マディーナにおける商館

マディーナを構成する重要な施設に商館がある。それは卸売り業務のなされた大規模な商業施設である。

そしておおむね二階建ての小部屋がぐるりと中庭を囲む方形の建物で、一階は商品倉庫、時には厩舎として使われ、二階は旅行者や移動商人のための宿にあてられた。

この商館はイスラーム都市においてほとんどすべてワクフ(イスラーム的寄進)として設定され、同時に、部分賃貸借あるいは共同賃貸借と呼ばれた方法で貸し出されていた。

部分賃貸借あるいは共同賃貸借とは一つの不動産を所有者と賃借人、あるいは複数の賃借人が共同利用する賃貸借慣行である。この場合部分賃貸借に出されていたのは、商館の商品倉庫、厩舎、旅行者の宿として使われた個々の部屋である。

参考文献:
イスラム世界の経済史』 第二部第5章:ワクフ(寄進)制度にみるイスラム市場社会  加藤博(NTT出版、2005年)
イスラームの都市世界(世界史リブレット)』  三浦徹(山川出版社、1997年)


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.1 イスラーム経済社会の構造(理論編)』を構成している「知識カード」の一枚です。


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