[はじめに]資本主義の未来と現代イスラーム経済(長岡慎介)

 

◎今の資本主義社会を原理的に問い直しその弊害を乗り越える「未来」を指し示す、知的刺激満点の一冊。『資本主義の未来と現代イスラーム経済』。その「はじめに」をブログ公開します。

『資本主義の未来と現代イスラーム経済(上) 資本主義の危機とイスラーム経済の登場』

はじめに

私たちの暮らしている経済(資本主義)が行き詰まりを見せているというのは、読者の皆さんもなんとなく気づいているかもしれません。実際、経済格差や貧困、低開発の問題、地球環境問題、世界各地で起こる経済金融危機など、今の資本主義は様々な弊害を生み出しており、それが私たちの生活にも少なからず影響を与えています。こうした資本主義の行き詰まりに対して、資本主義「後」(ポスト資本主義)の世界を構想する書物が数多く出版されてきています。その中には、今の資本主義を全否定して、資本主義とはまったく違う新しい経済のしくみにみんなで移行すべきだという意見が述べられることがしばしばあります。はたして、そんな夢物語は現実に可能なのでしょうか。資本主義はすべて「悪」で、全否定をするほどの存在なのでしょうか。そうであるならば、なぜ数百年にわたって資本主義が優位となる世界が続いてきたのでしょうか。



本書は、今の資本主義がどうして行き詰まりを見せたのかを考えながら、資本主義の弊害をどのように乗り越えていくのかを考えることを目的としています。そのためのヒントとして、「イスラーム経済」という日本ではまだあまり耳慣れない新しい経済の取り組みを取り上げます。しかし、同時に、資本主義とはそもそも何であるのか、資本主義のどこに問題があって、どこがまだ使えるのかという点について、経済学の基本を紹介しながら考えることも本書の目的としています。それは、資本主義を全否定し、根拠のない理想論を掲げる「怪しい」ポスト資本主義論への免疫力を読者のみなさんに付けてもらうためです。本書で紹介するイスラーム経済も、資本主義のオルタナティブとして世界の注目を集め始めていますが、読み進めていくうちに読者の皆さんも気づくように、決して資本主義を全否定するものではなく、資本主義の使えるところを生かしながら、よりよい経済社会のあり方を追求していくものなのです。

ロシア革命を牽引したウラジミール・レーニン(1870~1924)は、「地獄への道は善意によって敷き詰められている」と演説で述べました。イスラーム経済という物珍しい取り組みを日本の読者の皆さんに知ってもらうだけでなく、根拠の薄弱な魅力的な理想論に振り回されて、結果的に今の資本主義よりもさらに悪いゴールに行き着くのではなく、資本主義の現状を冷静に見つめ直して、地に足のついた未来を語るための思考のツールとしても本書を活用してもらえればと思います。


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『資本主義の未来と現代イスラーム経済』(上)はアイカードブックの一冊です。

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アイカードブック創刊の狙い | ちえのたね|詩想舎 http://society-zero.com/chienotane/archives/5063

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