リバー禁止と金融(その2)

無利子のお金の貸し借りの是非については、貨幣取引に課せられた2つめの条件を見ると驚愕の事実に気づくことになる。2つめの信用取引禁止の条件は、お金の貸し借り自体がイスラームでは認められていないことを示しているのである。なぜなら、お金の貸し借りは通常、信用取引(例:今日借りて一週間後に返済する)が原則だからである。

この事実からは、イスラームでは、貨幣取引と実物取引を明確に区別するだけでなく、金貸しをしたいのであれば、貨幣取引で完結するのではなく、実物取引を介して行わなければいけないというイスラーム独自の経済観を読み取ることができる。こうしたイスラーム独自の金融のあり方を「実物経済に埋め込まれた金融」と呼ぶことにしたい。

参考文献:
現代イスラーム金融論』第2章:リバー論の系譜  長岡慎介(名古屋大学出版会、2011年)
イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』第6章第3節:イスラーム経済と不確実性  加藤博(詩想舎、2020年)

□関連知識カード:
 取引によって生じる利得と利子との違い
 管理可能な不確実性(リスク)としてのリバー
 取引の不確実性への警告としてのリバー禁止

 

 


★この記事はiCardbook、『資本主義の未来と現代イスラーム経済(下) 金融資本主義からの脱却と「利他利己」の超克』を構成している「知識カード」の一枚です。



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