●「名もなき家事」 働くことと人間存在の関係を考える

市場の評価で決まる価格。この、価格がつくコト、モノにこそ価値がある。価格のつかないものは無価値だとする思想に、近代社会は汚染されている。そこから抜け出る道を見つけることが、いまの閉塞状況を打破する、ひとつの突破口となるだろう。そのヒントとなる「名もなき家事」論争。

●夫が家事と思っていない「名もなき家事」が存在。やっているのは9割が妻 http://suumo.jp/journal/2017/05/24/133796/
妻の認識と比べて、自分は家事をやっていると感じている夫が多い。その背景には、「名もなき家事」の存在がある。つまり、それを夫が家事と思わっていないステップ、作業、仕事が実は家庭に山ほどある、ということ。

・「家事との認識があるか(下記%)」のギャップが多く、かつ実際の作業が妻に偏っている項目:
「食事の献立を考える」(妻97.7%、夫36.7%)
「調味料を補充・交換する」(妻96.3%、夫54.0%)
「手洗い場のタオルを取り替える」(妻95.7%、夫58.0%)
「アイロン掛けをする」(妻67.0%、夫30.3%)

調査資料:「夫が家事と思っていない『名もなき家事』が存在:やっているのは9割が妻」『SUUMOジャーナル』(2017年5月24日)http://suumo.jp/journal/2017/05/24/133796/

●2017年「母の日」を前に、共働き夫婦の「家事」に関する意識調査 夫の気持ちは「3割負担」も、実働は「1割」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000025915.html
仕事だけでなく「家事にも共働き」の気持ちを!

「一般的にどこの家庭でもやっている家の仕事30項目について、「家事と思うか」を聞くと、18項目で妻の家事認識が高く、逆に、夫が多い項目は11項目。夫が家事だと認識していない「名もなき家事」の存在が明らかに。」

・「名もなき家事」の負担は9割がやっぱり「妻」
「名もなき家事」を一番やっているのは妻が86.5%と圧倒的に1位。妻自身も96.3%が「妻(自分)」と回答。フリーアンサーからは自分のことすらできていない、夫に対する不満の声が。

●『名もなき家事』名前はおろか完全無視される家事のあれこれ。 - 専業主婦という生き物 http://www.hw-frankie.com/entry/2017/08/06/212050
たとえば、洗濯編:
・裏返しに脱いだ服とソックスを戻す
・シャツやズボンと一緒に脱いだ下着の分離作業
・ワイシャツの襟汚れにシミ取りを塗り込む
・洗面所のタオル交換
・玄関マット、キッチンマット等の洗濯

●「名もなき家事」の、その先へ/vol.01 見えないケア責任を語る言葉を紡ぐために http://keisobiblio.com/2017/11/20/namonakikaji01/
ケア。この無償世界の「仕事」たち。「名もなき家事」の延長線上に、「日常生活に織り込まれた見えないジェンダー不均衡」を視る。

ケアの現場で必要な「(名もなき)仕事」たち、アカデミック世界でそれは、「sentient activity(SA)」と呼ばれる。その基底にある「感知」と「思考」:
「感知」=今この状況で・この人に何が必要なのかに気づくこと。
「思考」=その人に必要なもの・ことを与えるにはどうすればよいか考えをめぐらせること。

「ケア労働といえば、例えば、ごはんをつくって食べさせる、といった目に見える作業だけが取り上げられがちです。しかし、そうした作業をただこなすだけでは、誰かのケアには必ずしもなりません。目に見える作業が誰かのケア、つまり、その人の生存や生活を支えるものになるためには、その作業が行われる前にも、それが行われている最中にも、さまざまな感知や思考(=SA)が行われている」のです。

●アメリカ人は「家事」をどう考えている? https://minna-no-kurashi.jp/article/detail/13
「家電(有償世界のモノ)」に肩代わりさせるべきもの、それが「家事(無償世界の仕事)」と考える米国人。
「家事という労働にアメリカ人は大した価値を見出していないと思います。むしろなければないほうがいい、という感じです。
そういった意味では、「専業主婦」という肩書はアメリカでは大した意味がないような印象を受けます。」
・ただしその背景に、「社会性」と人間の価値との関連を重視する発想がある。
「アメリカ人の多くは、結婚していようがいまいが、「学生か職業人かボランティア従事者か」といったような、女性も社会とつながるような何かをすることを期待している」。
・そしてもうひとつ。家事を省くのには、会社での仕事時間より家族と過ごす時間を重視する、という日本と異なる価値観の存在もある。

●「名もなき家事」のお悩みを解決する「家事シェアハウス」 http://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/kajishare/index.html
「料理、洗濯、掃除など名前のついたものをいくつか分担するだけでは、「名もなき家事」を行う人の心理的・時間的負担を完全に和らげることはできません。家族みんながお互いを思いやり、家事をシェアする意識で取り組むことがお悩み解決の近道です。」

「家族同士がより良い方法を伝え合ったり、感謝を言葉にしたりと、家事をシェアする中で家族のコミュニケーションも生まれます。誰かがやってくれる「他人事」と捉えるのではなく、家族全体で分け合う「家族事」と考え、楽しみながら取り組みたいですね。」

●労働は人間の本質ではなく、堕落である http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100601/214714/
「稼ぎ(=賃労働)」のない、「仕事」にも価値をみとめなければならない。なぜならそれは、「労働しなければ、人間らしく生きることができない」という歪んだ考え方にたどり着くからだ。
「資本主義以前の社会であれば、家族のために買い物をして料理する作業が貶められることはなかっただろう。それは生活を楽しむための重要な営みだったはずである。それに資本主義の社会においても、買い物も料理も、喜びでもありうるものだ。」

「社会的な承認を獲得するために働くことだけがぼくたちの生き方ではないはずだ。金銭的な報酬を得るための仕事だけが、仕事ではないだろう。労働の意味が大きく変動する中で、働くことの意味を考えることは、誰にとっても大切な作業となる」。

●仕事観の変遷①(古代ギリシャ)―労働を取り除く or 積極的に評価する http://libracreative.hatenablog.com/entry/2017/01/24/144417
「近年、外食、衣服のクリーニング、ハウスクリーニングといった、家事のアウトソーシングサービス(を提供する企業)が増えている。これは先に述べた「必要からの自由志向」と類似している。

だがこの変化の方向性はいくつかの批判を受けている。鷲田は調理の代行は「危うい」と指摘するが、その理由は、調理は「人間がじぶんが生き物であることを思い知らされる数少ない機会」であり、「わたしたちがいかに自然と折り合いをつけつつ生きていくかが問われる現場」(鷲田, 2011) であるからだ。またアレントも「生命を通じて人間は他のすべての生きた有機体と依然として結びついている」が、今やその「最後の絆を断ち切るために大いに努力している」(Arendt, 1958) と警鐘を鳴らす。」

●働くとはどういうことか:【基礎知識】人は何のために働くのか−−時代によって変わる労働観 https://mainichi.jp/articles/20150302/dyo/00m/010/027000c
西洋と日本の「労働観」の変遷と、その変遷の背景にあるものの簡単整理。便利。

●なぜ人は、給料アップだけでは士気が上がらないのか https://next.rikunabi.com/journal/entry/20171114_M1
「環境の変化」ではなく「感情の変化」で作業能率はあがる、という研究結果がある。精神科医メイヨーと心理学者レスリスバーガーが行った「ホーソン実験」の分析結果。
この応用編:経営陣や管理職が現場へ訪問する機会を増やすことで、モチベーションはあがる。

その時間を使って現場で心配なことや困ったことがないかなどの聞き取りを行った。「忙しいと分かれば待機をしている職員を派遣したり、他の部門でできる仕事を振り分けたりしました。労をねぎらい、気にかけることで現場の士気は上がり、残業もミスも減っていったのです。
「あなたのことを気にかけていますよ」というメッセージが、仕事をする人の感情を動かしたのです。」

 

┃Others あるいは雑事・雑学
●アーレント『人間の条件』を解読する https://www.philosophyguides.org/decoding/decoding-of-arendt-human-condition/
「人間には「労働」「仕事」「活動」の3つの活動力があって、それらが人間を他の動物から区別している。しかし近代社会は「労働社会」となり、私たちが人間であり、自由となるために欠かせない「仕事」や「活動」を押しつぶそうとしている。人間はいまや動物化の危機に直面しているのだ。」

●労働と格差の政治哲学 宇野重規 http://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/jss/pdf/jss620304_153172.pdf
「伝統的に「女性の仕事」とされた家庭内における育児や家事も,ケア労働という情動労働として,非物質的労働の重要な位置を占めるようになる.」

●労働とは 社会学の観点から http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/04/pdf/011-013.pdf

●金銭的・非金銭的報酬とワークモチベーション
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/07/pdf/026-036.pdf

●中山元の哲学カフェシリーズ
・罰としての労働が産んだ「富」という副産物 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100405/213845/
・労働はどのようにして価値あるものとなったのか http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100409/213934/
・人間の本質は自然に働きかける労働にある http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100419/214070/
・富の源泉は金でも銀でもなく国民の労働である http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100423/214153/
・人間を疎外する「聖なる」労働の歪み http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100510/214319/
・マルクスが考えに入れなかった労働に参加することを拒まれた人々 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100519/214502/
・「通勤に費やされる骨折り」や家事は労働なのか http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100520/214521/
・労働は人間の本質ではなく、堕落である http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100601/214714/
・技術が進展するほど精神は怠惰になり退化するhttp://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100607/214825/
・過去の労働を再編するように生まれた新たな労働の姿 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100615/214958/