「教経統合論」と「宗教に埋め込まれた経済」

日本のイスラーム研究の第一人者である小杉泰(1953~)は、宗教と経済が親和的かつ連続的に結びつけられるイスラーム独自の両者の関係性を「教経統合論」と呼んでいる。社会経済史家の加藤博(1948~)は、経済人類学者のポランニーの言い回しをパラフレーズして、イスラーム世界の経済は「(イスラーム)法あるいは宗教に埋め込まれた経済」であると表現している。こうした宗教と経済の密な関係性は、イスラーム生誕の地であるアラビア半島の商業文化によって育まれ、その後の独自の法規定や経済制度の整備によって、イスラーム世界の発展を支えていった。

参考文献:
「経済学とイスラーム地域研究」加藤博 『イスラーム地域研究の可能性』  佐藤次高(東京大学出版会、2003年)
現代イスラーム世界論』第3章:イスラームの「教経統合論」  小杉泰(名古屋大学出版会、2006年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第1章第2節:そもそも宗教と世俗とは区別できるものなのか  加藤博(詩想舎、2020年)

□関連知識カード:
 「聖」と「俗」の融合
 神の遍在性と経済
 聖俗一元論のイスラーム経済
 社会的動物としての人間
 そもそも経済とは何か:広義の経済と狭義の経済
 ポランニーの経済観

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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