教育のICT化 韓国は日本とどこが違う? 【セミナー備忘録】(下)

(個人用のメモです。議事録ではありません。記事中の図画はプレゼン公開資料を使用しています))

セミナー概要: 韓国ICT&教育ICT 最新動向 http://kokucheese.com/event/index/336389/
■第1部「韓国ICTと教育ICTの最新動向」 60分
講師:三澤 かおり(みさわ かおり) 氏
一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 主席研究員
主にモバイル・融合サービス分野及び韓国の情報通信政策を中心とした調査研究に従事
■第2部「韓国教育ICT標準化動向」 EDUPUB、Caliperなど 15分
講師:村田 真 氏 (ISO/IEC SC34、JEPA CTO)
■第3部「韓国教育ICT関連企業紹介」 各社15分
1.教育SNSのクラスティング https://ja-jp.classting.com/
日本でも多くの学校で採用事例を持つSNS 講師:李 多喜(Dahee Lee) 氏
2.MDM、セキュリティのテルテン http://www.teruten.co.kr/page/main_j
On-line、Off-lineの教育コンテンツ保護の事例 講師:金 南圭(Namgyu Kim) 氏
3.英語塾チョンダム ラーニング http://jp.loudclass.com/
韓国で大きなシェアを持つラーニング企業 講師:HS Joh 氏

1.政府主導によるICT化

この前の記事、【セミナー備忘録】(上)の冒頭でオバマ大統領の慨嘆を紹介したが、これには伏線がある。韓国のIT国家戦略は米国の真似から始まったもの、しかもその後韓国は一敗地にまみれた時代を過ごした。なのに、先導した米国が現在この体たらくなのはなぜだ、というわけだ。

オバマ大統領の母体である民主党は1993年9月に「全米情報基盤(NII)アクションプラン」、いわゆる情報スーパー・ハイウェイ構想を発表した。これを見た韓国は1995年、『超高速情報通信網計画(KII)』、1996年『情報化推進基本計画』を発表し、国内の様々な分野にかかわるITインフラの整備事業を開始する。つまり、スパーハイウェイ構想の韓国版を作ったのだ。

ところがこの計画導入後の1997年、韓国は通貨経済危機に巻き込まれる。このためIMF(国際通貨基金)の支援を仰ぐ事態となり、一種IMF監督下ともいえる国家運営を余儀なくされる。

そこに登場したのが1998年に発足した金大中政権。彼は低迷する韓国経済を再建するため、1999年、通貨経済危機以前のIT政策をさらに発展させた『サイバー・コリア21』を発表した。臥薪嘗胆、それを彼はことあるごとに口にし国民を鼓舞、ICTを梃に危機をチャンスに変えることを訴えた。

サイバー・コリア21』では、韓国を2002年までに、世界の10位以内に入る情報先進国にするという目標をまず掲げた。そしてこれを達成するため、様々な分野におけるIT化の具体的な目標数値を設定し、インフラの整備はもちろんのこと、ITの活用による生産性の向上、新規産業・雇用の創出に向けた取組みを開始したのだった。

しかもこの目標は一年前倒しでその数値を達成した。

政権交代による政策変更で、その後の紆余曲折はあったものの(いままたその変更の局面にあるとも言えるが)、オバマ大統領をして、「韓国は驚くべき(デジタル教育)先導国」と言わせるのにはそれなりの前史があった、ということになる。

もっともハード偏重で、全体として「利活用」はこれから、という部分は日本とよく似ている(三澤氏の指摘)。
・高速ブロードバンドの普及率で韓国と日本は他国を大きく凌駕している。

ただ教育の分野でハードの配備をみると、コンピュータ1台あたりの生徒数で、韓国は3.7人(小学生)と、日本の6.4人を大きく引き離している。

 

2.電子政府は先行

しかし利活用のうち、政府部門は突出して進んでいる。進んでいるばかりか輸出財となっている。

電子政府輸出とはソリューションの輸出。例えば、監視カメラやデジタル捜査等セキュリティ分野、他に通関システム、特許、調達システムなどで外貨を稼いでいる。

公共図書館の電子書籍閲覧サービスの普及も進んでいる。

これは1998年の金大中大統領『文化大統領』宣言を背景に、1990 年代後半からの国家電子図書館の構築、2000 年の「図書館情報化推進総合計画」による公共図書館「デジタル資料室」構築事業や国立デジタル図書館の設立などが進められた、その一環で普及したもの。
・米英をはじめ韓国などでは、すでに80~90%以上の館に普及 、電子図書館ネットワーク拡大は世界的な傾向。

(学研 2020年までの教育コンテンツプラットフォーム戦略 http://www.slideshare.net/JEPAslide/ss-48338773

ちなみに日本で一番最初に電子図書館サービスを導入したのは千代田区立図書館。そこで使われたのが韓国・アイネオ社の、電子図書館システムであった。

 

3.教育のICT化は、電子政府に次ぐ国家ブランド商品

利活用重視は現政権の施策にも表れているが、その重点先に「教育」が含まれている(2013年~2017年)。

具体的には2020年までの「ICT融合重点投資先」に「教育」が選定され、予算化されている。

~6分野(教育・医療・観光・都市・エネルギー・交通)のICT融合に2015~2019年に2兆 1,000億ウォン(約2,100億円)投資。(K-ICT戦略、2015年3月)

~2016年中に10分野(医療、金融、教育、交通、都市、スマートホーム、文化・観光、農 畜産漁業、エネルギー、既存産業)のICT融合プロジェクト及び規制緩和実施。予算 5,751億ウォン(約575億円)。(2016年情報通信振興及び融合活性化実行計画、2015 年9月)

そしてその先に海外輸出を視野に入れたサービス展開(電子政府に次ぐ世界 ブランド化を狙う)を予定していればこそ、「世界標準」が意識され、EDUPUBの黒幕的存在になっているのもうなずける。

2013年以降電子教科書では内外でその規格標準化の動きが活発になっている。なぜなら、電子書籍端末は「電子機器」、電子書籍は「電子ファイル」でいずれも工業製品。その普及には標準化が必須だといえる。とりわけ学習・教育・研修の活動といった、ソフト面をも含めた統合的な標準化が重要。

教育ICT化の進捗度合に関して言うと、日韓でそれほど大きな落差があるわけではない。ただ、世界標準を意識しているか、あくまで(よく揶揄される)ガラパゴス的な運動になっているかが、韓国と日本との違いということになる。

← 韓国の電子教科書推進は後退したのか? 【セミナー備忘録】(上)    

 

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