タウヒードの社会観 1:個・部分と集団・全体

社会科学では克服が困難なアポリアがある。それは、個・部分のレベルで合理的なことが必ずしも集団・全体のレベルで合理的ではなく、逆もまたしかりというアポリアである。これまで、社会科学は、個・部分と集団・全体をどのように合理的に結びつけるかに悪戦苦闘してきた。

しかし、このアポリアは、考えてみるに、個・部分と集団・全体を二項対立的に捉える社会観から来ている。イスラームは、この二項対立的に捉える社会観を否定する。それが、個・部分であれ集団・全体であれ、この世界の森羅万象の究極的な存在理由を神の意志に帰するタウヒード(「一化」と訳される)の社会観である。* 

参考文献:
増補新版 イスラームの構造 タウヒード・シャリーア・ウンマ』  黒田寿郎(書肆心水、2016年)

* 本書の第一巻と第二巻では、この一元的な社会観の具体的な事例としてイスラーム経済を取り上げ、それを、個人の欲望の肯定(個人のインセンティブ)と共同体の福祉(共同体的な社会規範)の融合のダイナミックな展開として叙述した。

■関連知識カード/章説明他:
タウヒード
神との一対一の契約


 

★この記事はiCardbook、『イスラーム世界の社会秩序 もうひとつの「市場と公正」 Vol.3 基本概念・基礎用語編』を構成している「知識カード」の一枚です。


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