ムフタシブ

ヒスバ(社会福祉)の監視者。

広義には、シャリーア(イスラーム法)に基づいてムスリム(イスラーム教徒)の日常生活を監督する役人を意味し、礼拝や断食の監督、公共施設の維持、病人の保護など社会福祉に関わる業務を担ったが、歴史的にムフタシブが言及されるとき、それは市場の監督官を意味した。

市場監督官は行政官であり、ウラマー(イスラーム法学者)のなかから選ばれた。主たる任務は、取引される品の量や質、度量衡、偽造貨幣の監視、市場の治安など、公共空間としての市場での公正な取引の監視であった。そのため、ムフタシブにはイスラーム法のほかウルフ(慣習)への理解がもとめられた。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第二部第3章第3節:公共空間としての市場  加藤博(NTT出版、2005年)
イスラーム政治論 シャリ-アによる統治』  イブン・タイミ-ヤ 湯川武・中田考訳(日本サウディアラビア協会、1991年)

■関連知識カード/章説明他:
消費者保護のための市場管理
都市の行政
社会公正とヒスバ


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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