こうしたイスラーム金融の発展を歓迎する見方がある一方で、イスラーム金融が資本主義優位のグローバル金融秩序の1つのピースとして回収されてしまったという批判的な声も少なくない。
その批判によれば、イスラーム金融は、もはや独自の経済パラダイムの担い手なのではなく、イスラーム型資本主義とでも呼べるような資本主義の片棒を担ぐ存在に成り下がってしまったのだという。そして、経済人類学者のカール・ポランニー(1886~1964)が資本主義を社会から切り離された経済だと批判したように、イスラーム金融も社会から離床してしまったのだと批判するのである。
参考文献:
『現代イスラーム金融論』第3章:近代イスラーム経済学の展開 長岡慎介(名古屋大学出版会、2011年)
『大転換[新訳]』 カール・ポラニー 野口建彦他訳(東洋経済新報社、2009年)
『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第7章第5節:経済統合システムとしてのワクフ 加藤博(詩想舎、2020年)
□関連知識カード:
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そもそも経済とは何か:広義の経済と狭義の経済
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社会に埋め込まれた経済
★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。
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