イスラーム文明の特徴(2)共同体

イスラーム文明の特徴の2つめは、ウンマと呼ばれるイスラーム特有の共同体のあり方である。

ムスリムの信仰告白で「ムハンマドは神様の預言者である」と述べるように、ムスリムたちは、預言者ムハンマドを指導者と仰ぐ共同体を形成している。そこでは、貧富の差、人種や民族、出自の違いは関係なく、皆が同じムスリムの同胞として平等に扱われる。1日5回の礼拝のときに、ムスリムが横一列に並び、同じ祈りを捧げる様子は、共同体の特徴を端的に映し出している。*

参考文献:
イスラームとは何か―その宗教・社会・文化(講談社現代新書)』第2章:啓典と教義  小杉泰(講談社、1994年)
現代中東とイスラーム政治』第2章:イスラーム的政治概念の一般的枠組み  小杉泰(昭和堂、1994年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第3章第1節:森羅万象は唯一神アッラーの被造物  加藤博(詩想舎、2020年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』第1章第1節:イスラーム世界の成立と展開  加藤博(詩想舎、2020年)

*イスラームにあって人間たちの間の原理的な平等性は絶対に手放すことができない理念である。だからムスリムは一般に他者に対し跪拝したり頭を下げたりはしない。神に対してだけこうべを垂れる。多人数が礼拝するときイマームと呼ばれる先導役が先頭に位置し、その後ろに人々が横一列に並ぶが、この先導役は誰が行っても構わない。カトリックのミサで聖職者が会衆に対し対面し、特権的地位にあることを示すのと対照的である。「高位の聖職者」という発想がイスラームにはないのだ。[編集部]

□関連知識カード:
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 ウンマ
 ウンマ:「神の僕」の共同体

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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