5月3日は図書館閉館の日 『膵臓』と『ペスト』を想う日

小説にはない、12年後2015年の春

5月3日は図書館閉館の日です。それに先立つ、桜が散り急ぐある春の朝、閉館のための蔵書の整理担当を、高校教諭志賀春樹が任されることになったのでした。映画『君の膵臓をたべたい』の冒頭シーンです。

映画『君の膵臓をたべたい』は住野よる氏による同名の小説を下敷きにしています。

小説『君の膵臓をたべたい』は著者住野よる氏にとって、初めて出版された作品でもあります。初めてにもかかわらず、2016年「本屋大賞」第2位、「ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR」第2位、さらに「読書メーター読みたい本ランキング」第1位、「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2015」第1位を獲得、注目を浴び映画化への運びとなりました。

5月3日は図書館閉館の日。小説にはない、12年後2015年の春から映画の物語は始まる。12年前に亡くなった山内桜良(当時の志賀春樹のクラスメイト)が伝えたかった本当の気持ちが、12年の時を経て、蔵書整理作業をするなかで明らかになっていくのです。
・桜良の友人恭子

「君にだけは共病文庫を読む権利を与えます(桜良)」

「退院したらまた一緒に旅行しよう。満開の桜を一緒に見よう(春樹)」

・映画『君の膵臓をたべたい』公式サイト
https://www.toho.co.jp/movie/lineup/kimisui.html


(映画【君の膵臓をたべたい】フル動画無料!!あらすじも見てみよう https://larkblog.com/i-want-to-eat-your-pancreas/

映画は悲劇としての顛末を暗に予想させながら、しかし各シーン、ある時はあっけらかんと、ある時はコメディタッチで、ゆっくりと物語を紡いでいきます。その明るさがよけいに、人生の不条理を実感させるのでしょう。桜良の母親と春樹との面会シーンはハンカチなしには見ることができません。
・桜良の母親と面談した春樹

ちなみに新型コロナで志村けんさん、岡江久美子さんの逝去が伝えられ、この感染症の怖さ、過酷さを身近なこととしてたくさんの人が実感している昨今です。

またこの時期フランス人作家にして哲学者のカミュの作品『ペスト』が空前の売上をたたき出しているとのこと。人生の不条理に対してカミュがどういう言説を残したのか、たくさんの人が知ろうとしているのかもしれません。

 

君の膵臓をたべたい

映画『君の膵臓をたべたい』のタイトルにはインパクトがあります。映画や小説を読まれた方は、人生の不条理に正面から向き合った二人の心のひだを知る中で、このタイトル、いや台詞に込められた二重の意味を知って、また涙することになります。

「希望とは一般に信じられている事とは反対で、あきらめにも等しいものである。そして生きることは、あきらめないことである。」

「人生それ自体に意味などない。しかし、意味がないからこそ生きるに値するのだ。」

これはカミュの有名な箴言ですが、『君の膵臓をたべたい』の二人の主人公、桜良と春樹との青春、また12年後の展開と重ねることで、映画とカミュ、両方をより深く理解できることになるのではないでしょうか。

コロナ禍の現在進行形を生きる私たちにとってとりわけ、それは大事なことのように思えます。

・山内桜良役に浜辺美波