知のパラダイムシフト

「「一人出版社」スキームとファンに支持されること」

※これはインストラクショナルデザイナー、境祐司さんの「ニューズレター」の配信記事。ご本人のご了解をいただき、全文転載させていただいています。


 

「「一人出版社」スキームとファンに支持されること」

クリエイティブエッジ・ニュースレター
Vol.035[号外]です。

2015年5号目の配信になります。
●「一人出版社」スキームとファンに支持されること

先週の木曜日(19日)、「一人出版社」クリエイティブエッジスクール・ブックスを正式にオープンしました。

昨年、再スタート可能なら3月20日と決めていましたので、スケジュールどおりに告知。企画段階から、情報公開するやり方で進めていますので「情報解禁!」のようなインパクトはありませんが、プレスリリースを見たメディアの方、出版業界の方々から問い合わせを頂きました。

■一人で電子書籍の企画から制作、ストアの運用、プロモーションまで手掛ける「一人出版社」クリエイティブエッジスクール・ブックス正式オープン。 https://www.value-press.com/pressrelease/139142

「一人出版社」というスタイルが確立していくと、次第に、協業、つまりコラボレーションワークも増えてくるだろうと考えていましたが、予想どおりになってきました。

「一人出版社」は、本の企画から制作、販売、プロモーションなど全ての工程を一人でこなす個人商店のようなものですが、業務単位で契約を結び、協業する機会も増えてきます。
これは、海外の一人会社を見ると、よくわかります。

複数の企業と業務単位の請負契約で活動する「法人化した個人」Independent Contractor(IC)に近いと思います。

ただ、米国の場合は、協業より「買収」が多いかもしれません。

例えば、2010年以降、電子出版のテクニカルな領域でお世話になっていた、ライザ・デイリーさん(Threepressコンサルティング)は、Safari Books Online(現在のSafari)に、ジョシュア・タレントさん(イーブックアーキテクト)は、Firebrand Technologiesに、会社・サービスごと買収されています。

Threepressコンサルティングは「二人開発会社」、イーブックアーキテクトは「一人出版社」でしたが、今は企業の中の人です。
「一人出版社」と聞くと、排他的な印象を受けるかもしれませんが、成功すればするほど、さまざまな「人」「組織」との関係性が濃くなっていく。
核になるのは、一人で進める電子出版ですが、事業が軌道に乗れば、同じくらいコラボレーションワークが増えていきます。

コラボレーションの形態は、

編集者(一人出版社)+著者(ネット作家)

などが一般的ですが、

編集者(一人出版社)+編集者(出版社A)+マネジメント(エージェンシー)

といったダブルエディターによる企画、という組み合わせもあります。
音楽業界では、めずらしくありませんが、電子出版でも十分できることだと思っています。

一人出版社ではありませんが、国内のインディペンデントで注目しているのが、思想家の東浩紀さん等が立ち上げた出版社「株式会社ゲンロン」(2010年4月の設立時は合同会社「コンテクチュアズ」)です。

設立直後のインタビューがあります。

【合同会社コンテクチュアズ インタビュー】『思想地図bis』が打ち出すビジョン
2010年06月30日 http://www.sbbit.jp/article/cont1/21907

いろいろ面白い人が集まるサロンになればいいなというくらいの気持ちだったんです。ただ、僕は前々から、出版社に新人を育てる機能がなくなっているのが問題だと思っていたので、この会には出版社横断的な新人発掘機能を持たせたかった。

「面白い人が集まるサロン」、
「出版社横断的な新人発掘機能」

が、ポイントだと思いますが、じっくり「中で」本を作り込むこと、「外から」人を入れて、シナジー効果を生み出し、そこから新たな出版人を見つける、というビジョンが語られています。

ゲンロンに社名を変更するのは、2012年4月ですが、
現在はどうなっているのか。

ゲンロン http://genron.co.jp/
事業の3本柱は、以下のとおり。

1. ゲンロン友の会(有料会員向け事業)
2. ゲンロンカフェ(イベント事業)
3. ゲンロンショップ(出版事業)

さらに、今年に入って「ゲンロンスクール」が加わります。
2010年のインタビューで語っていたビジョンに近づいている感じですね。

実は、私がモデルにしてきた、O'Reilly Mediaも、A Book Apartも同様のシステムなのです。
O'Reilly Mediaは、複数のカンファレンスを開催していますし、A Book ApartもAn Event Apartというイベントと密接。

簡潔に言うと、(インディペンデントほど)ファンに支持される出版社にならないと、継続していくのは難しいということです。
「一人出版社」などは、音楽業界のインディーズレーベルそのものですから、良いコンテンツを作るだけではダメで、いかに作品の世界観を伝えて、支持してもらえるか。これは、プロモーションという手法の話ではなく、「気概」みたいなもので、ストレートにやる方がよいと思っています。

Creative Edge School Booksのサイトに、「一人出版社」スキームに関するページを追加しました。

概要と将来の展望 http://design-zero.tv/school/booklist/about.html

「3:新しい販売方法の実践」で、「電子書籍と他のコンテンツ、リアルイベントを融合させた販売」と書いたのですが、これは小さなイベントを開催して、電子書籍と一緒にリリースするという内容です。

その第一弾として考えているのが「電子教科書のUXデザイン」のミニイベントです。

現在、改訂版のための取材準備に入っていますが、ある程度進行したら、インストラクショナルデザインの専門家、UXデザインの専門家に来ていただいて、電子教科書のUXデザインについて語ってもらいたいと思っています。

ミニイベントの当日に、改訂版「電子教科書のUXデザイン」もリリースするという計画です(電子チケットとセット)。

一冊の本に、イベントを絡めながら、じっくり育てていく。
もし、その思いや取り組みが伝わり、支持してくれる人が現れたら、こんな嬉しいことはないと思います。
間違いなく、次のモチベーションにつながっていきます。

このあたりのテーマは、「フリーダムパブリッシング」の4冊目の追加版で書く予定です。

ウェブ時代の「一人出版社」論 フリーダムパブリッシング http://design-zero.tv/school/freedom/

デジタル本の夢、天までとどけ。

Creative Edge School Books http://design-zero.tv/school/booklist/

Q&A      http://design-zero.tv/school/booklist/qa_01.html
シンクタンク http://design-zero.tv/school/booklist/lab_01.html

境祐司 ebookcast@gmail.com
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