「Learning Analytics(LA)の概況と最新動向の紹介」【セミナー備忘録】

(個人用のメモです。議事録ではありません。記事中の図画はプレゼン公開資料を使用しています))

□ 「学習ビッグデータ分析(LA:Learning Analytics)最前線」 - グローバルな最新情報と学習理論からの考察 - http://www.asuka-academy.com/seminar/20150729.html

■「Learning Analytics(LA)の概況と最新動向の紹介」
(講師:上智大学教授、Asuka Academy 理事 田村恭久先生)

LAとはなにか
ISO/IEC JTC1/SC36 で発足したLAワーキンググループの活動紹介
「学習分析学会」について
e-Learning Award ForumにおけるLA Hackathonの予告
質疑応答

◎全容は下記動画で確認できます。

・プレゼン資料 http://www.asuka-academy.com/seminar/img/20150729_tamura.pdf

◎田村恭久先生のお話の内、ラーニング・アナリティックス(LA)の辞書的説明、また事典的解説は別の記事に仕立てたのでそこをご参照ください。(EdTechPedia http://society-zero.com/chienotane/archives/1913 )


 

教室で何が起きているのか

田村研究室で行われている研究活動の内容が一部紹介されたが、それがなかなか面白かった。

◯田村研究室でのLAの試み
• EPUBリーダー (Readium)へのページめくり履歴取得機能追加(渡辺)
– Tamura, Watanabe, Page Flip Acquisition on EPUB e-Textbookfor Learning Analytics, Proc. KES 2015 (to be appeared 2015.9)
• 心拍測定による情緒状態の推定とフィードバック(村上)
– Tamura, Murakami, Heart Rate Feedback for Learners’ EmotionalSelf Control, Proc. MAC-ETEL 2015 (to be appeared 2015.8)
• ページめくり履歴による学習スタイルの推定(堀越・山崎)
– IEICE ET研究会(大分) 発表予定 (2015.10)
– ICCE 2015 Workshop(杭州) 発表予定 (2015.11)

比較的易しい授業であると、先生が教科書を読み上げたり説明している間に、生徒はどんどん次のページをめくって、先の情報を見たりする。つまり、逐次的にあるいは先生と同期して、いま先生が説明している箇所を目で追うのではなく、自分が知りたいこと、たとえば今日の課題は何になるかなどに触れている箇所を先に見つけようと活動をする。

逆に、内容の難しい授業の場合は先生の説明に集中し、該当ページから動かないこともあるだろう。

こういった先生の説明箇所と同期してページめくりするかどうかのパターンは、授業の内容(易しいや難しい)とも関連しているだろうが、生徒自身の学習スタイルとも関連している可能性がある。

・認知の観点からみた学習スタイルの違い
Holist : 全体の構成の理解から入る(トップダウン)
Serialist : 逐次的に詳細を処理していく(ボトムアップ)

「教科書のどこを見ているか(ページ遷移)」、それが学習行動履歴として、データとして収集することが可能な情報環境となってきた。

この図は実際の授業でのページ遷移の全体図。太線の教師の遷移に対し、生徒がどういう行動を起こしたか(=教室で何が起きているのか)が視覚化されている。
ページ遷移

難易度の違う科目間での違いを表現しているのが下記図。
ページ遷移 科目間https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/08/ページ遷移 科目間-300x225.jpg 300w" sizes="(max-width: 480px) 100vw, 480px" />

同一学生にによる、異なる科目間での比較が下記図。
ページ遷移 異なる科目間https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/08/ページ遷移 異なる科目間-300x225.jpg 300w" sizes="(max-width: 480px) 100vw, 480px" />

学習行動履歴データをどう使うか

生徒へのフィードバック

個人ごとの学習行動情報を分析していくことで、その生徒のタイプにあわせて教え方を変える、適切なナビゲーションをすることができるようになるかもしれない。

先生へのフィードバック

逆にこの分析によって「この先生の話は誰も聞いていない」ということもわかったりする。学校側から先生に対する指導に使えるかもしれない。

学校へのフィードバック

イギリスなどではスクールアセスメントとして学校の評価が盛んだが、そういった際の判断材料に使えるかもしれない。

 

収集すべきデータ項目は何か、なんのためにデータ収集を行うのか

ここではページめくり、「教科書のどこを見ているか(ページ遷移)」というデータ項目を材料にして、それを収集(インプット)して何に使えるか(アウトプット)という相互関係を見てきた。

Learning Analyticsではこの、インプットとアウトプットの議論が欠かせない。

・LA のアウトプット例
Recommendation : 単元を戻って再学習を促すなど
Adaptation : 個々の特徴に応じた教材の組み替え
E-Portfolio : 学習者がどんなことができるようになったのかという証明
Prediction : 単位を落とした学生が留年・退学する確率の算出(教育組織の運営の観点からも重要)

出力入力 総論https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/08/出力入力 総論-300x225.jpg 300w" sizes="(max-width: 480px) 100vw, 480px" />
出力入力 各論https://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/08/出力入力 各論-300x225.jpg 300w" sizes="(max-width: 480px) 100vw, 480px" />

下図がその全体像、
LA overviewhttps://society-zero.com/chienotane/wp-content/uploads/2015/08/LA overview-300x225.jpg 300w" sizes="(max-width: 480px) 100vw, 480px" />

現在その仕様、規格についての議論が始まったばかりだ、という説明があった。

・各種規格で提案中のLAデータ項目
IMS Caliper
– 69+23項目の例
– 学習指導要領 (US) との関連づけ
文科省・電通
– 現在検討中、非公開
– 現状60項目
EDUPUB  LA
– 44項目
– ADL xAPIに近い記述

ADL(Advanced Distributed Learning)とは、アメリカの国防総省や連邦政府により設立された、学習の仕様や設計を取り決め促進させるための標準化団体。

xAPI (Experience Application Programming Interface) とはこれまで積み上げてきた、LMS 前提の学習シーンに縛られずに、多種多様な学習活動の履歴を記録・検索・抽出するための技術仕様。これまでは e-learning システムの相互運用性を高めるために規定されていた SCORM (Sharable Content Object Reference Model) がスタンダードだった。そこでカバーできないユースケースを補完するために定義されている。


 

◇関連URL
●TinCanプロジェクト | 日本イーラーニングコンソシアム http://www.elc.or.jp/edtech/tincan/
●あらゆる経験を集積するための仕様「Experience API」のメモ - Qiita http://qiita.com/61503891/items/fedefbc5d322b9eb1d3d

●ラーニング・アナリティックス(LA)|EdTechPedia http://society-zero.com/chienotane/archives/1913
●ビッグデータによる学習解析研究の意義 【セミナー備忘録】 http://society-zero.com/chienotane/archives/1959