●本と電子書籍は別の物 ユーザーはちゃんと使い分けている

電子書籍が始まったころ、カニバリ議論が盛んだった。サイマル出版、紙と電子版を同時に、あるいは数週間程度の遅れで刊行していくことはもはや珍しくなくなった。電子版刊行で紙版の売り上げが減るというカニバリ議論は(いまでもそれを恐れている版元が皆無ではないだろうが)、遠い昔の笑い話だ。

カニバリ議論は紙版と電子版が同じものと勘違いした版元の勉強不足から。読者はちゃんと使い分けていた。読者にとって、本と電子書籍は別の物。

「紙の書籍」を選ぶシーン
順位  選ぶシーン             (
1位   家で本を読む            59.5
2位   保管・保存しておきたい本を買う   48.3
3位   何度も読み返しそうな本を買う    37.1
4位   大好きな作家、漫画家など本を読む  35.4
5位   勉強用の本を買う          32.1

「電子書籍」を選ぶシーン
順位  選ぶシーン             (
1位   電車やバスなどで本を読む      41.7
2位   家で本を読む            40.7
3位   旅行や出張などで本を読む      27.5
4位   面白いかどうかわからない本を買う  24.8
5位   暗いところで本を読む        18.8

ただ一方で、「取次/書店」ルートでの「本と読者のマッチング」機能が衰える傾向は変わらず、さらには「読書」の習慣がメルトダウンしていることから、紙版の凋落はなお続いている。

デジタルの力を借りてこの凋落傾向に歯止めをかけたのはコミック。

他のジャンルでもデジタルの力を。

「本と読者のマッチング」機能と「読書」習慣の復活をデジタルトランスフォーメーションで形にすることが待たれている。


 

●本や書店に関する利用意識を調査。紙の書籍は「大切な本」電子書籍は「持ち歩き」と使い分け(マクロミル調べ)|株式会社マクロミルのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000450.000000624.html
「読書」習慣の保持の具合を「頻度」で見るなら、むしろ電子版利用者に軍配があがる。これはスマホ等の情報端末から、スキマ時間に読書を楽しむのに、マンガがフィットしていたからと考えられる。ならば、他のジャンルでもスマホ対応を工夫するのが、「紙版+電子版」で売り上げ回復を目指す必須要素ではないか。

要は、コミック以外のジャンルを担当する版元、編集者、経営者が読者ニーズにあった電子版「本」作り、つまり、別の物として「(電子版)本」を構想することに知恵を絞るのだ。

 

●読書習慣がない子は勉強しても平均以下の成績しかとれない!? 本と学力の深い関係 | ダ・ヴィンチニュース https://ddnavi.com/review/489755/a/
小中学生4万人の脳解析データにより判明した“読書と成績の関係性”。
・平日に本を読む子はまったく本を読まない子よりも成績が高い。ただし、
・勉強や睡眠時間を確保できている子なら、読書を長時間するほど成績が高い。
・勉強や睡眠時間を確保できておらず、ただ読書を長時間していると読書と成績の関係は弱くなる。


(4万人のデータから徹底分析!“読書習慣”と“成績”は密接な関係があった! 新刊『「本の読み方」で学力は決まる』発売!! - ROOTAGE BIGLOBEニュース https://news.biglobe.ne.jp/economy/0831/9239102620/dre_tab.html

さらに重要なこと。
「本当に重要なのは選ぶ本のジャンルではなく、我が子に合った難易度の本であるかどうかだ。子どもが読書を始めたばかりの低学年である場合は、まずたくさんの本を読む習慣を築いていくために、簡単な本を与えてあげるのもよいだろう。」

 

●ケヴィン・ケリーが語る「本と読書と出版」 その5 | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/7831
「かつて「読む」ことは現代社会が大切にする読み書き能力、理性的思考、科学、公平性、法の規則といったほとんどものを育んできた。それらすべては、スクリーンで読むことでどうなってしまうだろう? 本はどうなるのか?(『インターネットの次に来るもの』 第4章 Screening)」

 

●「本が読者に届かない」Amazon商法に公取委が突入で炙り出される出版業界の予後不良(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20180919-00097523/
「時すでに遅しとも言えます。もはや、紙の書籍を中心とした界隈は古びた再販制を胸に抱きかかえながら、リアル書店と取次の苦境を嘆いて死んでいく以外に解決策は無くなっています。」
・「そもそも論でいえば、棚に置かれ長く読まれるであろう価格の高い専門書と、瞬間風速で読み捨てられるムックやコミックなどとが同じ流通、同じ再販制度で扱われている問題はあります。」
・「収益の目安となる書籍販売の重要な指標は、Amazonランキングに強い因果関係を示しており、Amazonで売り上げが上がっているとリアルの本屋からの引き合いも増える」。

 

●1年で33万部減った朝日新聞、切り捨てる販売店主向け“転職指導”で家電FCへの加盟など斡旋――「危篤」寸前の新聞業界:MyNewsJapan http://www.mynewsjapan.com/reports/2418
「新聞業界が焦りの色を鮮明にしはじめている。この1年で朝日、読売、毎日、日経、産経の中央紙5紙は、計約129万部を減らした。この部数は、地方紙として定評があり、約43万部を発行する京都新聞社3社分に相当する。地方紙の発行部数も下落しており、たった1年で、京都新聞社が4社ほど倒産した計算になる。」

(朝日新聞、6年連続で売り上げ減少 従業員のリストラで利益は36%増の120億円 | ダイアログ ニュース https://dialog-news.com/2018/05/28/asahi0528/

海外でデジタル版での購読者獲得に成功している新聞社がいることから、ここでもスマホ対応の可否が明暗を分けるカギになっていると考えられる。

 

┃Others あるいは雑事・雑学
●強羅温泉で心ゆくまで読書を楽しむ!話題のブックホテル「箱根本箱」を完全レポート | ほんのひきだし http://hon-hikidashi.jp/enjoy/59412/

●新潮45の特集受け...小説家、翻訳家が執筆・刊行取りやめの意志を表明 https://www.huffingtonpost.jp/2018/09/22/publish-cancel_a_23538575/

●EUの「著作権法改正」は、世界中のネットユーザーに大きな影響を及ぼす|WIRED.jp https://wired.jp/2018/09/22/europes-copyright-law-change-web/