アドル/アダーラ その1

公正。原義は「均衡を保つこと」、そこから転じて「行為や裁定において公正にふるまうこと」。

対立用語はズルム(不公正)。イスラームにおける個と集団の関係は、イスラームの正義(公正)・不正義(不公正)観において端的に示される。イスラームは法を重視した価値体系の中にあり、伝統的にはイスラーム法を厳密に順守、実行している人が「公正」である。

それは個々人の行為において、ばかりでなく、統治者についても重要な資質だった。 * 

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第二部第3章:イスラム経済における市場と公正  加藤博(NTT出版、2005年)
イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第二部第5章:統治観  加藤博(書籍工房早山、2010年)
「イスラムの経済思想」加藤博 『経済思想11 非西欧圏の経済学―土着・伝統的経済思想とその変容』   八木紀一郎編(日本経済評論社、2008年)

* 2011年初頭から、中東、北アフリカ地域の各国で本格化した一連の民主化運動、「アラブの春」で若者が掲げた標語は、「アダーラ(公正)」「フッリーヤ(自由)」「カラーマ(誇り、名誉)」であった。

■関連知識カード/章説明他:
人間は本性上社会的動物である
神の正義としてのアドル
イスラームの経済ビジョンとは


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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