専門書の売上推移 デジタル化時代の学術出版(1)

デジタル化時代の学術出版
(1)専門書の売上推移
(2)専門書の相対化
(3)教科書、啓蒙書はどこへ行った
(4)「越境する知」と「知の体系的血肉化」
(5)XUB:eXtensible Utilization of Books
(6)電子化作業の協業化、、あるいは「公」の視点

(1)専門書の売上推移

毎月月初は「出版状況クロニクル」の出番だ。ここ数年は、出版「不況」クロニクルの様相をていしている。

ところで専門書は出版不況の中でどうなっているのか。「クロニクル」ではなかなか触れられてこない数値を追いかけてみよう。

Cコード

日本独自規格の図書の分類コードで「Cコード」というものがある。手元の書籍を手に取ると、ISBNコードの下あたりに付されている。書籍の読者対象・発行形態・内容を示す符号で、アルファベットの「C」に続く4桁の数値で表される。(●分類記号一覧表<運用のガイド/資料集<日本図書コード管理センター http://www.isbn-center.jp/guide/05.html )

最初の一ケタ目が読販売対象(対象読者)、二ケタ目が発行形態、続く二桁(三ケタ目と四ケタ目)で内容を分類する。その最初の一桁目のところで、「専門書」がどうかがわかる。

たとえば「C3041」とあれば、

3=専門書
0=単行本
41=自然科学・数学

となる。

試しに手近の本をひっくり返してみると。

『知識資源のメタデータ』は、C3000=専門書/単行本/総記
『電子本をバカにするなかれ』は、C0036=一般書/単行本/社会科学・社会
『学術書を書く』は、C1000=教養書/単行本/総記

といった具合だ。

さてそれでは、出版状況クロニクル91(2015年11月1日~11月30日) で紹介されている、日販の「2015年出版物販売額の実態」で専門書売上の数値を見てみよう。

 

まずは全体の出版動向、売上推移をおさらい

追いかけるのは2004年から2014年の10年間の変化。超ロングランで売上金額規模の低落傾向が続いている。

とうとう2015年6月には、大正7年創業で業歴は97年におよぶ老舗で、業界第4位の大手書籍取次業者、栗田出版販売が倒産、民事再生法の手続きにはいっている。その売り上げが329億円(平成26年9月期)。しかしこの金額を上回る金額規模の減少がここ何年も続いているのが、出版業界の実態(下記表でいうと、2014年の2013年対比の売上減少額841億円。また合併が計画されている大阪屋の年商が681億円)。

97年をピークにした下降トレンドの中、ここ数年その減少ぶりにやや加速がついてきているのが気になる。
販売ル―ト別推定販売額推移 2004年から2014年

イ:書店ルートはこの間、構成比72%前後を維持。不動の地位は揺るがない。書店以外のルートで大きな変化がある。

ロ:コンビニ(CVS)ルートと駅販売ルートが大きく構成比を落とし、それに代わってインターネットが台頭してきている。

ただこれをCVSとキオスクにネットが置き換わりつつあると考えるのはおそらく間違いで、CVSとキオスクでの減少は雑誌凋落の象徴、ネットはそれと対比させた場合の、書籍の健闘を物語ると読むのがおそらく正しい。
販売ル―ト別構成比推移 2004年から2014年

 

いまや専門書出版社にとってネット経由販売、とりわけアマゾン経由の販売は読者と出版社を結ぶ大きなパイプとなっている。

しかし残念ながらその援軍があったにしても、全体としての専門書の売上減少ぶりは全体の趨勢を超えて進んでいる。

 

専門書売上の推移

専門書の推定販売額推移 2004年から2014年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気になる「減少ぶりにやや加速がついてきている」、この傾向をむしろ牽引しているのが専門書だということがわかる。


註:「専門書売上」金額の把握は厳密には難しい。
1.点数ベースで、新刊総点数に占めるCコードベースの点数割合は25.3%(2010年)。しかし専門書が初版部数数千部(それもその前半)程度であるのに対し、小説などの一般書は初版数万の世界。平均単価の違いを加味しても売上金額ベースでの構成比率は低くならざるを得ない

2.日販が毎年刊行している「出版物販売額の実態」では「売上金額」が「構成比」から推定できる。ただし、そこで使われる「専門書」の分類作業は日販の仕入部が判定したもので、必ずしもCコードとは一致はしない。しかし当然Cコードを参考にはしているとのこと。

3.つまり、絶対額での「専門書」の売上数値把握は厳密には難しいことになる。しかし日販の数値が示す、トレンド、出版物全体の低落スピードを凌駕して低減中なのは、専門書出版社の業界では肌身に感じていることそのものだと言っていい。

4.ちなみに(また少し古い資料だが)、Cコード「3」の専門書の点数ベースの構成比率は比較的安定している。この間、売れ行き不振から本体価格をどこの専門書出版社もあげる傾向にあったことを考えると、それ以上の売り部数下落を経験していることになる。
点数ベース専門書構成比率推移

[追記:20151210]

(続く)



◇関連URL

●総売上高は 5 年間で 1 兆 2500 億円消失 出版関連業者の経営動向調査 http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p150706.pdf
「大手企業は、こうした変化をビジネスチャンスと捉えデジタルコンテンツの充実を図るなど対策を立てている一方、大半の出版業者は厳しい経営環境を強いられており、老舗出版業者の倒産も散見される。また、今年 6 月には準大手の出版取次業者である栗田出版販売(株)が民事再生法の適用を申請。同社の倒産により、旧来の書籍流通モデルの限界を指摘する声も聞かれる」。

●出版状況クロニクル86 補遺 - 栗田出版販売の出版社向け説明会 http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20150707/1436274611

●栗田出版販売(株)倒産 : 東京商工リサーチ https://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20150626_02.html
26年9月期の売上高は329億3100万円にまで落ちこみ2億6200万円の赤字を計上、1億9700万円の債務超過に転落していた。

●あの取次最大手、本業赤字転落が激震!出版業界、ついに本格的崩壊開始の予兆 http://biz-journal.jp/i/2015/12/post_12686_entry.html
日本出版販売(日販)が2015年上半期中間決算(4~9月)で本業、取次事業の営業利益が赤転。売上高:2399億1800万円(前年比171億5200万円減)/営業損益:3億300万円の赤字(同4億4800万円減)/経常損益:1億3300万円の赤字(同4億6400万円減)。 

 

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