喜捨(ザカート)の義務

イスラーム経済哲学の2つめの特徴は、喜捨の義務である。この喜捨はザカートと呼ばれる。『クルアーン』には、「礼拝の務めを守り、ザカートをなし、立礼に勤しむ人たちと共に立礼しなさい」(第2章第43節)とある。ザカートは、1年間に稼いだ富の一部を神様に返すムスリムの最重要義務行為の1つである。神様の代理人によって集められたザカートは、『クルアーン』が決めた8つの対象(貧者、困窮者、ザカート管理者、改宗者、解放奴隷のため、債務者、イスラームのために努力する者、旅行者)に分配される。ザカートとは別にサダカと呼ばれる自発的な喜捨やワクフと呼ばれる財産の寄進も推奨されている。

参考文献
現代イスラーム世界論』第23章:イスラーム福祉国家論の現在  小杉泰(名古屋大学出版会、2006年)
日亜対訳・注解 聖クルアーン(改訂版)』  日本ムスリム協会訳(日本ムスリム協会、1982年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.3 基本概念・基礎用語編』【基本用語】  加藤博(詩想舎、2020年)

□関連知識カード:
 ザカート

 

 

★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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