米国電子出版動向 2015 (3)中国の台頭【セミナー備忘録】

(3)中国の台頭

2011 年から 2016 年にかけて、印刷業界の生産高で中国は 922 億ドルから 1,341 億ドルへプラス 7.8%になると予想されている。他方、米国は 2,056 億ドルから 1,977 億ドルと年平均マイナス 0.8%成長。日本も 1,129 億ドルから 1,066 億ドルでマイナス 1.1%(グローバル市場への展開のための課題対応及び基盤整備に関する調査研究報告書  日本印刷産業機械工業会 http://bit.ly/1VZ8OlP )。

中国では12大学が印刷技術学部を保有。印刷技術を研究する学生が1万6千人もおり、印刷業界を人的に支援している。

今年の夏に開催された北京国際ブックフェアも盛況。昨年の数値ではあるが、来場数は20万人を超えている。世界の中で出版業界の成長が期待できるとされる四か国(中国、ブラジル、メキシコ、トルコ)のひとつに数えられている。

 

米国におけるプレゼンス

少し古い資料だが、中国から米国への印刷物の輸出は急増中で米国におけるプレゼンスという意味でも注目を浴びている。

なにしろ今年のBEA(Book Expo America 2015)でのブースの面積は、Digital Discovery Zoneの面積を凌駕さえしている。四大成長市場とされるメキシコ(2013年当時)と比べても勢いが感じられる。

IDPF Digital Book 2015の会場でも目立った存在。

 

スマホが中国出版市場でもキーワード

その中国の出版市場だが、通信企業が牛耳っているのが特長。最大手は新華社通信Gの書店企業。またAlibaba、DangDang、JD.com(JingDang) 3大オンライン書店が全売上の60%を占める。 2014年度、DangDangのeBookの品揃えは 20万タイトル。

eBook販売数は6,600万。 全出版物の売り上げの20%を占めている。 JingDangのeBookタイトル数15万 eBook販売数は1,000万(2014年) 。ちなみにアマゾンKindleのタイトル数は21万(2015年3月時点) 。

リアル書店とオンライン書店の売れ筋を分析したのが下記表。リアル書店で売れているのは、教材、社会科学系の書籍。一方オンラインで売れるのは、社会科学系と児童書
この表の右にはカテゴリーごとの成長率が掲げられていて児童書、小説が高い伸びを示している。

中国での作家デビュー(自己出版)にはスマホでの露出が不可欠で、3大通信キャリアが展開するオンライ書店で名前を売ることが大事。なにしろ電子書籍の読者数は2億人を超えていて、日本とはまるで違う市場が形成されている。

また出版社も、新刊プロモーションにスマホを活用している。

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◇関連URL
●「アジアのスマホ中毒は異常」と報じられる http://gigazine.net/news/20150913-asian-smartphone-addiction/
「Nomophobia(携帯電話恐怖症)」とは携帯電話の普及に伴い、携帯電話が手元にないと不安になる症状のこと。世界的にスマートフォンの爆発的な普及が進んでいる中でも、「アジア圏はスマートフォン中毒の進行が素早く、中毒者の年齢層が低くなっている」、と。

●大丸松坂屋8店舗で中国最大SNSの決済サービス導入 国内百貨店では初 http://www.fashionsnap.com/news/2015-09-07/wechat-daimarumatsuzakaya/
「免税売上全体の約3分の2を占める訪日中国人観光客に対し、購入時の利便性を高めると共に、帰国後も継続してWeChatアカウントを通じた情報発信を行うことでリピーターの獲得を目指す」。

●グローバル市場への展開のための課題対応及び基盤整備に関する調査研究報告書  日本印刷産業機械工業会 http://www.jpma-net.or.jp/data/25_4.pdf

●出張報告 WPCF Barcelona 日本印刷産業連合会 http://www.jfpi.or.jp/world/pdf/WPCF2014_hokoku_07.pdf

●出張報告 FAPGA Shanghai & All-in-Print China 日本印刷産業連合会 http://www.jfpi.or.jp/world/pdf/All-in-Print_China_2014_hokoku.pdf