イスラーム性を担保するイスラーム弁証手続き

その結果、上記AのハディースとBのハディースがシルシラを基準に真とされても、両者のマトンの内容が矛盾する場合もありうる。しかし、イスラーム法の観点からは、ともに真のハディースとされる。人間の理性からみて矛盾であったとしても、神の立場からは両立する場合がありうるからである。こうして、神の啓示の無謬性を前提としつつ、教義の柔軟で多様な解釈が可能になった。

こうして、もしイスラーム経済に「イスラーム的なるもの」があるとするならば、それを付与し、その合法性を担保するのは、イスラームの理念や教義の内容そのものというよりは、それらに依拠しつつ、個々具体的な行為・業務に合法性を付与する法解釈、つまりイスラームに特有な弁証手続きなのである。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部第8章:イスラム金融を支えるもの  加藤博(書籍工房早山、2010年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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