「本を売る」から「人が集まる」へ――ヒントは「体験価値」

◎これはクリップ集です◎

本を並べるだけでは生き残れない

町の本屋さん、書店。地方ばかりか都市部でも相次ぐ閉店の背景には、不動産の観点から「面積あたりの収益性が低い」と評価されてしまう厳しい現実があります。これに対し法人外商やカフェ・雑貨などの複合展開で利益を伸ばす一部企業は気を吐いていて、従来のビジネスモデルからの脱却、「戦略の二極化」が鮮明に。

 

変革のアイデアは業界の内外から

しかし、この逆風をアイデアで突破する動きも出てきています。丸善ジュンク堂書店はコミックの名場面をモチーフにしたオリジナルグッズを開発し、単行本の販売増へ繋げる新ブランド「COMICTION」を展開。ドン・キホーテも広い顧客層を活かして『週刊少年マガジン』の常設ショップを試みるなど、単なる「販売」からファン心を刺激する「体験型ビジネス」への転換が進んでいます。

 

「行く理由」を作る未来のリアル店舗

さらに、無書店エリアの郵便局へ児童書を置き、遠方へのプレゼント発送といった新しいコミュニケーションを生み出すポプラ社の試みも注目されます。アメリカでも読書人口の減少とは裏腹に、独立系書店がコミュニティの交流拠点の場として活況を取り戻しています。ネット通販やAI探索が定着した今だからこそ、リアル店舗には「人とつながり、偶然の出会いを楽しむ価値」が求められています。今号の「知恵クリップ」をどうぞご覧ください。

■知恵クリップ

●2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4% https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203260_1527.html
「書店を運営する主要304社の業績は、戦略の違いで格差が拡大している。2025年度の売上高100億円以上は16社(構成比5.2%、前年度同数)にとどまるが、売上高合計は4,607億4,600万円(前年度比3.7%増)と全体の75.2%を占めた。大手企業は、書籍・専門データベースを納入する法人外商を柱に成長し、カフェやホビー、トレカ、雑貨など非書籍の複合展開や図書館流通・運営の受託、海外展開などで売上高が拡大した。」
・書店の業績推移(2021~2025年度)

・書店の旧廃業・解散と新設

●書店「6割消滅」の病理 東京都心の大型店も閉じる 倒産の力学 書店編 https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOLM243FB024092026000000
「1990年代までは複合ビルにあって、書店は開発者側から歓迎される業態だった。ビル全体に「文化」の薫りをまとわせ、集客面でもプラスと評価された。(略)
だが、バブル経済の崩壊やリーマン・ショックを経ていわゆる「失われた30年」の間に、不動産ビジネス面での書店への評価は様変わり。面積当たりの収益性が低いとみなされる傾向が強まった」

●【1万店割れ】町から消える書店…起死回生を狙う「丸善ジュンク堂書店」の超進化 https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/202609/19987.html
「突然の売り上げアップに貢献したのが、作品の名場面をモチーフにしたステッカーやメモ帳など、11品目のグッズ。丸善ジュンク堂書店が開発したここでしか買えないオリジナルグッズで、期間限定で販売した(※現在はジュンク堂書店 池袋本店では販売していません)。
こうしたグッズの人気が、コミック本の販売増加につながっていた。
仕掛け人は、会社のコミックIP開発担当に抜てきされた八木泉さん。」
・全国の書店数の推移

●単行本4000円時代が来る前に考えておくべきこと(後編)|もしかしたらあるかも知れない出版業界の未来 https://note.com/yomitaina/n/nf1df8583a267
単行本4000円時代には何が起きるのか:
「ロングセラーが重要になる/新古書店とオンラインプラットフォームが活気づく/書店がショールーム化する/派生ビジネスがやりやすくなる」

●丸善ジュンク堂書店、池袋本店にコミック&グッズの新ショップ誕生へ ブランド『COMICTION』発表 https://www.oricon.co.jp/news/2487928/full/
「COMICTION」は、“COMICS”と“COLLECTION”を掛け合わせた造語。同ショップは「あのとき読んだコミックが面白かった、好きという気持ちをグッズ化し、そのコミックの魅力を新たな形で集め、届ける、丸善ジュンク堂書店発の紙のコミックとグッズを一緒に販売するショップ」になる。

●これは単なるポップアップショップの延長ではない ドン・キホーテ役員が語る『週刊少年マガジン』常設ショップ開店の「狙いと見通し」 https://gendai.media/articles/-/171655?page=3
「森谷氏が挙げたのは、ドン・キホーテ側の客層の幅だった。(略)多種多様な店舗フォーマットと商品群を持つ結果、抱えている顧客層がとても広い。
この幅の広さは、単一IPで売場を作ろうとすると弱点になる。ある作品はこの店では当たり、別の店では合わない、ということが起きるからだ。だが「マガジン」という大きな括りなら、多様な作品を内包している分、店舗ごとに中身を組み替えて合わせられる。」

●郵便局に児童書を置いたら2.9万いいね ポプラ社×日本郵便、無書店エリアで始めた試行販売 https://www.advertimes.com/20260914/article557430/
「郵便局に来られたお客さまがお気に入りの1冊を選び、手に取られて、遠方のご家族へその本を発送する。このように、郵便局で出会った一冊をきっかけにした新たなコミュニケーションが生まれることが、地域貢献につながります。これこそが、このトライアルの意義だと考えています」
・窓口ロビーに専用什器として回転塔を設置

●Z世代 はなぜ店に行くのか? AI普及下で店舗来店数が過去最高を記録 https://digiday.jp/glossy/the-ai-powered-holiday-shopper-how-prompt-driven-curation-and-gen-alpha-algorithms-will-shape-consumer-behavior/
書籍だと、この変化はどうなるのだろう?
「消費者の29%がホリデーシーズンを通じて買い物にAIを使う予定であることがわかった。(略)
(その29%の)消費者は、リサーチ、製品の発見、価格チェック、予算管理、製品の具体的な特徴の把握といった、具体的で実用的なタスクにAIを活用している。」

●アメリカの書店は再び活況を呈している。 https://www.vietnam.vn/ja/nha-sach-o-my-hoi-sinh
「この復活劇は、驚くべき逆説の中で起こっている。6月にCBSニュースが行った世論調査によると、調査対象となったアメリカ人の36%が10年前よりも読書量が減ったと回答し、読書量が増えたと回答したのはわずか23%だった。それにもかかわらず、バーンズ&ノーブルが事業を拡大しているだけでなく、アメリカ国内の独立系書店の数も著しく増加しているのだ。」
・アメリカの独立系書店は今や、コミュニティの交流の場