アドル/アダーラ その3

さらに、神の正義は一般民衆の公正観とも深くつながっている。

彼らの生活は神の正義に沿ったものでなければならない。それは通常、既得権益を保証するウルフ(慣習法)に根ざしている。したがって一般民衆にとって、公正とはかれらの慣習や既得権益が守られている状態である。

以上よりわかること、それは、アドル/アダーラが宗教権威、政治権力、そして一般大衆が共有する「コモンセンス」だということ。加えて、イスラーム世界の公共の福祉(社会福祉)がこの「コモンセンス」に裏付けられてはじめて機能していたという事実が重要である。つまり、社会福祉はイスラーム世界にあって、宗教理念、行政、個人の意思、三つの融合として存在している。

参考文献:
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第二部第5章:統治観  加藤博(書籍工房早山、2010年)
「イスラムの経済思想」加藤博 『経済思想11 非西欧圏の経済学―土着・伝統的経済思想とその変容』   八木紀一郎編(日本経済評論社、2008年)
イスラーム政治論 シャリ-アによる統治』  イブン・タイミ-ヤ 湯川武・中田考訳(日本サウディアラビア協会、1991年)

■関連知識カード/章説明他:
所有権、徴税権、用益権
もしも「西欧近代」が普遍的モデルでないとしたら


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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