知識や技術と異なるものとして、技能がある。知識や技術は書籍に、マニュアルに、書いてある。それを読んだからと言って、しかし技能は身につかない。この「身につかない」という表現にまさに露わなように、技能は身体性と関連している。
だから教育や訓練と分かちがたく技能は、存在する。技能へのアクセスが保障されていること、すなわち教育や訓練への機会が担保されていること、それが社会に正義が行われている、ひとつの重要なバロメータとなる。
たとえば非正規社員の問題点のひとつは、教育や訓練への機会の問題である。
そして格差が収斂するか、拡大するかは、ひとえに国家がどのように教育と訓練を制度化するかに、かかっている。
(格差が)収斂に向かう主要な力は、知識の普及と訓練や技能への投資だ。
知識と技能の分散(普及や共有:筆者註)こそが、全体としての生産性成長の鍵だし、国同士でもそれぞれの国内でも格差収斂の鍵となる。かつて貧しかった多くの国が見せている進歩はその反映で、その筆頭は中国だ。
技術(による格差)収斂プロセスは、貿易のために国境を開くことで後押しされることもあるが、これは市場メカニズムというよりは基本的に知識-何よりもすぐれた公共財-の普及と共有のプロセスだ。
(以上 『21世紀の資本』 23P)
今日では18世紀に比べ、明らかに教育がずっと重要な役割を果たす。でもだからといって社会が能力主義的になったことにはならない。(略)誰でもさまざまな技能を取得する機会に同等にアクセスできるようになったわけでもない。実際には、教育格差はおおむね上に移行しただけで、教育によって世代間のモビリティが本当に増したという証拠はない。
(『21世紀の資本』 436P)
◆関連書籍・雑誌
◎ピケティ用語集・一覧 http://society-zero.com/chienotane/archives/3385
◎データ集 トマ・ピケティ『21 世紀の資本』 http://society-zero.com/chienotane/archives/3427
◇関連クリップ
http://fladdict.net/blog/2014/11/syain.html
収入の一定パーセントを貯蓄しなさい/生活資金を半年分ためなさい/キャッシュフローの重要性を学びなさい/目先のお金で仕事をしてはいけません/ 仮説、利点、欠点、リターン、リスクを説明できるようになりなさい/伝説やサクセスストーリーを真似てはいけません/作品と商品がイコールでないことを学びなさい/クライアントとユーザーの世界観で考えなさい/モチベーションの維持の仕方を学びなさい/賞味期限の長いスキルに投資しなさい/コミュニティに貢献しなさい。
(●5年後、上司はいなくなって、あなたは複数の会社に属することになる。 | 詩想舎の情報note 所収 )
「2030年におけるもっとも重要な資産は、75%が「個人の技能と対人スキル」であると回答し、「知識の習得」は42%にとどまった。また、83%が「学習者個々のニーズを反映して、学習教材が個別化していく」と考えている。教員は授業を行う講師としての役割よりも、学習環境を整える学習推進役へと進化していくという考え方を専門家たちが支持している」。
(『詩想舎の情報NOTE|知のパラダイムシフト 2014年11月二号』 所収 )
●ゴッホの絵をコンピュータに描かせるとどうなるか? http://gigazine.net/news/20141204-inpainting-gogh/
ほぼ自動でデジタル絵画は修復することができる。「写真(左)にはリンカーン大統領をかすめるように傷がついています。この傷をコンピュータが認識しているのが上の写真(右)。そして、認識した傷を写真からきれいさっぱり取り払ったのが下の写真」。さらに、(はい、ここからが主題です)機械学習により、たとえばゴッホの技能で絵画を拡張したりも可能なところまで、IA(人工知能)の発達はきている。「コンピュータによる芸術は、「コピー(複製)」から「モノマネ(独自のアレンジ)」のレベルに到達しました。コンピュータアートがモノマネの域を超えて「創造」の領域に達する日もそう遠くはなさそうです」。
(『詩想舎の情報NOTE|知のパラダイムシフト 2014年12月三号』 所収)