「社会に埋め込まれた経済」の主張

ポランニーによれば、今日の資本主義の時代では、市場は社会からいわば離陸し、社会は市場に依存してしか営まれえなくなっている。

しかし、近代資本主義はあくまでも近代ヨーロッパの歴史的文脈のなかで形成されたものであり* 、それが近代ヨーロッパにおいて形成される以前、さらにはその後にあっても、一部の先進資本主義国を除けば、依然として多くの社会において、経済は社会から分離せず、「経済は社会に埋め込まれている」と主張した。

参考文献:
経済の文明史―ポランニー経済学のエッセンス』  K.ポランニー 玉野井芳郎・平野健一郎編訳(日本経済新聞社、1975年)
ポランニーとベルグソン 世紀末の社会哲学』  佐藤光(ミネルヴァ書房、1994年)

* フェルナン・ブローデル(『物質文明・経済・資本主義』)は、近代資本主義を、変転きわまりない現代の市場社会の別称であり、視界や活動領域の広大さ、拘束を嫌い打ち破る「力」、過去よりは未来を好み、貨幣的富というよりは変化とリスクと冒険を好む性向、などを特徴とする、市場経済とは区別される近代ヨーロッパにおける歴史的形成物と考えた。

関連知識カード/章説明他:
第1章 市場経済と外部経済
社会的動物としての人間
社会に埋め込まれた経済


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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