アダム・スミスと類似の経済論

さて、この三つの命題をみて、少しでも経済学説史をかじったものならば、これが4世紀も後のアダム・スミス(1723~1790年)が『国富論』のなかで展開した市場経済論の骨格とほとんど同じなのに驚くに違いない 。

(1)の命題は労働価値説であり、(2)の命題は社会分業論—アダム・スミスは分業という言葉を使っているのに対して、イブン・ハルドゥーンは協業(ムシャーラカ)という言葉を使っているが—である。また、(3)の命題は、市場における需要と供給に影響を与える要因を指摘したものである。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 補論:イブン・ハルドゥーンの経済論  加藤博(NTT出版、2005年)
国富論(岩波文庫)』  アダム・スミス 杉山忠平訳(岩波書店、2000・2001年)
アダム・スミス『国富論』を読む(岩波セミナーブックス)』  丸山徹(岩波書店、2011年)


 

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