しかしイスラーム世界においても、商人たちはイスラーム法が定める多様な資本と労働を組み合わせた企業形態を活用して経済活動を行ってきた。
ここでリバーの禁止規定と商人の利潤動機に折り合いをつけたのは、ヒヤル(法的トリック)とイジュティハード(新しい法解釈による法の創造)という法的手続きである。そしてヒヤルやイジュティハードといった運営を受容させたのがまさにマスラハ(公共福祉)などのイスラーム社会観である。そこでは、弱者の搾取や貧富の差の拡大といった社会的不公正を防ぎ、社会的福祉を増大させていくという理念が当たり前とされていた。
参考文献:
『イスラム経済論―イスラムの経済倫理』 第一部:現代イスラム金融 加藤博(書籍工房早山、2010年)
『イスラム世界の経済史』 第二部第2章第1節:イスラムにおける経済観 加藤博(NTT出版、2005年)
『緑の資本論』 中沢新一(集英社、2002年)
『無利子銀行論』 M. バーキルッ=サドル 黒田壽郎・岩井聡訳(未知谷、1994年)
■関連知識カード/章説明他:
イスラーム経済の労働にかかわる三つの特徴
★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。
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