「人新世」とは そのデータ群・事実認識


【目次】
そもそも「人新世」って 何?
ハッシュタグ(#)としての「人新世」
「人新世」とは そのデータ群・事実認識


 

■「人新世」対応を誤れば?

地質年代において、化石に残るような生きものがたくさん出てきたのが「顕生代」です。顕生代は古い方から、古生代・中生代・新生代と分かれますが、これらの「」は大量絶滅の発生が、その境界にある場合の区分です。

古生代(ペルム紀:Permian)と中生代(三畳紀:Triassic)の間はP-T境界、中生代(白亜紀:Cretaceous)と新生代(第三:Tertiary)の間はK-T境界です。

P-T境界では三葉虫やサンゴ、アンモナイトなど海中の生物の95%以上、陸上をあわせると全生物種の70%が死滅したといわれます。原因としては、地球のマグマ活動の活発化による大規模な火山噴火や超大陸パンゲアの分裂、海中環境における「酸欠状態」など、また巨大隕石の落下も考えられています。

K-T境界では恐竜が絶滅しました。現在のメキシコのユカタン半島に、直径10〜15キロメートルの小惑星が衝突、ために急激な環境変化を引き起こし多くの生物が絶滅したのです。

目を現代、「人新世」時代に転じると、実はヒトの人口が急激に大幅増加している、その横で地球上の脊椎動物の個体数が激減しています。WWF(世界自然保護基金)の最新の「The Living Planet Report 2020」によると、地球上の脊椎動物の生息個体数がこの50年の間に70%近く減少していることが明らかになっています。

・人新世(過去60年)に起きたこと
人口/総エネルギー消費量・年/一人あたりGDP
※横軸は「0(現在)」からの遡り=左端は1万2千年前

(総合研究大学院大学・長谷川眞理子学長の制作図画)
・地域ごとの生物多様性完全度指数(BII)の推移

(過去50年で生物多様性は68%減少 地球の生命の未来を決める2020年からの行動変革 https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4402.html
・地球上の脊椎動物の生息個体数が68%減少(1970~2016年)

(地球上の野生動物が50年弱で7割減少、状況悪化止まらず | Buzzap! https://buzzap.jp/news/20200914-the-living-planet-report-2020/

脊椎動物の生息個体数の激減はひとつの象徴でしかありません。「人新世」は地球システムへの負荷あるいはその持続可能性への脅威を前景化させるハッシュタグです。持続可能性への脅威、つまり地球システムが壊れるとは、ヒトという種そのものの絶滅、地球の「死の惑星」化をも示唆していないでしょうか。地質学会はこの言葉の認定に慎重ですが、ハッシュタグに呼応した「人新世」対応を誤れば、むしろ「人新世」はヒト種の絶滅を引き起こす人新世へ格上げされてしまうのかもしれません。

以下、「人新世」の実相としてよく引用される図画を紹介します。

 

■「人新世」の実相 そのデータ群・事実認識

※図画の出典はGreat Acceleration - IGBP 。http://www.igbp.net/globalchange/greatacceleration.4.1b8ae20512db692f2a680001630.html

 

●ヒトの活動(Great Acceleration)~1950年代が分岐点

・ヒトの総GDPの推移

・ヒトの総エネルギー消費量

・ヒトの移動量

・ダム建設数

・ヒトの総使用水量

・ヒトの肥料総使用量

 

●地球システムへの負荷

・二酸化炭素

・地表面温度

・成層圏オゾン

・海洋酸性化

・沿岸域窒素

・喪失熱帯雨林

 


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ハッシュタグ(#)としての「人新世」
「人新世」とは そのデータ群・事実認識