神の遍在性と経済

もう一つは、神が唯一絶対的な存在であることの論理的帰結である、神の遍在性の主張である。つまり、神が唯一絶対的な存在であることを論理的に突き詰めると、その帰結として、神の遍在性へと行きつく。神は万物の創造主であり、聖であり俗であるならば、政治や経済を含む俗のすべてに神が宿ることになる。

このことが、イスラームの政治論、経済論での議論のほとんどが、世俗のレベルで展開してきたことを説明する。キリスト教学の真髄が神学であったのに対して、イスラーム的な知の中心は法学である。*

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部第4章:経済とイデオロギー  加藤博(書籍工房早山、2010年)
イスラームの深層-「遍在する神」とは何か(NHKブックス)』  鎌田繁(NHK出版、2015年)

* そして、政治や経済が世俗のレベルで展開するならば、俗のありようは地域や時代によって異なる以上、イスラーム世界におけるイスラームと経済の関係が地域的にも歴史的にも多様に展開してきたことに、何の不思議もない。


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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