■日本人と米国人 どっちが読書好き?

■日本人の方が読書好き(!?) 買って読む

「読書週間」ということで、「WIRED」誌が「読む」という行為の変化を追いかけている。その記事の中に、2017年、「米国では本が6億8,720万冊売れた」とあった。


(出典はPrint Sales Up Again in 2017 https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/bookselling/article/75760-print-sales-up-again-in-2017.html

この数値、つまり市場規模を金額ではなく冊数ベースで、日本を眺めると、5億9千冊
・書籍の販売推定部数 推移

(【特集】製本会社で「まさか」の二毛作!栽培しているのは?(MBSニュース) - Yahoo!ニュース https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181015-10000001-mbsnews-l27

日米を比較するため、一人あたりに引き直すと、

・一人当たり購入冊数:
 米国 1.8冊/人・年
 日本 4.9冊/人・年

となる。

 

■「スクリーン」の時代

日本人の方が読書好き(!?)ということになりそうだが、ここはもう少し検証が必要だ。

「WIRED」誌の記事が、

「規模という尺度から考えると、現代は読み手にとってかつてないほど理想的な時代だ。しかし、それ以外のほとんどの尺度においては、現代は読み手にとって、かつてないほどやっかいで手強い時代と言える。」(●テクノロジーによって、わたしたちの「読み方」はどう変わるのか:「読む」を考える(1)|WIRED.jp https://wired.jp/2018/10/27/how-we-read-introduction/

と指摘しているからだ。

つまり「読む」に、「紙(単行本等)」以外の、「スクリーン(スマホ等)」が登場して、「読み手にとって、かつてないほどやっかい」な事態になっているのだ。もっと言えばアメリカには、スクリーン(電子書籍)の出現のはるか前から「聴いて読む(オーディオブック)」があった。
(■そして「スクリーンの民」の時代へ https://society-zero.com/chienotane/archives/7831

「ページの隅を折り、蛍光ペンでアンダーラインを引いたペーパーバックを手にして通勤電車に乗っていたのは、そう遠い昔のことではない。だが、多くの米国人が電子書籍の楽しみに賛同するようになるにつれて、わたしもデジタル読書の楽しさを理解できるようになってきた。」

オフライン閲覧アプリの真の強みだと思う点は、孤独な“没入体験”こそが何にも勝る体験である、と認識させてくれる点にある。平均すると週に5冊の本をとっかえひっかえ読んでいた大学院生のころの自分とは、面白いことにまったく逆の考え方になっている。」(スマートフォンが、読む喜びをこうして甦らせた:「読む」を考える(2)|WIRED.jp https://wired.jp/2018/10/28/smartphone-apps-optimized-reading/

(もっとも、残念なことに電子書籍の冊数ベース、こちらは統計がない。ここでは日米の比較は難しい。)

 

■借りて読む 紙と電子とで日米比較

さらにいえば同じ紙でも「借りて読む」もある。ちなみに日本の貸出冊数は十年来うなぎのぼりを記録している。

(図書館の貸出冊数や利用者動向をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース http://www.garbagenews.net/archives/2257364.html

ただ米国は図書館大国であり、「借りて読む」の「スクリーン」化が進んでいる。順を追ってみてみよう。

まず(データの時点が異なるが)、「買って読む」と異なり、紙を「借りて読む」ベースでは米国に軍配があがりそうだ。

・人口当たりの図書館来館者数(来館回数):
 米国 4.46回
 日本 2.66回

・人口当たりの貸出冊数:
 米国 7.32冊/人・年
 日本 5.39冊/人・年


(アメリカの公共図書館概観 – 岡部の海外情報 https://k-okabe.xyz/2018/04/07/public-library/

さらに「借りて読む」ベースでは、電子化が米国と日本とでは雲泥の差があり、借りて「スクリーン」で読むを加えれば、日本と米国の差はさらに広がるだろう。ニューヨーク在住の岡部氏のブログ記事によると、

「(米国公共図書館の蔵書資料構成比率は)2005年度に90.0%だった印刷物が2014年度に66.1%に減り、代わってe-bookが1.0%から18.4%、ビデオ資料が4.4%から5.8%、オーディオ資料が4.6%から9.6%に増えている。」
(アメリカの公共図書館概観 – 岡部の海外情報 https://k-okabe.xyz/2018/04/07/public-library/

そして2017年の米国公共図書館への電子図書館システムの普及率は9割にまでいっている。

米国公共図書館(9082、分館を含むと16,000以上)のおよそ9割で電子書籍が貸出利用可能なのに対し、日本全国3000館以上の公共図書館のうち電子書籍が貸出利用可能なのは53館程度」。
(電子図書館の現状と読書環境の変化  201801神奈川県立図書館配布 http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/common/docs/advisor20180126.pdf  )


(メディアドゥフォーラム資料- 電子図書館を活用した多文化サービス(図書館総合展2017) https://www.slideshare.net/OverDriveJapan/2017-82951642

デジタルトランスフォーメーションが始まった時代の「読む」への対応が、日本(とりわけ公共図書館)には求められていると言えるのではないだろうか。

 


 

◎詩想舎では「レファレンスサイト(https://society-zero.com/reference/ )」を準備中です。そこでは「調べて読む「買って読む」「借りて読む」の3つの導線が準備されています。

サンプル:
・生態系サービスという挑戦 -市場を使って自然を守る- 買う前に見て便利|参考文献リスト https://society-zero.com/reference/004-4815806491

・環境と経済を再考する 買う前に見て便利|参考文献リスト https://society-zero.com/reference/004-4779500701

・エコロジカルな経済学 (ちくま新書) 買う前に見て便利|参考文献リスト https://society-zero.com/reference/004-4480061478

・家族進化論 買う前に見て便利|参考文献リスト https://society-zero.com/reference/008-4130633321

・〈こころ〉はどこから来て,どこへ行くのか 買う前に見て便利|参考文献リスト https://society-zero.com/reference/008-4000229463

・歌うネアンデルタール―音楽と言語から見るヒトの進化 買う前に見て便利|参考文献リスト https://society-zero.com/reference/008-4152087393