協働学習(協調学習)|EdTechPedia

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協働学習とは

多様な価値観や文化がしばしば対立し、葛藤する世界を変革するための一つの教育的方策として、「協働(collaboration)」そのものに「教育的価値」を見いだし、教育活動に取り入れる学習方法。「オープン」に価値を置くネット文化の中で産まれた、グループウェアなどを利用して集団的作業を支援することをめざした「協調作業 CSCW(Computer Supported Cooperative Work)」の概念の学習への応用という側面があるが、単に学習課題達成の手段として「協働」を用いるのではない点に留意。

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「教育の情報化ビジョン」と協働学習の時代性

個人学習と一斉学習の間に位置づけられる学習形態。すなわち「学習者がグループ活動の中でお互いの学習を助け合い、それぞれが学習に対する責任を果たすことで、グループとしての目標を達成していく、協調的な相互依存学習のこと」といった定義がよく行われる。電子教科書のデメリット、つまり電子教科書を使った学習ではコミュニケーションの点で限界を持っているとする主張がなされる際、よく引き合いに出される概念でもある。

その一方で、空間的な制約を取り除いていける電子教科書・教材を使った学習環境の設定に、新しい協働学習の可能性を見る考え方もある。たとえば、シンガポールでは教育省(Ministry of Education)が2008年にFutureSchools@Singaporeプロジェクトを開始したが、そのマスタープランの中でICT(Information and Communication Technology)を活用した個別学習や協働学習のあり方を示している。

日本でも「教育の情報化ビジョン」でデジタル教科書の持つメリットとの関連で、「協働学習」に言及している。たとえば、インターネット等を活用して、地域の人々や国内外の学校の子どもたち、さらには、社会教育施設、研究機関等の専門家等との交流を図り、多角的な思考力等を育む授業を行ったり、
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地域の大人へのインタビューや植物の観察、情報端末での撮影等により、必要な情報を収集するとともに、気づいたことを記録する、などを「協働学習」の内容として解説している。
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確かに協働学習はインターネット環境がもたらした新しい学習形態である。ただし、そういった技術的な可能性、手段としての拡張性もさることながら、「協働」そのものに「教育的価値」を見出すというポイントが重要であること(時代的な背景)を忘れてはならない。

協働、協調、共同

教育工学や認知科学の分野で「協調学習」という表現、呼称で古くから議論されている。しかし「協調」には国際協調や労使協調のように、利害調整のニュアンスが含まれることから最近では「協働」の単語が使われるようになっている。

また「共同・協同学習(cooperative learnig)」は一つの目的を達成するための手段としてのニュアンスが強い。たとえば自動車産業で世界的に有名になった「改善」で奨励されるのが「共同・協同学習」。効率性に高い価値が置かれる世界で使われる。

「協働学習とは」で触れたように、実はネット世界でも、当初は「cooperative」と「collaborative」とはあまり区別して使われていなかった、ないし効率性の面がより重視されていたといえる。しかし「近代」文化の閉塞を打ち破るもの、ポスト・モダンの潮流の中で、「collaborative」に価値を見出す思潮が主流となってきたという背景がある。


◇関連クリップ
●「協働学習」とは何か http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/6703/1/cd-gak05_sakamoto.pdf
●電子教科書の規格標準化の意義~【セミナー備忘録】EDUPUB TOKYO 2014 公開セミナー https://societyzero.wordpress.com/2014/09/20/00-90/
●タブレット PC の可搬性を活かした協調学習支援環境 http://www.jsise.org/taikai/2012/program/contents/pdf/C1-1.pdf
● ISO/IEC JTC1/SC36/WG2協調学習環境の技術標準化(標準化よもやま話19) http://ci.nii.ac.jp/naid/110006423132