法治国家の理念と自由の相互承認|知活人(chiikibito)

この記事は「知活人(chiikibito)のための「仮想図書館|iCardbookLibrary」に参加しているコミュニティへ提供した、[私のお気に入り知識カード]をブログ公開するものです。
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■[私のお気に入り知識カード]=028 法の本質

https://society-zero.com/icard/227430

 

◎法治国家の理念と自由の相互承認◎

自由の相互承認 エピローグ

上記宮沢賢治の詩の一節を「エピローグ」に掲げているのが、『苫野一徳のiCardbook https://wp.me/p5Gp5K-2oL 』です。そして最終回の[私のお気に入り知識カード]は、「028 法の本質」になります。

 

■内閣と国会あるいは法治国家の理念

ともするとわたしたちは、政府(自治体)の仕事は首相や内閣(市町村長・知事)が決めていると思いがちです。教科書にもどると首相や内閣は、「政府の仕事をどのように執行するか(=HOW)」を決定する機関。他方そもそも「政府の仕事」とは何か、「政府が何をするのか(=WHAT)」を決めるのが、国会(議会)の役割です。

つまり国会が法律をつくったり、変えたり、廃止したりする「立法権」を、内閣は国会が決めた法律や予算に基づいて実際の行政を行う「行政権」を持っている、という立て付けです。政府が何をするかは国会次第。内閣の独走は許さない、これが法治国家の理念です。下世話な表現ですが、首相や内閣が日本で一番偉いわけではない、のです。近代民主国家において、支配・統治の頂点にいるのは民衆です。

基本概念、基礎知識はときどき振り返る必要がありますね。法を超えた行政活動が行われるならばそれは行政権の乱用となります。法治国家の屋台骨が揺らぐ事態は避けなければなりません。

さて7月8日、内閣の一員、西村康稔大臣は、新型コロナウイルスの基本的対処方針分科会で、2021年7月12日から緊急事態宣言が再発令となる東京で再び酒類の提供が停止されることから、

・酒類提供を続ける飲食店との取引停止を、酒類販売事業者に要請する意向を明らかにし、

・同時に休業要請拒否をしている店舗などの情報を金融機関に提供、「国・自治体に従うよう指導してほしい」としました。

後者はその後撤回(7月9日)されましたが、前者は令和3年7月8日に「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室」と「国税庁酒税課」の連名で「酒類業中央団体連絡協議会各組合」あてに「事務連絡」として送付されました。一言で表すと「酒類の提供停止の要請に従わない飲食店に対しては取引を停止してください」という非常に衝撃的な内容でした。

西村氏は「法にもとづく要請だ」とし、「事務連絡」にも「新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条第2項」が根拠と書かれています。

しかしこれは行政権乱用の疑いが濃いです。特措法45条を受け細目を記している特措法施行令11条の「政令で定める多数の者が利用する施設」に飲食店は含まれますが、酒屋は含まれないからです。

 

■基本概念、基礎知識を再確認する

テレビのニュース番組やワイドショーで、「長年培ってきたお客様との信頼を壊す」「やり方が悪代官と一緒。現場をわかっていない。ふざけるな」といった現場の声や憤慨のコメンテーター発言はあるものの、上記のような基本概念、基礎知識からの指摘はあまり聞かれません。

西村大臣発言の背景には、酒類提供停止を無視して酒を出す飲食店が増え、業界から「要請を守らない店を取り締まれ」という陳情が増えている事情がありそうです。西村氏もそれを強調していました。しかしそれであれば制度設計を見なすのがまず行われるべきこと。飲食店の営業制限を考え直し、必要なら法改正するのが法治国家です。現行法で取り締まれないからといって、酒屋に行政の代行をさせるのは基本理念に反します。

ところでそれではなぜ、そもそも法治国家を我が国は採用しているのでしょうか。基本概念、基礎知識はときどき振り返る必要がありますね。なにしろ民主主義の勝負所にさしかかっている昨今ですから。

ひとつの答えが『苫野一徳のiCardbook』にあります。

それは下巻の「028 法の本質」です。

法の本質 自由の相互承認

 

さてこれはどいう意味、どういうことでしょう。まずは『自由の相互承認 人間社会を「希望」に紡ぐ(熊本大学準教授  苫野一徳) https://wp.me/p5Gp5K-2oL 』にあたってみてください。ジャン・ジャック・ルソーのやや高飛車な警告を念頭に置きながら。

「読者に断っておくが、この章は落ち着いて読んでいただきたい。注意を払おうとしない読者にわからせる術を、私は知らないからである。」(『社会契約論』第三編第一章冒頭)

 


(上)現状変革の哲学原理

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(下)未来構築の実践理論

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[追記:2021年7月13日]
二つの施策(酒類販売店への働きかけ/銀行への働きかけ)は、7月7日、西村氏のほか、菅首相、加藤勝信官房長官、田村憲久厚生労働相、赤羽一嘉国土交通相、和泉洋人首相補佐官や内閣官房などの事務方が参加する打ち合わせで議論されていた、とのこと。
後者についても内閣官房は銀行などを監督する金融庁や、政府系金融機関を所管する財務、経産両省と事前に調整のうえ、8日付の文書で各府省庁に、所管する金融機関に政府方針への協力を求めるよう依頼していました。
また前者についてもその後、後者同様、撤回されました(7月13日)。
●圧力発言で”西村大臣の乱”「菅首相らも打ち合わせに出席」河野大臣のワクチン弁明に自治体が怒り https://news.yahoo.co.jp/articles/b8b41a2f95040f9cbeb872ef316c9eab241a4779