ワクフ物件の永代賃貸借

長期賃貸借契約は、ワクフ物件の不動産への修理費を負担する条件で、賃借人にワクフ物件の管理を任す契約であるが、その際、物件の相続権、譲渡権が賃借人に与えられた。そのため、この契約は、ワクフ(イスラーム的寄進)では禁止されているはずの事実上の永代賃貸借、つまりは売買を意味した。

この長期賃貸借契約の普及の理由については、さまざまに論じられている。しかし、それが、16世紀後半以降の社会経済の変化に柔軟に対応して取られたオスマン帝国の措置であったことは間違いない。

参考文献:
「イスラーム法の刷新―オスマン朝における新賃貸契約制度の誕生をめぐって」林佳世子 『岩波講座 世界歴史(14)イスラーム・環インド洋世界―16‐18世紀』  樺山紘一ほか編(岩波書店、1999年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.2 市場経済における「イスラームの道」(歴史編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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