こうして、現実の政治単位(ダウラ)が複数並立するなかで、一つのウンマ(イスラーム信徒共同体)という理念はウラマー(法学者)によって維持されていくことになる。その上で、ウンマにおける「俗」権の指導者であるカリフ(後継者)の権限について概念化が計られた。
つまり、ウンマ(イスラーム信徒共同体)の政治指導者であるカリフを「精神」的権威として位置づけ、その「俗」権の一部がスルタンとかアミールとか呼ばれた現実の政治単位(ダウラ)の指導者に委譲されるとされたのである。ダウラは、通常、王朝と訳される。
参考文献:
『文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』 第4章:権力 加藤博(東京大学出版会、1995年)
『イスラームの国家と王権』 佐藤次高(岩波書店、2004年)
『統治の諸規則』 アル=マーワルディー 湯川武訳(慶應義塾大学出版会、2006年)
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。
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