マディーナは都市を意味するアラビア語であるが、都市の中心部の市場(スーク、バーザール)空間もまた、マディーナと呼ばれた。
マディーナは卸売のための隊商宿と小売のための多くの店舗からなる商業空間であったが、そこには人が集まるため、モスクやマドラサ(学院)などの宗教施設や、病院、水飲み場、公衆浴場などの公共施設が混在する、商業施設と宗教施設が複合した空間であった。
都市の中心部がマディーナと呼ばれていたことに示されるように、イスラーム世界の都市は、基本的には経済都市であった。都市は政治との関係から定義されるなかで、14世紀の後半のアラブの思想家、イブン・ハルドゥーンは、都市を経済との関係から定義している。
参考文献:
『イスラム世界の経済史』 コラム9「都市とマディーナ」 加藤博(NTT出版、2005年)
『イスラームの都市世界(世界史リブレット)』 三浦徹(山川出版社、1997年)
『イスラーム都市-アラブのまちづくりの原理』 B.S. ハキーム 佐藤次高監訳(第三書館、1990年)
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