている。

・企業の価値観と従業員の志向とのマトリックス図

(Amazing Remote Working Statistics & Charts (2020 Update) https://www.merchantsavvy.co.uk/remote-working-statistics/

縦軸:在宅勤務を肯定的に認める企業の比率=「ドイツ80%、アメリカ60%などに比べて、日本は30%をわずかに上回る水準でしかありません。ここで取り上げられている国は、欧米諸国以外に中国、インド、メキシコなどがありますが、いずれも50%以上です。日本の低さは、異常なほどです。」
横軸:在宅勤務が望ましいと考える人々の比率=「日本は80%であって、最も高い水準です」。この数値はドイツ、フランス(68%)より、アメリカ(74%)より高い。

「テレワーク/在宅勤務」は、「仕事の進め方が適切な企業は、生産性が高い」という文脈の中で考察されるべきテーマ。単に流行りすたりに乗るかどうかであってはならない。仕事の進め方が適切な企業は、生産性が高く、また、テレワークも導入できていると考えられる十分な根拠はありそうに思える。

・テレワーク導入企業の生産性が未導入の企業に対して1.6倍高い

(コラム「テレワークにおけるセキュリティの考え方と強化のポイント」 リコー https://www.ricoh.co.jp/solutions/security/column/02/

「仕事の進め方が適切な企業」とは次のふたつの条件を満たす企業だ。

A:勤務の評価がジョブ型・成果主義になっている
B:仕事の進め方のデジタルトランスフォーメーション(DX)化が進んでいる

インターネットにより、距離や時間の制約がこれまでより小さく、ある場合はなくなった。すると距離や時間に結び付いた発想、価値観がワークしなくなる。また距離や時間に結びついていたいくつかの仕事もなくなる。

成果ではなく勤務時間よって評価をするの発想、価値観。このような組織では、オフィスに「いる」ことが最重要で、「在宅勤務では、従業員が管理者の目に届かないところにいるため、勤務の管理が難しい。だから、在宅勤務を認めない」ということになる。
・成果主義による生産性向上

(味の素は、働き方改革のヴィジョンをどう共有したのか?|あいち飲食店開業支援センター https://inshokuten-kaigyou.com/topics/team/news_20180602.html

「紙」中心の事務処理、つまりコピー機とファックスが必須の執務環境、またハンコ文化から脱却できていない社風では、とてもデジタルトランスフォーメーションは果たせない。

象徴的な出来事が、まさにコロナ対応の政府施策ですら起きている。「10万円給付金の申請はマイナンバーを用いてオンラインでできる」と言ったものの、いざ始めてみると、住民基本台帳との照合のために市町村で著しく手間がかかる作業を行わざるをえず、結局のところ、「オンラインより郵便のほうが速い」という珍現象だった。

ニューノーマルへ、社会のOS(価値観・発想)がアップデートされなければならない。

 


■関連URL

●新型コロナ問題で台湾が教えてくれたこと―マイノリティーへの向き合い方でその国が真の「先進国」かどうかが決まる | nippon.com https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00860/#.Xq1RlfkQLhs.facebook
「今回のコロナ禍が問うているのは、その社会が常に価値観をアップデートさせてきたかどうか、なのだ。例えば台湾・ニュージーランド・ドイツなど、今回のコロナ対策で死者を比較的低く抑えている国の共通点は女性がトップという話がある。

女性がリーダーになれる国では、伝統的なジェンダーや慣習よりも実力や新しい発想が重んじられ、マイノリティーが重視され、柔軟に社会が変わってきたのだと思う。マスクアプリ開発で日本でも一躍有名になった天才IT担当閣僚オードリー・タン(唐鳳)氏の起用も、そうした例のひとつだろう。こうした国々が今、さまざまな先進的な施策によって世界を引っ張っている。」

●日本企業は本当の意味で従業員を大事にしてきたか~能力開発の世界比較~ https://www.financepensionrealestate.work/entry/2020/06/20/120058
成果主義への移行は、業務の編成にジョブ型を導入し、それぞれのポストに求められる能力やスキルが明確になる一方、社員にそのスキルや知識をどう身につけさせるかが課題になる。

・日本企業はこれまで社員教育(能力開発)にお金をかけてこなかった。

・国際比較によると、能力開発の実施率が高い方が、労働生産性の上昇率が高い

・OJTについての国際比較を確認。

日本のOJTの実施率をみると、男性が50.7%、女性が45.5%となっており、OECD平均と比較すると、男性が4.4%ポイント、女性が11.5%ポイント低くなっています。特に、女性においてOECD平均との乖離幅が大きいことは大きな問題。

GDPに占める企業の能力開発費の割合について、2010~2014年の水準について比較すると、米国が2.08%、フランスが1.78%、ドイツが1.20%、イタリアが1.09%、英国が1.06%、日本が0.10%となっており、日本が突出して低い水準にある。

●日本人の労働生産性が上がらない決定的な要因
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/18450158/
テレワークができない理由が低生産性ともリンクしている

テレワーク(在宅勤務)は、騒がれたわりには普及していません。日本の組織での仕事の進め方に合わないからです。成果主義ではなく、事務処理やデータ処理がITに対応していません。これらが 日本の低生産性の根本原因 です。日本の生産性はOECD諸国の中で最下位グループです。

●日本電産、テレワークで生産性3分の1に 環境整備の必要性訴え
https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2006/18/news049.html
「会見で永守氏は『導入当初、(仕事の)生産性が3分の1まで落ちた』と評価。欧米などに比べて日本では住宅事情などがテレワークに適していないことが理由で、作業スペースの確保やオンライン・ツールの支給など環境整備が重要だと訴えた」。

●ポスト・コロナにおける「New Normal」の加速とその意味合い
https://www.mckinsey.com/jp/~/media/McKinsey/Locations/Asia/Japan/Our%20Insights/Future%20of%20work%20in%20Japan/Future%20of%20work%20in%20Japan_v3_jp.ashx
日本の企業において反復型のルーチンワークに費やす時間が56%を占めており、そのうち技術的には67%以上に自動化(デジタル化)できる可能性が存在。

●新型コロナ禍で「DX抵抗勢力」は滅亡へ、新たな日本をつくる若手を登用せよ https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00868/060300090/
社会はこれから、「テレワークを導入するための設備投資、初診を含めた遠隔医療の推進、物流ロボットの導入補助、駅構内の人の動きを可視化・分析するデータ活用などデジタル化の推進」など、前向きなIT/デジタル投資が一気に出てくる可能性がある。その際標準化されたシステムを使用し、業務をそれに合わせることが必要である。これまでの業務をデジタル化していてはだめだ。
そういう真のデジタル化、企業の変革を進めうるのは、つまり時代を変えるのは若い人たちだ、アフターコロナに備え思い切った世代交代を考えよ。

●コロナ後、テレワークは結局「無かったこと」になるのか
短期的に出る成果として経営者が取り組みやすいのは、オフィスの賃料を始めとした大幅なコスト削減だ。こちらは確実ですぐ出る効果であり、定量的にも評価しやすい。(オフィス廃止で)通勤費やコピー機などのリース料、紙の費用なども無くなる。東京23区内のオフィスの1人当たりコストは約7万円というデータもある。特に中小企業にとっては大きな削減効果になるだろう。
都内の企業でテレワークをしている企業では、そうでないところに比べて集まる人材の量、質ともに違ってくる。過去には採用で「在宅勤務可」を全面的に宣伝したところ、応募者が数十倍にも増えた企業の事例がある。人材獲得の面でも、テレワークを巡った企業の「二極化」が進む。介護・育児離職問題もテレワークで防ぐことができる。

(緊急事態宣言解除でテレワークから「全員出社」に戻る企業の危機 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/052100102/

●在宅勤務への大転換、「空振り」に終わるかも
https://jp.wsj.com/articles/SB12390730502276204773504586433353607540070
懸念もある。ザッカーバーグCEOは先月、社員の半数が「できるだけ早く職場に戻ることを切望している」と述べ、自由な会話や対面での接触がないことで、連帯感が薄れることに言及した
いや、さまざな取り組みがあっていいのだ。問題は価値観が刷新されているか、職場や仕事の運営に関するOSがアップデートされているか、だ。

 

●テレワーク 半数超が通常勤務より長時間労働 公私の区別も難しく
https://mainichi.jp/articles/20200619/k00/00m/040/033000c.amp
テレワークのメリット(複数回答)は「通勤がないため、時間を有効利用できる」(74・6%)。
デメリットは「勤務時間とそれ以外の時間の区別が付けづらい」(44・9%)が最多。また子どもが家にいる人の場合、70・2%が「テレワークに難しさを感じる」と回答。特に未就学児を抱える人は86・2%が困難さを感じていた。

 

●在宅勤務を経験した7割の方が従来の働き方からの脱却を志向
https://www.sompo-japan.co.jp/~/media/SJNK/files/news/2020/20200605_1.pdf
Q:緊急事態宣言による外出自粛要請終了後、要請前と比較して働き方を変えたいと思うものはありますか?
Ans:在宅勤務を経験した人のおよそ 七割が、今後の働き方を変えたいと回答し。特に、在宅勤務や時差出勤の積極活用や、会議の実施や紙の使用量削減など、在宅勤務を実施した方のほうが、従来の仕事のやり方から脱却しようとする意欲の高まりがうかがえる。

 

●テレワーク経験、働く意識変化 4人に1人が地方移住に関心 内閣府、1万人調査 https://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S14520961.html?pn=2
テレワークの経験が、仕事に向き合う意識に変化をもたらした。
仕事:仕事と生活のうち、「生活を重視するように変化した」が64.2%。46.3%の人が転職や副業などへの希望に「変化があった」
家庭:「家族と過ごす時間が増えた」と答えた人は、全体の70%余りを占め、このうち、81.9%の人が「家族と過ごす時間を今後も保ちたい」
地方移住:地方への移住について、「関心が高くなった」と答えた人は、全体では15%。東京23区の20代では35.4%に。

 

●【無料公開】『革命のファンファーレ』はじめに全文 | 西野亮廣ブログ Powered by Ameba https://ameblo.jp/nishino-akihiro/entry-12393804004.html
「僕らは自分自身の手や足を使い、僕らの身の回りに起こっている変化を、学び、実践し、思い知り、対応していかなければならない。

この変化から目を背けた人間から脱落していく。既得権益を守り始めた人間から終わりが始まる。

頑張れば報われる時代は終わり、変化をしなければ生き残れない時代に、僕らは立ち会っている。