消費者保護のための市場管理

オスマン帝国は「国内」経済の運営において、直接的な介入に消極的であった。それでも、ギルド規制を行った。

それは、官僚国家として、消費者保護を目的とする生産者への監視であった。具体的には最高価格を設定する措置(ナルフ、タスイラ)である。

これは公正価格の設定に他ならないが、ギルド組織の代表とムフタシブ(市場監督官)らの協議により決定された。この公定価格はカーディー法廷台帳に記録され、裁判官(カーディー)の監督のもとに監視され、違反者は罰せられた。

この措置は、15、16世紀には市場の全商品を対象としていたが、17世紀以後では、通常、小麦や食肉などの主要品目に限られるようになった。それは、ほかのイスラーム王朝がとった公正価格以上に、国家の市場への介入を意図していた。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第二部第3章第3節:公共空間としての市場  加藤博(NTT出版、2005年)
イスラームの国家・社会・法』  H.ガーバー 黒田壽郎訳(藤原書店、1996年)

■関連知識カード/章説明他:
ムフタシブ


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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