社会的動物としての人間

イスラーム文明が、古典ギリシアの学問を引き継ぎ、ルネサンス時代の近世ヨーロッパに伝えたことは、周知のことである。しかし、イスラーム文明の文明史における貢献は、ただ単に、古典ギリシアの学問を引き継いだだけでなく、それを発展させたことである。社会分析においても、このことは言える。

アリストテレスは『政治学』の冒頭で、「人間は本性上ポリス的動物である」と述べた。イスラームの思想家は、そこでのポリス(都市国家)という古典ギリシアの概念を「社会」として一般化し、「人間は本性上社会的動物である」と言い換えて社会論を展開した。ほとんどすべてのイスラーム世界の思想家は、個人と社会との関係を論じる際には、この言葉から出発する。

ポランニーの「社会に埋め込まれた経済」論は、「人間は本性上社会的動物である」とのイスラーム思想家たちの言葉の延長上にあるように思える。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 補論第2節:イブン・ハルドゥーンの文明論  加藤博(NTT出版、2005年)
政治学(岩波文庫)』  アリストテレス 山本光雄訳(岩波書店、2000年)
経済の文明史―ポランニー経済学のエッセンス』  K.ポランニー 玉野井芳郎・平野健一郎編訳(日本経済新聞社、1975年)

■関連知識カード/章説明他:
「形式的な」経済学と「実体的な」経済学

 


『イスラーム世界の社会秩序 Vol.3 基本概念・基礎用語編(加藤博)』

Kindle本(電子書籍)はコチラから

派のかたも「アマゾンで検索」

 

 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。

◎iCardbookの商品ラインナップはこちらをクリック