CES 2018「最新ICT動向」紹介 【セミナー備忘録】

◎出版関係者にぜひ紹介したい映像があった(目次番号の2.)。この映像はアクセシビリティ対応が決して、「出版」の周辺にある出来事でなくなっていること。そしてアクセシビリティ関連技術は「出版」を、そして「読書」を、「音声」から刷新する可能性がある、という点だ。これは清水氏がいうところの「技術や社会変化の先を読むには、「境」をよく読むことが大事。改革者は周辺からやってくる」にまさに該当する事象だろう。

■セミナー概要~CES 2018のレポートとそこから見えてきたテクノロジーの動向と2018年の方向性を展望する。

Google、Amazon、Apple、Microsoft、Facebookなどが主導する、自動運転、スマートスピーカーなど、AI(人工知能)技術の様々な分野への応用が話題となっています。毎年1月にラスベガスで開始されるCES(Consumer Electronics Show)では様々な最新技術が公開されます。20数回CESに参加されている清水計宏氏に解説していただきました。
出版界、電子出版界の皆様も最新ICTの動向を把握しておくべきと思い、このセミナーを企画しました。

■講師:清水計宏氏
1977年日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)入社。82年同社退職後、テレコミュニケーション、コンピューター関係の専門紙、雑誌の編集者・記者を経て、89年映像新聞社入社。
90年に映像新聞編集長、92年取締役・編集長。2001年10月映像新聞社を退職し、独立。
主宰する「BUSINESS HINT!」セミナーは、先端技術や新規事業の紹介で有名。
【⇒プレゼン資料

日時:2018年2月20日(火) 15:00-17:30(14:30受付開始)
会場:麹町/紀尾井町:株式会社パピレス 4階セミナールーム
主催:日本電子出版協会(JEPA)


(個人用のメモです。議事録ではありません。とりわけ[ ]の部分はブログ記事筆者の挿入部分です。図画等は特に断りがなければ講演者のプレゼン資料を利用しています。)

1.AI(人工知能)のCES

毎年1月に開催されるCES(Consumer Electronics Show)は米国家電協会が主催する世界最大規模の家電ショー。2018年、開催地ラスベガスで人々の眼をひいたのが「Hey Google」。

今年が初参加となるグーグル(Google)はCESの会場だけでなく、ラスベガスの街全体を「Hey, Google」の文字でジャックしていた。AmazonのAlexaにスマートスピーカーで先行されているイメージを覆そうとの狙い。人工知能の戦いが家電市場で始まっているのだ。

展示会場のみならず、ホテルの巨大電光掲示板、看板、デジタルサイネージはもちろんのこと、ラスベガス市内を走るバス、モノレールまでがGoogle Assistantの広告でラッピングされていた。
[・「Hey Google」ジャック

(世界最大のラスベガスCESは『Hey!Google』ジャック!? https://clicccar.com/2018/01/14/550144/

(CES 2018後半まとめ - イノベーションハブ/Innovation Hub http://blog.goo.ne.jp/tomkomuro/e/519050b4825056d6c6f367286e122f52 )]

 

2.AIとアクセシビリティ、そして出版への示唆

このAIを背景に開発された商品の中にアクセシビリティのための、眼鏡装着型端末がある。(下記の映像はぜひ見てみてほしい)

普段つけている眼鏡に、ある小さな端末を装着する。装着した彼ら彼女らは実は視覚などにある困難を抱えている。

本をもってページを指で指す、するとそのページを眼鏡装着小型端末がOCR解析して、読み上げて「音声」で、その本の内容を教えてくれる、読書をアシストしてくれる。

向こうから人がやってきた。その顔を認識して、誰なのか、名前を「音声」で教えてくれる。人と人のコミュニケーションをサポートしてくれる。

紙幣の認識についても同様だ。そして紙幣があれば買い物ができる。そこでスーパーに行く。

スーパーにはいって商品を取り上げる。するとその商品が何なのか。そのパッケージに印字されている画像を解釈し文字を認識し「音声」で読み上げ、買い物をサポートしてくれる。衣料品店に入っても同じこと、ファションの「色」などの情報も、「音声」で眼鏡についた端末が教えてくれる。

アクセシビリティのコンセプトから開発された新端末だ。

・関連URL:障害者差別解消法施行を前に出版社が考えること 【セミナー備忘録】 http://society-zero.com/chienotane/archives/3957

[つまり出版に引き寄せて考えると、英語圏(アルファベット圏)では、もはや「本」がデータ化されていなくても、紙の本をAIが「読み上げ」、その音声をテキスト化することも可能な段階になっている、と言える。もはや既刊本の電子化にほとんど壁がない(テキストデータが準備されなくても可能)。

似たようなことは日本ではいまのところ、本の内容についてデジタルデータがあるKidle本のALEXAでの読み上げがあるのみ。

日本語固有の音読み訓読みがある漢字の存在、さらにはかなカナ漢字混在国語である点など、日本語の「音声」化へのハードルは高い。AIに学習させるべき分量がはるかに多いが、タグ付けでアクセシビリティ対応する方法以外のやりかたが、ここで提示されていることには注意したい。機械学習により、日本語のデジタルコンテンツ化は進むか。そしてアクセシビリティ対応も進むことになるのか。

(AlexaでKindle本を読む https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html )]

 

3.Baidu、Alibaba、Tencent、Huaweiをはじめとする中国企業の台頭

~いまやBaiduの時価総額はアマゾンに匹敵
[・時価総額比較:

(アリババがアマゾンの時価総額が53兆円規模で肉薄。アリババがアマゾンを抜き去る日は近い。 https://glotechtrends.com/alibaba-amazon-stock-value-171011/

~トランプ大統領の移民政策を漁夫の利として、中国企業が優秀な海外技術者・研究者を高額な給与で採用している。
~中国語が公用語になる日も近い。
いまやBATがGAFMAやFANG等と切り結ぶ時代。日本ではほとんど知られていないが。
・GAFMA(Google Amazon Facebook Microsoft Apple)
・FANG (Facebook Amazon Netflix Google)
・BAT(Baidu Alibaba Tencent)

 

4.スマートスピーカ、AR/VR、自動運転などをばらばらに見ていてはいけない。

~本質は「人間とAIがパーソナライズされた時空間を共有し、その中で対話する時代」が到来しようとしている点
[「知の伝達」に関する文明史的転換が始まっている/人類の進化史上の一大変革期が来ている。すくなくとものの鳥羽口にいるとの認識は重要だろう]

・日本人と日本企業には上述の視点が欠けており、決定的に立ち遅れ始めている。
~そもそも日本にまともなビッグデータがない。
~視点欠如のひとつの例として「AV」がある=日本では自動運転、海外では自律運転

 

5.自動車は部品を含め大変裾野の広い業種、業界。ここで「自動車(企業・産業)」概念が変わろうとしている。このインパクトは大きい。

~「自動車」概念の変化とは、「fun to drive」から「移動時間を楽しむ」へ。
~AVを「自律運転」ととらえ、運転から解放され「移動時間を楽しむ」というコンセプトに西欧企業が向かうのは、馬車の社会を彼らが経験しているから(馬の制御(=運転)は身分の低いモノのすること)。

 

6.変化を読む

~技術や社会変化の先を読むには、

a.「境」をよく読むことが大事。改革者は周辺からやってくる。
b.期待値の高いところへ資金が集まる

点が重要。

~松下幸之助が「百聞百見は一験にしかず」といったが、CESはそのための格好の場。

 

7.AI実用化を背景に「カスタマイズ」がこれからのキーワード

~日本は「一番いいもの」「万人向け」にこだわりすぎ。缶コーヒーが良い例。海外に缶コーヒーの自販機販売モデルは通用しない。海外では好みのものを提供されることを消費者が期待していて、それに応える方向に企業は商品、サービスを開発しようとする。全く価値観がが異なる。

 

8.スポーツ観戦もその形態が大きく変わろうとしている

~「カメラ目線からの映像を楽しむ」から「ひとりの選手の立ち位置から、観客が競技の中に入っているような臨場感を楽しむ」へ。平昌オリンピックでもそのデータを活用した事例が出てくるだろう。esports。[日本でesportsというと、ゲーマーの競争・試合のことを指す場合が多いが]
~360度の方向からの複数台の映像データを解析し、ひとりの選手の目線から競技を観る映像が作れる。それはいわばバーチャルな映像を見せられているのだが、観客は観客席目線(カメラ目線)からの映像よりはよほど、リアリティを感じるはず。バーチャルのほうが、より「選手目線」のリアル(映像)を提供できるという逆転が起きる。

 

9.「無人販売」があちこちで、またいろいろな商品で現実化していくだろう

~レジがないAIコンビニ、AIスーパーが現実化。AIが「接客」もカバーしはじめれば、もっと広い範囲で「無人販売」が開拓されていくだろう。
[・Amazon GO の事例:

(Amazon GO1号店がついにシアトルにオープン!レジがないAIコンビニの全貌とは https://orange-operation.jp/posrejihikaku/self-checkout/10331.html